一章 八話
今回は短いです。
俺は入場ゲートの前に立っていた。
今回の決闘で使われるのはギルドの
訓練場。ギルドに関係する場所だけあって
今回の決闘の事を聞きつけてやってきている
観客も少なくはない。
俺が今か今かとその時を待っていると
後ろから声をかけられた。
「よっ。調子はどうだい?」
「母さん。」
声をかけてきたのは母さん
俺の心配をしてきてくれたのだろう。
「緊張してるだろうなと思ってきて来て
みればそんな事全然ないじゃないかい。
むしろ気合十分やる気満点って言った所かい?」
「もちろんです。この決闘には僕たち家族の
未来がかかっていますから。」
「ふふ、うれしいこと言ってくれるじゃないかい。
それじゃあ今日は見られるのかいあんたの本気?」
決闘の事で頭が一杯だった俺はその一言を
言われた瞬間動揺したがすぐにいつもみたいな
平静を装い取り繕った。
「....なんのことですか?」
「今更とぼけるのは無しだよ。あんた今まで
本気で戦ったこと一度もないだろ?」
「そんなことはありません。僕はいつだって
その時の全力で戦ってきました。」
「その時の全力ね~。まあいいさ私から
言いたいのはたった一つ。」
そう言うと母さんは近くまで来て
俺を優しく抱擁した。
「大けがをするような無茶だけはするんじゃ
ないよ。約束だからね。」
「母さん。...はい、わかりました。
なるべくケガをしないようにボコボコ
にしてきます。」
俺がそういうと母さんは少し驚いた顔を
とったがすぐに優しく微笑んだ。
「こりゃ一本取られたね。
あんたがそんな言葉使うなんて、全く
予想して無かったよ。」
「ははっ。さっきのお返しですよ。」
そう返すと会場の方からアナウンスが
入ってきた。
{さあ、お待たせしました。これより
アルゴースVSノウスの決闘が開始
されます。今回決闘にかけられて
いるのは、かたやアルゴース様は先の決闘で
フィリアギルド長から決闘を勝利したことで得た
権利を景品に出しており、かたやノウス選手は
自分が所有する権利と姉ミーナ様が持つ権利を
景品としておりまーす。本来この決闘はミーナ様が
お受けするはずだったのですが、昨日ミーナ様が
森で依頼をこなしている際にケガを負ってしまった
ため今回は臨時でノウス選手が決闘を受けることに
なるましたー。}
「言いたい放題だね全く。」
母さんはそのアナウンスを聞くと
怒気を含んだ声で呟いていた。
「まあしょうがないですよ。本当の事が言えないんですから。
あくまでアルゴースは善良な領主ってことになって
いるんですから。」
俺がそういうとアナウンスから待ち望んだ内容が聞こえてきた。
{さあそれでは両選手にご登場していただきましょう。
両選手入場お願いします!!}
その声と同時に歓声が会場を包んだ。
どうやらアルゴースが先に入場したようだ。
俺は母さんに向き直ると。
「それじゃあ母さん行ってきます!」
母さんはいい笑顔で
「ああ! 行ってきな!」
と返してくれた。
俺はその笑顔に見送られながら戦いの舞台に
向かうのだった。