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船頭一人にして、あぁ船よ何処へ行く

机の上には連日の不健康が並んでいる。

開けっ放しの瓶ビール、コンビニで買ったパスタ。干乾びた林檎の芯。


この生活を始めてもう一ヶ月になる。

朝目覚めて顔を洗って。飯がなくなれば近くのコンビニ出かけ。朝か昼か夕かもわからぬ内に寝る。

およそ健康とも文化的ともとれない最低な生活。


「どうしてこうなった」

毎日のように自問自答を繰り返す。昔は良かった、ああ良かった。

遊んでばかりいた日々。それで許された。将来のことも、ただ漠然と考えていればよかった。

歯車が狂ったのは大学からか、もっと前だろうか。いや、今はそんなこと、もうどうでもいいか。


趣味を仕事にはできなかったが、この生産性のない日常で唯一、できることと言えばその趣味であった。

つまりネットサーフィンというやつだ。

パソコンを立ち上げる。旧世代のオンボロ。飼い犬は主人に似ると言うが、どうやら電子機器もその類らしい。

起動に数分かかるので、いつものように椅子に座って目をつむる。軽く息を吸った。


現代の人類はあまりに無頓着だ。自分に。それ自身に。

先の見えすぎる生活。決まりきった結末。

生きたい、などという声より死にたいという声のほうが大きい。夢もない。生き甲斐もない。

自分の生は、人生は、量産型のそれに成り代わった。

画一的な教育、画一的な就職、画一的な人生。金太郎飴。


しかし、それが一番合理的で、それが一番楽だ。

社会の摂理とも言うべきそれに逆らっては生きていけない。そもそも逆らうべき理由もない。だから仕方がない。


自分自身についてとことん諦めた人類はその興味を他者へと向けた。

つまりゴシップであって、スクープであり、ニュースであった。

報道は真実を伝えるのが仕事だが、その前に記者を食わせなければならない。利益を上げねば仕様がない。

メディアのエンタメ化。今に始まったことではないが、その傾向は今年になってますます顕著となってきていた。


ごみを集めて商品化、という言葉が浮かんだ。しかし直ぐに否定する。いやこれはごみをごみとして売っているのだ。差し詰我々は豚の首に集る蝿。いや…

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