血と魔力と
理由は一つしか無い。
龍の血液。
根拠は全く無いが、もしかしたら薬となるかもしれないと思い飲ませたが、魔力が扱えるようになるとは。
扱えるようになった、と言っても無意識に力となって出ているようで、それでいて暴走のようなことも特に起きていないらしい。
「えーい!」
ドン!
「楽しいですー!どーん!」
どーん!
真白はかなり自在に魔力を扱えるようになっていた。
と言っても、魔力による物理現象を引き起こせる程度だ。
魔力感知も教えてみたが、龍の存在しか感じ取ることはできなかった。
(同じ魔力だから感じ取れているといったところか。)
だが驚くべきことに、龍が運ぶことができなかった台車すら、真白は運ぶことができるようになっていた。
それも、自分の手で。
「なんだかとっても元気になりました!こんなに重いものも持てますよ!」
「身体強化、か。まぁ病的に白かったそなたにはちょうどよかろう。」
「うーん……!」
「……何をしている?」
「いえ、龍神様を持ちあげられないかと思いまして。」
腹の下辺りに手を差し込み、持ち上げようともがく真白。
「いくらなんでも無謀だ、やめておけ。それに上げてどうするつもりだ?」
「龍神様をお外へ連れていけるかと思いまして……!」
「ハァ……。それはもうよい。外で薪でも拾って来い。」
「承知しました!行って参ります!あ、台車使いますね。」
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ガタガタ……。
「初めてのちゃんとしたお仕事です!頑張ります!」
「ほどほどにな。」
「はい!……あれ?龍神様、どちらに?」
「念話に距離は関係ない。我が魔力が及ぶ範囲ならな。」
「おお、流石龍神様です……。では、働きぶりをとくとご覧ください!」
「いや、我はやることがある。付きっきりで見ることは無い。」
「えぇー。」
「随分と馴れ馴れしくなったな……。」
「そそそそんなことは!……ちょっとあるかもしれません。」
「あるのか……。まぁいい。ある程度薪を集めたら、あとは自由にしていい。日が落ちる前頃に戻れ。」
「集めたら戻りますよ?」
「いや、しばらく戻るな。危険が及ぶやもしれん。」
「えっ、やることって危ないことなんですか?龍神様をお守りしなくては……。」
「よい。危険があるかはやってみなくてはわからんのでな。あまり遠くには行き過ぎるなよ。」
「はい……。お気をつけて。」
太陽が頂点に差し掛かり、陽の光を全身に浴びる。
白い肌に白い光が当たり、まるで真白自身が光を放っているかのようだ。
「はぁ、お日様が暖かいです。……あれ、いつもより眩しくありませんね。ま、いいです。いっぱい集めますよー!」
いつもと少し違う陽光の感触に違和感を覚えながらも、森の中へと足を踏み入れていく真白だった。
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「本当に何にもいないですね……。枯れ木も多いです。葉っぱのついてる木はあるのに木の実とかも全然無いし……。」
落ちている枯れ枝を拾いつつ、頻繁に目につく枯れ木から、魔力で枝を圧し折る。
「葉っぱは食べられないんでしょうか……えいっ。」
あむっ、ペッペッ
「苦ッ!うぇっ。うぅ……。食べられたら恵みが無いなんて言いませんよね……。」
独り言を呟きながら、薪を集めつつ初めての一人での山歩き。
だが、動物の影は形も見えず、木の実なども無い。
葉をつけている木は一種類しか見当たらず、地面の草も枯れたものばかり。
「うーん。龍神様は関係ないと言っていましたが……あれは草も枯れちゃいますよ……。」
一年前の龍の咆哮。それは当然真白も耳にしていた。
「すっごく怖くて……震えが一日止まらなかった……。あの声の主と会うと思ったら怖かったですけど、優しい龍神様でよかったです。でも恵みと関係無い、っていうのは……無いですよねぇ……。あの声にも、きっと何か力があったんだと思いますけど……。力?」
と自分で呟いたところで、真白の脳裏にある考えが浮かぶ。
力と言えば、つい先ほど身に付けた力があった。
「魔力の声……で、木とかがこうなったのなら、魔力で戻せたり……?できるかな……。」
すぅー 『わぁっ!』
ドンッ!
と、声を浴びせかけた部分の地面が一部えぐれて吹き飛ばされた。
「あぁ……そんな器用なこと無理でした……。そうですよね。そうなっちゃいますよね。うぅ……。」
涙目になる真白。
「すんっ……はぁ。余計なことはやめておきましょう。あぁ、帰る前に小用は済ませておかないと……。」
拭った涙の雫が落ちた場所の草が緑を取り戻したことは、この時の真白は気づいていなかった。
それよりももっとわかりやすいことが起きたために。
「きゃあっ!なんですかこれ!いっぱい草が生えてくる!待って待って待ってください!」
原因の直接描写は誠に勝手ながら、割愛する。
ブックマークありがとうございます。
初めてのR15要素……?