龍神、密かな特訓・1
真白が眠ったのを確認する。
異様に寝付きが良いな。やはり緊張していたのだろうか。
とにかく、今の自分には何ができるのかがわかっていなさすぎる。
体を動かす訓練は危険なので真白が近くに居ない時にやるとして、魔力を色々と動かしてみる。
魔力を動かすことには慣れたが、何ができるのかはよくわかっていない。
結構便利に使えるが、思いついたものを順に試してみよう。
まずは、感知。
ここから動いたことのない自分が動かずして情報を得る手段になりうるか。
イメージは……エコーロケーションか、それとも電波の受信か。
前者は自分から発した魔力が反射したものを分析する。
後者は魔力を発する存在を感知する。
とりあえず、魔力が反射するのかもわからんしな。実験実験。
思いっきりやった時は暴走したから、加減して……。
……。
……反射はしないが、自分の魔力がどうなったのかは感じられるな。
体の後ろ側は見えていなかったが、空間がまだ続いているのがわかる。
真白に当たった魔力は……生命体に当たった魔力はこんな感じなのか?
何か弾き返されているような感触があった。
次は受信するかどうか。
自分の魔力を受けて光る天井や真白に渡した石からは、自分の魔力が微弱ながら感じられる。
真白からは……何も無いな。
他には……無い。魔力を持つものが他に居るかわからない以上、自分のものだから感じられたのかどうかは不明、と。仕方ない。
発した魔力が触れたかどうかはわかるので、少しずつ感知する範囲を広げてみるとこの洞窟はかなり広いものであることがわかった。
真白が来た入り口もかなりの距離があるが、後ろの空洞はそれ以上に深く、そして複雑だ。
ここまでは一本道だったのに対し、完全な迷宮になっている。
ありがたいことに、近くに水場がある。水の中にも魔力を通すことができ、魚も居た。大当たり。
恵みが無いと言っていたが、魚は獲らないのかね?
人の住む近くなら水場はあるだろうに。井戸しか無いのか?普通は水場の近くに集落ができるはずだが。
ついでに外まで感知してみると、真白の乗ってきたらしき台車があった。他は森が広がっているらしい。
虫一匹見つからなかったのは驚いたが……。
半径五キロほどを感知して、代わり映えのない森が広がっているだけのようなので危険は無いと判断して感知はやめた。
真白の村は半日かかったと言っていた。ならば十キロ以上は遠いところだろう。
さて、あと魔力でできそうなことは……瞬間移動なんかできたりしないだろうか?
体は動かせないが移動だけできたりして。
と、若干ワクワクしながら試してみたが上手くいかない。
どうも今までやっていたのは手の延長のようなイメージだったのだが、自分を移動させるイメージというのが全く沸かない。
せめて念動力で自分を運べないかと思ったが、かなり厳しい。
手を動かせた程度だ。意外と不便。
ただこれは訓練次第で重い物も運べそうではある。
他にはパイロキネシスやらサイコメトリーなどが超能力として思い浮かぶが、イメージも沸かないしできたところでメリットも少ない。火はブレス同様酸欠の恐れもある。
あとは様々な属性を操るようなことができないかと試してみるが、魔力が動くだけで何もおきない。せいぜい空気を動かしてちょっとした風が吹いた程度だ。
上手くいったのは回復か。
岩が直撃した頭部が元に戻るイメージを魔力に込めると痛みが引いた。
試しに鱗を一枚剥がして(地味に痛い)同様にすると鱗が再生した。
これは便利だ。真白にかけられるかはわからないので、過信は禁物だが。
……この鱗、売れないだろうか?
ドラゴンスケイル、美品。
置いておこう。痛いので乱獲は避けたい。
ありがたいことに、(単純なことしかしていないせいかもしれないが)魔力が減った感じは全くしない。
暴走したときは、出しすぎて天井が光る分だけでは消化しきれずにえらいことになっていたが、あの時も疲れるような症状はなかった。
相当底なしなのだろう。
実験の結果、イメージさえできればかなり柔軟に様々なことができそうだが、逆に言うとイメージできないことはできないようだ。
火を熾すとか、時間を止めるとか、透明になるとか、物質を生み出すとかは今のところできそうな気がしない。
よく念話ができたな。あぁ、転移ができたらなぁ。転送ならどうだろう……?
――
と、こんな感じで真白が目覚めるまでこっそりと特訓に明け暮れる龍であった。
ブックマークありがとうございます。
魔力説明回。
一話あたりの長さってどれくらいなんでしょうね。
今回なんかはだらだらやっても仕方ないかなと思うんですが。
忙しくてあまり長文だとこの更新ペースは保てません……。