問題は山積み
真白が落ち着くのを待っている間、考えを巡らせる。
保護のために世話係にしたは良いものの、そもそも養ってやれるのだろうか?
この世界で目覚めた直後に気絶して数日前に目覚めた、実質ほとんど活動はしておらず、吠えて魔力を暴走させただけだ。
幸い、魔力の操作は念話が成功したように問題なくできそうであるが、身体については不安が残る。
自由に動かせるようになるまでは、魔力のみでどうにかしてやらねばならない。
その魔力も、どこまでできるのかは全くの不明。
(そもそも魔法なのか?念動力、念話って今のところは超能力の方が合ってるな。
…ということは超能力的なことならなんでもできるのか?)
思いついたは良いが、実験するのも今は難しい。思考を戻し考える。
(まずは食料か。自分の食料は……空腹感は無い。数ヶ月は食べなくても良さそうな具合だ。
しかし真白は……恵みが無くなった、って話だ。植物はすぐに戻るとは考えにくい……。)
となると、動物。
しかし、逃げ出した動物の行方を追いつつ、自身が動けず捕まえるとなると、真白。
アルビノの真白を長時間太陽の下で活動させるのは難しい。
アルビノの白さはただ綺麗というわけではなく、紫外線への耐性が無いことの現れだ。
(八方塞がりだな……。何としても俺が……我が動けるようにならなければ。
逃げ出した動物を魔力で探しだせるか、やって……み……待てよ?)
逃げ出した動物は探しだすのは困難である。
しかし、逃げ出せなかった動物ならば?
(魚、それも池の魚ならば逃げ道も無いはずだ。どちらにしても、池が無いか探すところからだな。)
――
落ち着いた真白に、今後のことについて伝える。
「……というわけだ。真白よ、我が手伝えることはしてやるが、そなたの食事は自ら用意する必要がある。」
「すん。はい。かしこまりました。あ、でも私、いろんな荷物があるんです。」
「荷物?」
「はい。結構たくさんあるので、洞窟の入り口に置きっぱなしなんです。龍神様への捧げ物だったはずです。」
「真白だけでは無かったのか。」
「ええ、とりあえず持ってきますね。」
と言って洞窟の入り口へと足を向ける真白。
「少し待て、真白。」
そう呼び止められて振り返ると、光る石がゆっくりと真白の元へと飛んでくる。
両手でそれを受け止めてよく見ると、壁などよりも少しだけ明るいものだった。
「よし。……明かりだ。持っていけ。」
少し満足そうに伝える龍。
魔力を上手く使いこなせたことの喜びを隠しきれていないが、そんなことだとは露ほども知らないまま真白は笑顔で応えた。
――
「申し訳ありません。台車が重すぎて……。」
「必要な分で構わない。あとは何があるかわかるか?」
真白は、機織物で食料を包んで戻っていた。
食料は保存の効く干し物と、僅かな根菜。
「他には、中身がいっぱいの水瓶がふたつと、食べ物があと十回これと同じだけ運べそうでした。あとは干し草も。」
「水瓶は……捧げ物なら酒か。」
「あ、あとこの布がもう少しだけありました。」
「ならば布と干し草を運び、そなたの寝床を整えよ。そのまま今日は休め。」
「わかりました……あの、龍神様。」
「なんだ?」
「その、何かお世話することはありませんか?」
「今はよい。早くせよ、世話をさせるにさせられん。」
「はいっ!」
台車に引き返す真白の姿を見送り、捧げ物を一瞥する。
(干し物ばかり……これは相当だな。)
生活の苦しさが伺える内容だ。まだ目にはしていないが、水瓶ふたつ分の酒も相当頑張った結果だろう。
自分には何もできないが、これで恵みが戻らなければ村の者たちはどう出るか。
(ただ生活させるだけではダメだ。真白には教育が、そして我は動けるようにならなければ……。)
戻ってきた真白が干し草と布を敷いているのを見ながら龍は、山積みとなった問題に頭を抱えたくなったが、腕が動かせないので諦めた。
真白は、寝床ができるとあっという間に憂いの無い顔で眠りについた。
ブックマークありがとうございます。
地の文を書くのが下手だなぁと自己嫌悪。
慣れてきたら書き直すかもしれません。
すみませんが今はこれが実力です。