決戦直前
決戦当日の朝。
町の防衛は不要、という言葉が昨日町へ伝えられた。
当然反対意見も出たが、協力する必要が無いなら物資の損耗も抑えられるということで、海の監視と緊急時の連絡の取り決めがなされるに留まった。
その頃真白達は、のんびりと朝食をとっていた。
ごく近海には大海蛇も現れないため、漁は可能で、海産物は豊富。
本日のメニューは燻された海魚を焼きたてパンに挟んだサンドイッチだ。
「この魚、ちょっと変な香りしますけどそれがまたいいですね。この、タマネギ?っていうんですか。シャキシャキっとした歯ごたえと辛味が香りに良くあいます」
『饒舌だな』
「あとこの少しだけかかってる茶色くて甘いやつがねっとりとからみつく!」
「タマネギを飴色になるまで煮詰めてオイスターソースとその他調味料で味付けしたソース、だそうです」
「なるほど……料理っていいですね。あとこのパンも美味しいです。表面がカリッと香ばしく焼き上がっているけれど、噛むと中は柔らかくて、そしてそのソース?が染み込んでいる部分がこれまた!美味い!」
この二日、食べる料理全てが新しい味と言っても過言ではない真白は、毎食感想を細かく述べている内に食レポが上達していた。
直接聞いているのは龍とフェルガーだけであったが、伝え聞いた料理人は細かい工夫に気付く真白を気にいり、気合が入っているという。
「料理人に伝えておきましょう」
「はー、美味しかった。お昼はなんだろうなー」
「……昼、ですか」
「何か?え、昨日はお昼もいただけましたよね?今日は無いんですか?」
「いえ、そういうわけでは……ただその、間に合うのか、と思いまして」
「間に合う……?何にでしょう?」
『今日だろう?』
『え?何かありましたっけ?』
『忘れたのか……今日が討伐の日だ』
「大海蛇の討伐にです。そんなに早く終わりますでしょうか……」
「あ、ああ、はいはい。討伐、討伐ね」
『忘れておったな……』
「りゅ、龍神様に任せておけば終わりますよ。ですよね、龍神様!」
『真白も、行くのだぞ?』
『え?』
『我に任せて一人貪る気だったのか?』
『い、一緒に行っても役に立ちませんよきっと!』
『そなたが勝手に受けた依頼だろう。やるのは、そなただ』
顔色がどんどん変わり、固まり、ふらついた真白をフェルガーが支える。
「巫女様!?大丈夫ですか?」
「は、はい。ありがとうございます……」
「どうされたのですか?龍神様の方をご覧になってから急に顔色が……」
「龍神様が、私が戦うのだと仰ったのです……」
「そんな!」
『真白、働かざるもの食うべからずという言葉があってだな……』
「龍神様!巫女様に戦えなどと……無茶です!」
フェルガーの目が鋭くなり、龍を睨んだ。
真白と龍の間に立ち、龍から真白をかばうかのようである。
『無茶か?真白よ』
『お昼……食べられない……』
『思考が駄々漏れだぞ。急げば間に合う。この男を止めろ』
『はっ!なるほど!急ぎましょう!』
(自分が戦うのはどうでもいいらしいな。まぁ手伝いはするんだが)
「なんとか言ったらどうなんだ!」
「お待ち下さい。私なら大丈夫です」
「バカな!立ちくらみを起こすほどの衝撃を受けていたではありませんか!」
「もう大丈夫です。それより急ぎましょう、龍神様」
言うやいなや、真白は龍に駆け寄り、その背に飛び乗った。
真白を乗せた龍は身体を起こし、視線を海の方へとやった。
「巫女様!」
「お昼までには戻ります!なので、お昼は用意しておいてくださいませ!」
龍が大きく羽ばたき、風と砂があたりに舞う。
フェルガーは目も口も開くことができなくなり、手で顔をかばった。
龍の身体がふわりと浮き上がり、直後沖合へ向けて飛び立っていった。
風が止んだあとには砂まみれのフェルガーが一人残された。
「ペッペッ……くっ、巫女様……!俺が、あの龍からなんとしても……!」
と、一人密かに決意をした直後、水平線のさらに向こうから、巨大な水柱が立ち上った。
ブックマークありがとうございます。
料理は全然できません!自爆飯テロのつもりで書いてみました。




