天翔ける龍
「行きましょう!龍神様!」
「そうだな……どこか行ってみたい場所はあるか?」
「じゃあ海!海行ってみたいです!」
「海か。なら適当に真っ直ぐ行けばいずれ海に出るだろう。」
三年の間、龍は真白に様々な知識を授けていた。
無論、前世の記憶を頼りにしたものであり、この世界とは常識が異なる可能性はあるが、それでも今まで教育を受けたことの無い真白に教えておいて損はないだろうと判断した。
言葉遣い(龍への馴れ馴れしさはほとんど改められなかったが、語彙は増えた)、算術(四則演算)などを基本に、真白はものすごい勢いで知識を吸収した。
「あぁ、少し飛ぶ練習をしてくる。出発は明日にするぞ。」
「飛ぶんですか!?乗せてください!」
「……まぁ、どうせ乗せることになるし、構わんが。」
「よーし!えいっ。」
と、軽い跳躍で龍の頭の上に飛び乗る真白。
「背中に移れ。危ないし気が散る。」
「はーい。よっと。」
頭から首の後ろを滑り背中へと降りる。
「龍神様……。」
「遊ぶな。」
「まだ何も言ってないです!ちぇーっ。」
「行くぞ。捕まっていろ。」
まずは魔力で飛び上がる。
一度洞窟内で翼を動かした際に、とんでもない風が巻き起こり、真白が砂まみれになったことがある。
あまり地上に影響を与えないように、空中からのスタートだ。
「おお~!凄い眺めです!」
「これは……大したものだ。」
森、川、湖、山脈。
大自然を全て詰め込んだような雄大な景色が広がる。
そのスケールは今まで洞窟の中に籠もりきりだった者達に世界の広さを感じさせるに十分足りえるものだ。
「あ、龍神様。でっかい水溜り、あれが海ですか?」
「いや、あれは湖だろう。波もほぼ無いようだし、向こう岸もかすかに見える。」
「ほえ~。」
「どうせ飛びながらいくらでも見られる。今は練習だ。いくぞ。」
「はいっ、うわっ!」
魔力の供給を切り、全力で羽ばたく。
翼がしっかりと空気を捉え、自重を支えられるだけの風が巻き起こる。
十分な距離を取ったものの、眼下で森の木々が風で揺さぶられる様子がかいま見える。
と、しばらく羽ばたき滞空していたところで真白が龍の背を強めに叩く。
「ぬっ?なんだ?」
首を捻っても真白の様子を直接目視するのは位置的に難しい。
だが、真白からの返事は無い。
「どうした?返事をしろ。」
「…………。」
だんだん背中を叩く力が強くなる。
しかし返事は無い。
そしてはたと思い浮かぶ。
(空気が薄いのか?)
雲よりは低い位置にいるものの、地上からはかなり高い位置にいる。
高山病のようなものに掛かっている可能性も考えられなくはない。
ましてや、当然真白にとっては初めての高所。
龍は大事を取って徐々に高度を下げていく。
羽ばたきながら、徐々に。
しかし、真白からの攻撃は止まない。
羽ばたき、地上が近づくたびに、ばしばしと背中を叩く。
身体強化も加わりそれなりの痛撃である。
鱗と龍自身、身体強化を行っているため大事にはいたらないが、石くらいなら砕け散る威力だろう。
地上へ降り立つと、真白は龍の背から転げ落ちるように地面へ降りた。
「おい、真白よ。どうした?大丈夫か?」
心配そうに声をかける龍を無視するように、ふらふらとした足取りで物陰へ移動し、そして。
「うぇぇっ……気 持 ち 悪 い……。」
盛大にえづきだした。
――
五分ほどして胃の中を空にした真白は龍に向かって、叫んだ。
「乗ってる時は羽ばたくの禁止です!魔力で飛んでください!ガックンガックンしてとてもじゃない……思い出したら……うっ。」
ブックマークありがとうございます。
羽ばたき時の上下動は約三メートルくらいを想定してください。
あっ気持ち悪っ。




