脱出
三度、季節が巡る。
植物も元の通り実を結び、虫や小動物の姿も見られるようになった。
天敵が居ないこの山へ舞い戻った小動物はかなりの勢いで繁殖し、数を増やし続けている。
大型の動物もそのうちに獲物を求めて戻ってくることだろう。
龍神の怒りとされた死の山の面影は無い。
そして三年前、龍神に生け贄として捧げられた純白の少女は……。
「あっ……そこは……!違います……!」
「もうそなたも限界だろう……?いくぞ。」
「あああっ!」
ズッ……ズッ……ズルッ
「ひゃああ……あ!?」
「……よし!抜けた!どうだ見たか真白!」
「やりましたね!とうとう!脱出成功ですよ!」
「ウォ……」
「待って龍神様!声はあげちゃダメです!せっかくの恵みがまたどっか行っちゃいます!」
「ォ……くっ。確かにな……また天井が崩れかねん。」
「また?」
「しかしやったぞ!もうあとは出るだけだ。ここから先の通路は広がるだけだからな。」
「長かったですねぇ……。いや、もっと早く終わるかと思ってました。もう岩運びはしたくないです。」
「そうだな。それもこれもそなたがいきなり入り口を吹き飛ばして崩落させてくれたお陰だな。」
「……ぴゅ~ぴゅ~。」
「吹けてないぞ。」
ズガン!ガラガラガラ!
もの凄い音とともに、龍が通り抜けた通路が崩壊していく。
削ってきた岩壁に身体を縮こませて負荷をかけ、全身で押さえつけていた圧力が無くなったことにより崩落していた。
「ありゃ。戻れなくなっちゃいましたね。」
「戻る必要もあるまい。というよりあんな狭いところ、もう通りたくはないな。」
ピシッ
「あー、急いだほうが。」
「良さそうだな。先に行け、真白。」
亀裂が走る音。
崩落は、洞窟全体に広がろうとしている。
龍はそれを多少魔力で支えつつ外へ向けて歩み始めた。
「はいっ!じゃっ!」
「背は伸びたのにそういうところは変わらんな……。」
身体強化を使い全力で駆け出す真白。あっという間にその姿は小さくなっていく。
元々栄養失調気味でもあったのだろう背丈はこの三年で十五センチほど伸び、すらりと伸びた肢体が、すっかり小さくなり汚れてしまった白い衣装からさらけ出されていた。
(急ぐか。狭いから姿勢制御は注意して……。)
龍の身体が、羽ばたきもせずにわずかに宙に浮く。
龍は自身の身体を魔力で動かすことができるようになっていた。
(外の広いところでスピードを出す練習もしたいところだ。が、今は脱出!)
滑るように龍の身体が前へと進む。
後方では崩落が始まっている。
意識を真白へと向けると、どうやら脱出は済んだらしい。
入り口から少し離れたところでこちらの様子を伺っているようだ。
出口へと向かう龍。
しかし突然、亀裂が走る音が龍の身体を追い越していく。
パラパラと砂が舞い落ちてくる。
そして、前方から響く轟音。
(これは……またベタな。)
洞窟の出口が巨大な岩で塞がれている。
元々天井だったところが落ちてきたらしく隙間はあるが、龍の身体では到底通り抜けることはできない。
龍は自身の拳を魔力で強化し、身体の勢いを載せて岩を叩く。
ドゴォン!!!!
(くっ……まぁ龍の攻撃でパンチってあんまり見ないしな……。)
岩は健在だ。拳を叩きつけたところが多少砕けてはいるが、全体には影響がない。
どうしたものか、と龍が考え始めると……真白が天井の隙間を通り抜けて戻ってきた。
「遅いですよ、龍神様。塞がっちゃったじゃないですか。」
「何故戻ってきた?」
「えー?だって龍神様意外と力無いじゃないですか。壊せなかったんですよね?」
「……そうだな。そなたに比べればな。……やってくれ、真白。」
「了解です!!どっかーん!!!」
ガッ!!ズドォオオオオン!!!!!!!
身体強化された真白の拳が、岩を消滅せしめた。
「……相変わらずの馬鹿力だな。」
「龍神様が弱いんですぅー。」
「その代わり細かい作業が苦手であろう。……普通逆なんだがな……。」
そのせいで、三年前に洞窟脱出のための掘削作業を開始した際、真白の一撃によって瓦礫だらけになり、その除去作業に時間を費やすこととなった。
以来、掘削の細かい力加減は龍が担当し続けていた。
「全くあのせいで……。」
「その話さっきもしたじゃないですか!それよりも!」
「行きましょう!龍神様!」
龍神がついに世界に顕現した。
ブックマークありがとうございます。
二章突入!
書き溜め無し!




