外の世界
「はぁ……はぁ……。」
「どうした。言いたいことはそれだけか。」
「ず……ずるいです……。」
「フン、何がだ。」
「龍神様念話じゃないですか!もう喉が痛いです!」
「では、我の勝ちということで良いな。」
「そうは言ってな……ゲホッ。」
咳き込む真白。
正確な時間を測る術が無いため知る由もないが、喧々諤々の言い争いは十時間にも及んでいた。
「一つ言っておくがな……。」
「コホッ……何でしょうか。」
「真白のためでもあるのだぞ。」
「……?」
喉をさすりながら首を傾げる。
「我がここから出られなければ、そなたも一生ここで過ごすことになる。せいぜいこの山を出た森くらいまでしか出歩かんだろう。」
「はあ。」
「真白にも外の世界を見せてやりたいのだ。」
「よく……わかりません。」
俯く真白。
村でも軟禁状態にあった。
そのまま役目を与えられた真白に、他のことを考える道は無かった。
「学べ、真白。人として生を受けたのだ。そなたの知らぬことがこの世にはごまんとある。」
「でも、龍神様のお世話をしなくちゃ……。生け贄ですし……。」
自身の役目のことしか頭にない。俯いたまま答える。
「どうでもいいではないか。」
「え?」
顔を上げ、困惑した表情で龍を見つめる。
龍は言う。
「恵みを我に取り戻させるために生け贄になったのだろう?我がそれをしないなら、生け贄になる必要もあるまい。」
「え……?あれ……?そうなん……ですか?」
「違うか?」
「だ……だったら……。」
「……。」
「やっぱり出口広げるのを手伝う必要ないですね!頑張ってください!」
「おい!!そこか!!」
「冗談ですよ……。もう、色々と助けられていますから、お世話は続けます。」
からからと笑う真白。
言葉は続く。
「それに、私一人で外に出ても龍神様が居ないと楽しくなさそうですから。」
「野垂れ死ぬのがオチだ。」
「ひどい!けど否定できません!」
頭を抱えながらうーんとうめき声をあげる。
その様子を一瞥し、面白がるように目を細める龍。
「……まぁ、明日明後日出られるというわけでもない。出られるまではみっちりしごいてやる。」
「はい……。お願いします……。ところで、龍神様。」
「ん?」
「学べとかなんだかんだ仰ってましたけど、結局自分が出たいだけですよね?」
「……。」
――
「反省してろ。」
「ごめんなさい反省しましたぁ!降ろしてください!」
真白のセリフが図星だったのか、失礼な言動に対する罰かは定かではない。
五メートルほどの高さに魔力で逆さ吊りにされた真白は、このまま一時間ほど放置されることとなった。
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次回から第二章となります




