単純な理由
魚を串刺しにして焼き始める真白。
全部で12匹……獲れた分を一気に焼き上げる。
しかし、別に保存するわけでもなく、
「だって龍神様は、一匹じゃ絶対足りないでしょう?」
(要らないって言ってるんだが……。)
恐らく聞く耳持たぬだろう。
真白は焼き加減を見ながら干し肉を噛んでいる。
「まだかなー。そろそろかなー。龍神様、どうぞ。」
「まだ早かろう。」
「かもしれませんので、確かめてみてください。」
「……勝手に口に放り込め。もうツッコむ気も起きなくなってきた。」
はーいと返事をした真白が、串刺しの魚を片手に近づいてくる。
そしてそのまま歯の隙間から上手く魚を差し込むことに成功した。
「いかがですか?」
「……鱗は取ったほうが良かろうな。」
「なるほど。参考になります。」
鱗の舌触りを感じながら、魚を飲み込むことすらできない龍は、魔力で胃袋まで無理矢理押し込む。
真白は空いた串で鱗を削り、削れた部分にかぶりついていた。
そして――龍は自身の身体に力が戻っていくのを感じていた。
(ん?まさか……。)
口が開く。
「あ、おかわりですか。美味しかったですか?そーれっ。」
残りの魚を全て龍の口めがけて放り込む真白。
「せめて串くらい外さんか。あと鱗。」
「ひまひほはひいんへ、ふみまへん。」
「名づけてやった時のそなたはどこへ行ったのだ……。」
「ほほひひまふ。」
「認められるか!食ってから喋れ!」
舌も喉も動く。串を外し飲み込む。
今まで微動だにしなかった頭が、腕が、身体が動く。
それも、至極あっさりと、思いのままに。
尻尾と翼は人間だった頃に無かったためか、上手く動かすことができないが、身体を起こすことに成功する。
(まさか、腹が減っていただけ!?感じなかっただけで!?エネルギー切れみたいなものか……。魔力は普通に扱えただけに、予想外だ……。)
「んっ、龍神様、どうしたんですか?突然起き上がって。」
「いや……礼を言わねばならんな。」
「いやぁ、それほどでもありますけど。」
「……そんな気も失せるな。まぁよい。お陰で動けるようになった。」
「えっ?」
目を点にして驚く真白。
まさか動けなかったとは思わなかったようだ。
「あれでどれほど保つかわからんからな。もっと食料のあるところへ赴くべきやもしれん。」
「それは良いですが……龍神様?」
「どうした。」
「ここから出られますか?」
真白がやってきた入り口は、龍の半分ほどの高さと幅しか無かった。
(俺はボトルシップか!!)
声にならない悲鳴。
「頑張って掘りましょう!」
完全に他人事だと思っている真白が笑顔で龍にエールを送る。
「フ、フフフ。」
「?」
「そうだな。頑張るしかないな。生け贄よ。」
「……ん?」
「忘れたのか?そなたは我が生け贄だ。やれ。」
「……!ちょっと、そんな!死んじゃいますよ!龍神様ならこう、どかーんと一発!」
「崩れたらどうするつもりだ?少しずつやるしかないのだ。」
「い、いやでもほら!私には食事のお世話という大切な役目が!」
「うるさい!大して役にも立っとらんくせに!」
「………………!…………!」
「…………!………………!!!」
二人の龍の体力に物をいわせた言い争いは、夜が更けても続いていった……。
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食事って大事。
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