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迷宮

 さっそくクルトからこの迷宮の情報を聞いてみると、王都の地下に迷宮というのは、この世界でもここにしかなく、他にも都市郊外に迷宮はある。だが、都市の城壁の外側で迷宮の出入り口付近は一番警備が厳重になっているそうだ。


 では、この王都地下の迷宮はというと。


「この中の魔物たちは外に出る事は一切ありませんな。その昔、この王都を築き上げた初代ベルン国王がこの迷宮を完全制覇し、以降、管理迷宮として死にもせず、脈々と迷宮としての機能を保持したまま現在まで生き続けてるんですな」


「迷宮が死ぬ? 生き続ける?」


「迷宮の核心を突くと死に、核心を手に入れれば、思いのままに。昔話ですがね。核心は王宮にあるらしいですが、それを見た者はおりませんが、現にこうして迷宮から魔物も出てくることもなく、管理された状態というのは昔話の通り管理された迷宮という証明にはなるんでしょうな」


 和維はそんなもんかねぇ。と思いながら、今度探ってみる事にして魔法の練習と称して途中で出会った巨大化したネズミやムカデ、カマキリ、ウサギのような魔物たちを『魔法名』を言って様々な魔法で屠っていく。クルトから、無詠唱だと今後連携が取りづらい上、威力も魔法名を唱えた方が上がるというのでそれに従ってみた。威力という面では想っただけで自由自在だから、あまり意味が無いとは思うが、連携しにくいというのであれば、そこは従った方が良いだろう。ミカなら耐えきるだろう攻撃が人間であるクルトに耐えきれるという保証もない。


「だいぶ練習はできたかな。オーバーキルとかで周りに影響でなくなっただけ、良いと思うけどどうかな?」


「こ、これで練習ですかい? 元の手下どもだったら、即幹部クラスですな、地下10層まではそうそう降りてこられはしませんぜ」


「まだ深いんだろう?」


「100層近くあるって話しですが、それも所詮昔話ですな。手前でも80層くらいが良いところで。10層毎にたまに現れるエリアボスクラスと出会った日にゃ、単独では無理ってもんです」


「そんなところに80層まで一人で行けるのも十分すごいんじゃない?」


「ま、悪運ですな、良運には恵まれなかったですがね」


 ふぅん。人それぞれだよね。と和維は呟くとヒヒイロカネの杖を振りかざして奥に見える巨大なウサギを目掛けて魔法を唱える。


『ストーンブリット』


 小指の爪程の大きさの石がウサギの頭を貫通するとそのまま頭を壁に衝突させて、脳漿をぶちまけ停止する。クルトはすかさず、ウサギに駆け寄って絶命を確認し、和維にナイフを手渡す。和維は最初の頃でこそ目を背けていたが、精神耐性もついてきたのか今は自分で魔物の身体にナイフを突き立てて血が自分の手や顔に飛び散るのも構わず、半透明の石をエグリだしてクルトに手渡す。


「旦那、ホントに皮とか肉とかよろしいので?」


「魔法石だけ回収できれば良いよ。元々魔法の練習だしね」


「もう十分ですかね」クルトが魔法石でいっぱいになった小袋を和維に見せて言った。


「そうだね、ミカがそろそろウルサいし」


「そうですね。さっきからあっしのところにも帰ってこいと念話の連呼が……」ミカは和維が無視するので近くにいるクルトに波長を合わせ念話をねじ込んでいるようだった。


「本来なら、この魔法石は迷宮管理人に検閲を受けて半分は上納しなきゃならないんですが。迷宮探索許可証を旦那は持ってませんからね。どうやって帰ったもんか……」


「そこらへんはギルドでどうするか、聞いてみよう。とりあえず帰ろっか」


「さすがにあっしでも旦那を抱えて検閲所をくぐり抜けられませんぜ」


「ん? くぐらないし、通らないよ。ギルドホールに転移する」


 クルトはわからん旦那だと思って和維を見やると、彼はまじめな目をしている。

「……は? 転移ですかい?」


 和維はこめかみに手をやるとミカに回線を繋げた。


—ミカ。戻るからそこらへん片付けて隠遁の結界張っといて —

—了解しました。主様(マスター) —


「だ、旦那? 転移って言いました? 転移って…」クルトはそう言うそばから目の前に見えるものがグルリと変わるのを体感する、頭を二三度振ってみるが視界はそれ以上変わらなかった。


 そこにはミカが仁王立ちで待ち構えている姿があった。主に自分の主様を睨みつけているようだが、その怒りがいつこっちに来そうでクルトはもう一度頭を振って、視界が変わっていないかを祈ってみるが、全く変わらなかった。


「お早いおかえりですね。主様(マスター)


 和維はギルドホールから見える外の景色を見てから応えた。


「ま、夜にはなってないね。ちょっと修行も兼ねてたから、許して」


「許すも許さないも、あのあとナディーンからクエストの説明やらなにやらでもう、それを押し付けていかれたことに、もう……」


「あ、そっちね。ごめんごめん。意識とばしてたから、気がつかなかったわ。で、ナディーンもいないみたいだね」和維はホールの中とカウンターの中を見てみるが彼女の姿が無い事を確認する。


「コンスタンツェ様がお帰りになられてから、幹部の方などと共にナディーンも二階で会議中です」


「ふぅん。じゃ、今日はクエスト受けないで、宿に戻って三人で今後の打ち合わせでもしよう」


 ミカは『結界解除』と唱えるとギルドホール内の人々の声が鮮明に聞こえてくる。そして、三人は長い間占領していたテーブルから遠ざかり、自在扉のところまで来たところで精一杯の大声に呼び止められる。


「カズイさん! ミカさん! 待って下さい! ギルドマスターがお呼びです!」


 和維はそのまま逃げてやろうかとミカに目を向ける…。






いつも読んで頂きまして、

ありがとうございます。


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 追伸、感想開放しました。


今後とも

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