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説明

 ナディーンは、和維たちを連れて一階に降りると、人もまばらな掲示板の前に来る。その中の一枚を手に取ると和維とミカに見せてみる。



クエストランク:E

依頼内容:討伐

東南の森 ゴブリン掃討

達成条件:ゴブリンの右耳 20個

報奨金: 金貨 一枚

期間:  3日

依頼主: 冒険者ギルド


「これがクエストの依頼書です。依頼内容と報奨金、そして有効期限が記載されています、こちらのクエストはEランクですので、お二方はまだ受ける事は出来ません。ランクを上げるか、または複数のパーティで依頼を受けて、そこにEランク以上のパーティーが参加していること、その条件がクリアされていれば、クエストを受理可能です。勿論人数が多くなれば、報償も頭割りですけどね。」


「罰金は? あるの?」

「依頼内容によりますね。依頼受領時、ようはカウンターに持ってきて頂いたときに違約時の注意をお知らせする場合がありますね。ちなみに罰金の上限は報奨金として受け取る二倍までとなってます」


「そうなんだ、あ、あとランクアップの方法なんだけど、FからEってどのくらいかかるの?」


 ナディーンはEランクの依頼書を掲示板に貼り直すと他の冒険者たちの邪魔にならないようにカウンターの方へと歩き出す。


「報奨の累積獲得金額が金貨100枚になったら、試験を受けることが出来ます。早いパーティで6ヶ月、通常は一年程度でしょうか」

「結構、早いんだね」


「Fランクは見習い期間みたいなものですからね、仕事をきちんとこなせるかという訓練期間のようなものですね」


 ミカが掲示板の方を向いていたのを見て、カズイが声をかける。

「ミカ、とりあえず、何か受けようか?」


 その問いに応えたのはミカではなく、ナディーン。

「あ、待って下さい。パーティ編成しないと、お二人は一緒にパーティで行動されるってことで良いですよね」和維とミカは頷き返すと、ナディーンは二人のギルドカードを身につけた手をとる。「あとで変更できますから、とりあえず、カズイさんをリーダで登録するとして」


 ナディーンは和維の右手を上、ミカの左手首を上にして、ギルドカード同士を上下に合わせた。

「パーティ登録と、カズイさん言って頂けますか?」和維が頷いてそのまま言う。


『パーティ登録』二人のギルドカードが一瞬ボゥっと光る。


「これで登録完了なんですが、念のため、お二方ともカードに向かって、ロックって言ってもらえますか」


 指示されたように和維もミカも『ロック』と言うと再びそれぞれのカードが一瞬光る。ナディーンはそれを確認するとうんうんと頷いた。


「ロックで誤作動防止しておかないと、寝ている間に操作されたりとかして、昔大変なことになったそうなんです」


 和維は、大丈夫眠れないから。と言おうとしたが、ミカに言っちゃダメですよと睨まれて、その言葉を飲み込む。


「それじゃ、あとは、何かあったら、言って下さいね」


「うん、ありがとう。ナディーン。」

 ナディーンは二人に軽くお辞儀するとカウンターの中へと入っていった。


主様(マスター)、何を受けますか。私にはこのような事は初めてでわかりかねます」


「奇遇だね。……僕もだ」和維がミカに目だけ送って嘆息気味にそう言うと掲示板に近づいた。


 その時だった、階段からドンドンと降りてくる音が聞こえてきて。


「カズイ! ミカ! あんたたち、まだ居たね。危うく忘れるところだったよ、こっちおいで」

 コンスタンツェがカウンターの前に立って、和維たちを手招きしている。そこそこ大きな声だったのか、ギルドホールの中に居る冒険者たちが、ひそひそ声を立て始め、和維とミカを一斉に見た。


 和維はちょっと困ったように眉をひそめるとコンスタンツェの方のところに出頭する。


「…声おおきいから。あんまり目立ちたくないから。さ」

「声大きいのは地声だよ。で、それはコレで、無理になるかねぇ。これ処理しておくれ」


 コンスタンツェは一枚の紙をカウンター越しに居るギルド職員に渡すと、何かを指示した。渡されたギルド職員は、紙と和維、ミカを交互に見てから、「さっさとおし!」という言葉で我に返るとカウンターの奥にいる、ナディーンの所にいって紙を渡す。


 ナディーンは慌ててカウンターに出てくると和維たちに言った。コンスタンツェはその様子をカウンター越しにみているだけだ。


「カズイさん、ミカさん、ギルドマスターからの指名依頼です」一瞬ギルドホールが静まり返り、直後、「ギルドマスターの指名かよ」「登録したてじゃないのか?」とかいろいろとホールの中から聞こえてくる。


 和維は、しまった。という顔になって、アーストの言葉を今更ながら思い出す。


「それは上でやってくれても良かったんじゃないの? コンスタンツェさん……」

「うちのギルドは、飛び級とか出来ないって言ったろ、何でも公にするのがモットーなんだよ、多少のやっかみは、仕方ないと思いな」


「続けますよ?」ナディーンは小声で、和維に同意を求めてきた。ちょっと涙目になってみようかと思ったが、和維は頷きかえす。


「依頼内容はカロリーナ王女帰還における護衛任務で、すでに達成済みとなっていますね。受付と達成報告を行いますので、ギルドカードを提示して下さい」


「……やっぱりそれだよね。うん、わかった」和維は観念して、指輪をカード形態に戻してナディーンに渡す。ミカも同様にナディーンに腕輪を渡した。


 ギルドホールの連中は後ろから「おい、あいつらがカロリーナ王女の護衛してきたんだってよ」「よく見りゃ、装備品が」「ありゃ東洋人じゃねぇか」とか、ナディーンが戻ってくるまで続く。


「お待たせしました。こちらをお返ししますね」


 和維は返ってきたギルドカードを見ると魔力を通す前に右上の宝石が変わった事に気がつく。今まで白かった宝石に、白く光る成分が加わったようだ。鑑定するとオパールだとわかる。ミカのものもオパールになっていた。


「…あの、……これ、宝石が変わってるよ」

「報奨金が金貨200枚でしたので、パーティで頭割りして金貨100枚ずつ、そして、ギルドマスターからのEランクへの試験免除という指示もありましたので。累積獲得金額と試験達成ということで、Eランクへランクアップしました。おめでとうございます」


 また、辺りがシーン…としてから、ざわつき始める、「すごいぞ! いきなりEランクになったぞ」「ギルドマスターの試験免除って実力ありって事だろ、うちのパーティ誘うか?」などなど…。和維は聞いていて、ちょっと恥ずかしがった。親なしで周りから蔑まれる事はあっても、うらやましがられたり、ほめられる事などなかったに等しい。


 コンスタンツェは少し収まるのを確認してから、ギルドホールにいる全員に言った。


「今日からこの冒険者ギルドに所属する事になった、カズイとミカだ、実力はあたしの折り紙つけてやる、みんななかよくやっとくれ!」というと、和維を振り返って、片目をつぶって、ニッコリと笑い、ここは小声で「あんたたちもよろしく頼むよ」と言った。


 コンスタンツェはギルド職員たちを見ると。

「ちょっと、出てくるからね、夕方には戻るから、あと頼むよ」と言って、ドシドシとしかし軽やかな身ごなしでギルドホールを抜けて建物から出て行った。


 全員が見送っていき、それぞれ、和維たちを見たり、それぞれのパーティと打ち合わせに戻ったり、掲示板を見に戻る中、ナディーンが忘れてた事項を言い始めた。

「あ、報奨金は今受け取ります? ギルドでお預かりしますか?」


 和維はナディーンの天然をうけいれつつ、受け取るよと笑顔でそう言って返すと、ミカがカウンターから今度は見られる前からバックパックにつめていくという作業を繰りひろげる。ちょっとやり過ぎだなと、和維は思ったが緊張していた身体が楽になるのを感じてナディーンとミカに心で感謝した。







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