規則
王都は4つの区画に分かれており、区画毎に住み分けというものは無いようだ、昔は貴族区域・商人区域などに分かれていたようだが、自然と人の流入や商売などでの淘汰・改変がなされている。
昔から変わらないのは北地区全域が王城となっており人の流入や資本の流入などでは揺るがない為だ。さらにこの地区には騎士団施設や団員の住居もあり、北地区に入る橋を全て落とす事で水堀、空堀とすることができた。
和維とミカは眠る事が出来ない和維のせめてものワガママを聞き少し遠回りながらも真っ白な尖塔を持つ王城を右目に見ながら、冒険者ギルドへと向かっている。
王都だけあって、人も多いかと思ったが、現代日本の狭さと比べたら、全く人はまばらである。人が居ないせいか、すいすいと冒険者ギルドへと到着してしまう。和維が非常に残念そうにミカをみるが、ミカはあえて彼を見ようとしない。散歩のしつけをする犬の主人のように、ただまっすぐにギルドを見ながら歩いた。立ち止まりませんよ。と。
冒険者ギルドへ到着すると、和維はこめかみに指を添えて、鑑定を行う。ギルドホールを見つめ地図の切れ端=昨晩の盗賊たちを確認してみるが、彼らはここに居ないようだった。
また、昨夜とは違って冒険者たちの持っている装備もそれほど良くないように見える、レベル表示のようなものが有れば彼らのレベルもそれほど高くないのかもしれない。
和維たちはギルドホールからカウンターの方をみるとナディーンやその他職員たちがせわしく、冒険者たちと書類やギルドカードの提示を受けたりをしている。明日の朝来いということで来てみたが、これでは話しかけづらいという思いもあり、和維たちはギルドホールでちょっと待っていることにして、カウンターから少し離れたところに空いたテーブルがあったので、そこに座る。
冒険者たちを観察していると、一つのパーティには人数はまちまちだが、大体二人か三人組が多い。建物に入るとギルドホールとカウンターの間くらいにある掲示板向かう。そこには依頼書と思わしき紙が様々貼ってあり、自分たちにあった依頼を選んで剥がしカウンターへと持っていくようだ。ときには、知り合いがくるのを待って6人程度集まったところで、依頼書をとりにいく面子もいる。
ひとしきり、冒険者がさばき終わって、ナディーンがこちらにやってきた。
「カズイさん、ミカさん。おはようございます。いらっしゃったなら声をかけてもらえれば良かったのに」
「いや、忙しそうだったし、ちょっと、見学も兼ねて、ね。ごめん」
和維は申し訳なさそうに頭の後ろをかいて、ナディーンに謝った。それをみたナディーンはちょっと意外そうな顔をしたあと、すこし頬を赤らめて、和維たちとは逆を向いて、後ろ向きに声をかける。
「今度はちゃんと声をかけて下さいね。えっと、ギルドマスターがお待ちですので、どうぞ、こちらへ」
和維とミカは言われたまま、ナディーンのあとについて、階段を登り昨日の部屋へと通された。そこには、書類の山を左から右に片付けているコンスタンツェの姿があった。老眼なんだろうか、鼻に眼鏡を引っ掛けて、書類を見ている様はちょっと面白いとおもってしまう。
「なんだい、ようやく来たのかい。さっさとお座り、ナディーン、あんたもだ」
コンスタンツェは眼鏡をとって、書斎に置くと応接テーブルのお誕生日席にドッカとすわる。和維とミカは昨日同じように、コンスタンツェから向かって左に、その対面にはナディーンが座った。
「あんたたちも知っての通り、魔物が急激に増えててね、これでも忙しいんだよ。ローゼンマイヤーの爺様が何を思ってあたしに説明させようってのかはわかってるけどね。じゃ、ちゃっちゃといくよ」
コンスタンツェから聞いたのは本当にギルドの規則だけだった。
一.ギルドランク以上のクエストはギルドマスターからの直接依頼以外は受けられない
二.ランクアップにはそれぞれ試験合格が必要
三.ギルドカードの再発行には金20枚が必要
四.ギルドランクD以上であれば他国でもクエストを請け負う事ができる
五.ギルドランク毎に定められた期間クエストを受けなかった場合にはランク降格となる
六.Bランク以上で親方株の購入が可能
七.親方になった場合にはギルド評議員としてギルド運営に参加する事ができる
八.ギルド内での揉め事は基本的に当事者同士話し合いで解決させる事
「基本的なところはこんなところかね。忘れてる項目あったら、あとで、カウンター横にもおんなじのあるからソレ見ときな。まぁ、あんたたちは他の国でも自由にやりたいだろうし、ちょっと無理してでも、さっさとランクあげちまっとくれ」
コンスタンツェはそこまで一気に言い上げると、後ろの書斎の方を向いて、そこに置いてあった何かをとる。
「さぁ、指輪とブレスレッドを出しな」
和維とミカはそれぞれ、コンスタンツェに向けて指輪と腕輪を差し出した。彼女はそれを受け取るとそれぞれに白い宝石を取り付けて、また、和維たちに返した。
「これであんたたちはFランクの冒険者だ。仮にも冒険者ギルドに登録したんだ、この国とギルドの為にがんばってはおくれよ」
和維は受け取った指輪を右手にはめて、ほわぁー。ギルドの証や。とか考えていたが、横からミカに脇腹を突かれ、コンスタンツェに答える。
「わかったよ、ギルドマスター」
「やりたくてやってんじゃないって、言っただろう、コンスタンツェで良いよ、ったく」
「わかりましたよ、コンスタンツェさん?」
コンスタンツェは、うんと頷いたあと、ナディーンを見やった。
「では、依頼の受け方などは、私の方からご説明しますね、下に戻りましょう。どうぞ」
和維とミカはナディーンに促されて立ち上がる。和維はナディーンのすぐ後ろについていくと、ミカは立ってからギルドマスターに一礼した。和維も慌てて、コンスタンツェに礼をする。
彼らが出て行ったあと、コンスタンツェは書斎机に戻り、袖の引き出しから、両手大の水晶玉と台座を取り出して机上に置いた。彼女は水晶玉の上に手を置くと、呪文を唱え、その呪文に反応して、水晶玉の中にぼんやりとした光が踊っていた。そして、周りの様子を確認して誰もいない事がわかると水晶玉に向かって話しかける。
「あとで、王城に出仕するからね。あんたの要求は聞いてやったんだ、こっちの話しも聞いておくれよ」
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