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光渦

 ギルドの中庭に出たところで、すっかり夜になっていた事がわかる。そこは10メートル四方をギルドの建物の壁に囲まれており、昼であったならば、結構暗かったのではないかと思われたが四隅には灯りの玉が浮かび、太陽光までいかないがそれなりに辺りを照らしている、これもまたミカがクロスに『戒めを』と祈ったのは言うまでもない。


 そして、まさにその戒めを受けるべき対象者は、中心の台座に置かれた直径50センチから70センチ程度の透明な水晶玉を目の前に、「これだ。これがステータス読み込み機だ。これが実物か……」などと、ブツブツ言っている。幸いナディーンとアーストには聞こえていないようだが、明らかに変質者っぽく、両手のひらをワキワキして、水晶玉を覗き込む姿にドン引きしている。


 その行動がミカの諦めにつながり、アル事を注意する気も失せさせたのは、後々になって、かなりまずかったと反省することになる。


主様(マスター)。 ま す た ー 。 そろそろ現実に戻ってきて下さい。クロス様にお説教食らわしてもらいますよ」


「あ、それメンドクサイ。わかったよ、悪かったよ……」


 和維は惜しそうに水晶玉から離れると代わりにナディーンが、水晶玉の前に立って、和維とミカの前に黒いトレーを差し出す、その上には複数の板状の金属板が4枚置かれており、それぞれ、現代のキャッシュカードと同程度の大きさがあり、四辺のうち一辺の角に丸い穴が開いている。また、色は全て銀色ではあるが、縦に線の入ったモノが二つ、斜めに線の入ったモノが二つ並べられていた。


「こちらがギルドカードになります、今後冒険者ギルドに加盟している間は、ずっと身につけて頂くものですね。この中から一枚選んで下さい」


 和維はトレーの上に置いてある板を見比べながら言った。


「この縦と斜めの線の違いはなんなんです?」


 ナディーンは自分の左腕の袖を少しめくって、赤い宝石のついたブレスレットを見せる。


「斜めの線のものがこのブレスレットになります。縦の線が入ったものは指輪になるんです。カード形状ですとやはり、落としたりしますし、携行には少し不向きですから、こういった形状に変形するんですよ。サイズもかなり自由度がありますし。あとで変更料は発生しますが、変更も可能ですから」


 和維は変更が利くのならということで、指輪にしてみる。アラジンと魔法のランプで指輪から魔人だしてたしとか、思っているのだろう。やはり、にんまりしている。


 ミカはガントレットを着用しているため、指輪が無理そうなので、ブレスレットタイプを選んだ。


 ナディーンは二人が選んだのを確認して、和維を水晶の前に促す。


「では、台座のそのくぼみに置いて頂いて」


 台にはカードの形にくりぬかれた深さ5ミリ程度のくぼみがあり、言われるがまま、そこに指輪タイプのカードを置く。


「情報をカードに記憶させますので、水晶に両手をついて下さい。ステータスを測りますね」


 和維は両手をつき、ミカが慌てたように「しまった!」と言うのが早いかナディーンが水晶に魔法を唱える。


「万物において中立を貫く我らが神よ。この者を神の秤に載せ……」と唱えたところで、天から水晶へまっすぐと光が伸びてきて、水晶の中で光がゆらりと揺らめく。

 ミカは詠唱を中断しようと試みるが、結界に阻まれ、その中で動きが緩慢になり、ナディーンにも和維にも触る事が出来ない、そして、ナディーンは水晶に魔力を注ぎ込み、呪文を続ける。


「かの者の能力を聖なる銀に記したまえ!」


 水晶の中の光の渦は揺らめき、揺らぎ、光の渦となって、水晶に触れる和維の両手へと触れる。その瞬間、天からの光はより太くなり、水晶全体から和維の身体に至るまで光の渦が飲み込んでいく。どちらかというと光は暴走しているように光が洪水となって荒れ狂っているような感じもした。


 その時、和維の左目に。


—こら! そこのボケ。力のコントロールくらいしてやれ。そこらの神でお前のちから測れって、いじめ以外のなにもんでもねぇ。 —

—ほへ? —


 水晶の光に集中していた和維は思わず、素っ頓狂な返事をしてしまう。


—っつ! ダメだ。さすがに耐えきれねぇ。力のコントロールできるようにしとけっての。これ以上やるとこの世界の神が一人往っちまうから、こっちでコントロールしてやる。 —

—ご、ごめん —


 水晶と和維に纏わり付いていた光の洪水が、徐々に収まってゆく。アーストとナディーンは途中から目を閉じてしまっていたが、瞼の外が暗くなってきたのを確認できると、目を見開き、水晶と和維を交互に見た。ミカも和維に結構近づいていたが、さわれもしなかったので、ちょっと落ちている。


「だ、大丈夫ですか? ごめんなさい、この水晶がこんなに暴れるのは初めてで。なんともないですか?」


「ご、ごめんね。大丈夫だから」


 和維は気遣ってくれたナディーンと、水晶で繋がっていただろう、秤の神とやらに心から謝った。ナディーンは和維の無事を確認できると、水晶と台座に異常がない事を確認して、台座の銀板を手にして、銀板の数値を確認する。


「あれ? あれあれ? ステータスが記録されていませんね、おかしいな、名前とかは入ってるのに、もう一回……」

「いやっ! その必要はありません、主様(マスター)とわたしは、ちょっと特殊でして、ステータスを隠しているのです」

 あわてて、二回目を拒否したミカは銀板を、ナディーンからいつの間にかスルッと受け取り、和維に手渡し、自分の銀板をナディーンの前に差し出した。

 ナディーンがアーストを見ると彼も一様にうなずき返すので。


「そ、そうですか、わかりました」と言って、ミカから銀板を受け取り、先ほどと同じく、呪文を唱える。


「万物において中立を貫く我らが神よ。この者を神の秤に載せ、能力を聖なる銀に記したまえ!」


今度は、天からの光の渦は洪水にもなる事無く、ミカとしっかりと握手するかのようにやさしく包み、そして離れていく。


 ナディーンは目を開けたままで居られたようだ、水晶とミカに近づいて、銀板をとると、確認してみた。


「……! 本当にステータス記載がありませんね、このようなことがあるなんて」


 ミカを見て、信じられないというような目で見て、銀板をミカの左手首に置き、魔力を込めてくるっと巻き付けた。ガントレットに銀のブレスレットが光っている、中央部分には穴が開いた状態になっている。

 そして、和維の銀板も右手で良いですか? と聞いてから、魔力を込めて指に巻き付けた。こちらも右手の人差し指に銀の指輪が光り、中央にはブレスレットと同様に穴があいていた。


 和維が人差し指に巻き付いた少し太い指輪を見ながら、ナディーンに聞いた。


「この穴は? なにか入るんですよね」

「そうです、そうです。ここには冒険者ランクを示す宝石が入るんです。登録したては全員宝石は入りませんが、ランクが上がる事によって、宝石の種類が変わるんですよ。ランクは最下位のFからSまでの7段階、それぞれ、認定試験ないし、その条件を満たした場合、昇格する事が出来ます。」


 ナディーンから聞いたランクと宝石の関係は次の通りだった。

 S: ダイヤモンド

 A: サファイア

 B: ルビー 

 C: オニキス

 D: エメラルド

 E: オパール

 F: ムーンストーン


ちなみにナディーンのブレスレットについている宝石は赤かったのでルビーだろう、ちょっと間の抜けたところがあるように見えるが、そこそこの冒険者だったようだと和維がちょっと尊敬の目で見ていると、ギルドホールの方から盛大にガチャつく音をさせながら、何者かが近づいてきていた。






いつも読んで頂きまして、

ありがとうございます。


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