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読解

 とりあえず、腕組みして考えているアーストは、放って置く事にして、和維とミカは書類に記入を始める。


 名前:カズイ

 性別:男

 種族:人族

 出身:日本

 親方(身元引受人):


 もちろん、最後の欄はなにも書かない。いや、書けないので、これも放置。ここまで書いたところで見てもらおうと、和維はナディーンへ手渡す。


「えっと、最後の欄はアースト様が考え中なので何も書いてないですけど、これで良いですか?」


 どれどれ? とナディーンが手に取ってみると紙を見て眼鏡をかけ直したり、いじったりしている。


「……これは何語でしょう?」


 和維は、あっ! と声を出すとナディーンの手から紙を受け取り、「あー……」と左側にいるミカを見て、ちょっと困った雰囲気でこめかみに手を当てる。


—何語って言われてるけど!? 僕はいままで彼らと会話できてたのに、なんで? 字も読めてたのに —

—人の言葉は最初一つだったのですよ? ご存知ありませんか? —

—えーっと。ミカさん? それって、旧約聖書とか、その時代ですかね……。 なーんで、文字が書けない言葉を読めたり、話しをする事が出来てたんですかね? —

主様(マスター)のお言葉はその創造物に直接働きかけ、意思疎通が出来ていました、そして、読む事が出来るのはその左目ですね。主様(マスター)の認識できるように自動翻訳されています。ということで良いですか? —


 ミカの返しがとてもトゲトゲしい。和維はちょっとヤバいかなぁと思いながら、左目を閉じて右目だけで、登録用紙を見てみる。


—あぁー。読めないよ。自分が書いた字が日本語なのに、これ以外読めない…… —

 ミカは無言を貫く、後で、盛大に今朝方の事を謝ろうと心に決めた…。


 和維はこういう場合のテンプレを探そうとするが、読んでいた厨二小説では、勉強する以外書けないか、日本語が通用した。というケースしか覚えていなかった。一瞬、ミカの言う通り言語を統一してやろうかという事も頭によぎったが、ちょっと暴挙が過ぎるのではないかと自分でも躊躇している。だが、暴挙と考えが及んだところで、和維の若干螺旋階段のようにひねくれた性格が顔を出す。


「パンが無いならお菓子を食べれば良いじゃないか……」


 と呟くと、こめかみに手を置いたまま、想う。

—表示 —翻訳:日本語|プリント —


 左目に表示されたものをそのまま、登録用紙に印字した。文字が書けなくても、これで万事大丈夫。イメージがそのまま具現化するという究極チートを発動する。和維は紙を右目を閉じたり、開いたりして、編集や写植でやるように誤差がない事を確認してナディーンに手渡す。


「あれ? あれれ?」


 ナディーンは再び眼鏡をかけ直したりして確認して、目をぱちくりさせた。その様子がちょっと可愛いが、和維は寸借詐欺でもしたような感じで、少し心が痛い。


「えっと、こちらで内容は大丈夫だと思いますが、あ、ミカさん?のも大丈夫ですね」


 ミカからも紙を手渡され、それも確認できたようだ。ナディーンがまだ腕組みして考えているらしいアーストを見て言った。


「アースト様、お二人の書類はあと、身元引受人だけですが、どうされますか? あれならアースト様の……!! ごめんなさい。すみません!」


 身元引受人をアーストにと言ったところで、ナディーンはアーストに向かって平身低頭という感じで、謝り倒し始める。アーストは緩やかに、腕組をやめると、ナディーンにやさしく言う。


「大丈夫だよ、気にしてないからね。こちらこそ、引受人の事忘れてたんだからね。あのじじいを最初から連れてきてれば良いだけだったんだから、こちらこそ、ごめんね。ちょっと借りるよ」


 アーストはナディーンから和維とミカの書類をすっと受け取ると、そこにあったペンで最後の欄に自分の署名をする。横から和維が覗き込むと、『アースト・ヴァン・ベルン』と、書かれていく、ふぅん、国名が家名になるんだねぇ。とか考えていると、色々と符合し始めてくる和維が居た。


「アースト様、あとでゆっくり教えて下さいね。いろいろ(・・・・)」


 アーストがちょっとしまったかな、という顔になっているが、そこはもう和維には関係なかった、貴族イベントではいろいろフラグがあることを実感していた。


 — 主様(マスター)……。顔がにやけてます。ここは現実ですよ。ゲームではないと、またクロス様に怒られますよ —

—ごめんなさい。聞こえてるだろうけど、クロス、ちょっとわかってるから、自覚あるから、今でてこないで…… —


 和維は心の中で、ごめんなさいを10回くらい言い続けた。

 左目に、チカチカとカーソルが動く。


—……。 —


 和維は、よし、怒る通り越してあきれた。とか考えて、ミカに見えぬよう、右手を握りしめガッツポーズしてみる。


 ナディーンはアーストに渡された書類を見ると、一つ一つの項目を指差し確認して。最後にウンとうなずいた。


「これで、書類は結構です。後ほど、ギルドマスターからギルドについて説明をされるということでしたので、先に冒険者ギルド所属の身分証明書、いわゆるギルドカードの発行をしますね、こちらにどうぞ」


 ナディーンは受付カウンターから出て、すぐそばにある中庭に三人をいざなう。


 そばでは和維が、すごいぞ、副団長フラグ、ギルドマスター直々だぞ!とか厨二よろしくわくわくしている。

 その姿にミカが目頭を押さえて、クロスに祈ったのは言うまでもない……。







いつも読んで頂きまして、

ありがとうございます。


皆様の感想やご評価が、

 とても励みになっています。

お気に入り登録頂けますと幸いです。

 追伸、感想開放しました。


今後とも

よろしくお願いします。

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