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一歩

 和維はテントを出ると、幕舎の前で兵士3名に指示を出しているアーストに近寄っていく。


「…三班は一班と交代し休憩、二班は陣を撤収だ。朝食後帰還する」


 アーストはそう言い終わったところで、視線をそれぞれ走っていく兵士たちから和維に向ける。


「カズイ殿は良く眠れましたか?」


 和維はアーストの近くまで行くとローゼンマイヤーも幕舎から出て来たところだった。


「あんなに広いテントをありがとうございました。とても良かったです」


「そうですか、夜遅くまで声が聞こえたもので、少し心配しました」

「若いもんは少し眠らんでも大丈夫じゃ、あんな可愛い子が近くにおったんじゃあ、眠れなくてもしかたあるまいて、あっはっはっはっは」


「ローゼンマイヤー様、姫君の御前ですので、何卒」


 和維の右、和維のテントから幕舎を挟んだ方向から良く通る女性の声が聞こえて来た。その女性はカロリーナより少し背が高く、白くなめされた皮のチェニック、仕立ての良さそうなブラウス、それに濃い藍色の七分丈のズボンを履き、ふわりとしているがまっすぐな金髪を肩甲骨あたりまでのばして、胸元の膨らみはおとなしめで、全体的にすらりとしとして、ブルーの瞳に冷ややかな視線を老人に向けている。すぐ後ろにはカロリーナも顔を赤らめて、下を向いている。


「まぁまぁ、ここは宮殿でもあるまい、堅苦しい事は抜きじゃ、セーラもカズイ殿に挨拶せい、我らの命の恩人であるぞ」


 セーラと呼ばれた女性は、後ろのカロリーナに当たらぬよう、半歩前に進み出て、和維にお辞儀をして言った。


「失礼を致しました。昨日はカロリーナ様のお命をお助け頂きましてありがとうございました。わたくしはカロリーナ様のおそばにお使えしております、セーラと申します」


 和維は綺麗なお辞儀を見るのが初めてだったので、少し見ほれてしまったが、なんとか、持ち直して、言葉を紡ぎだす。


「初めまして、カズイと申します。えっと……、こういう時は、どこから来たか言っても良いですか、アースト様」


 和維は驚いた表情のアーストを見る、和維の方と言えば、昨日の様子から頭が切れそうなことのわかったこの世界の住人であるアーストに多少任せてしまおうという腹づもりだ。アーストはといえば、和維の方を向いて、こいつやりやがったとは顔にこそ出さないが、少し首を振って、和維から受けた言葉につなげた。


「ここに居る者たちならば、カズイ殿とミカ殿の戦闘を見て知っておりますので、本当の事を言って頂いて差し支えありませんが。まぁ、以降は口外されない方がよろしいでしょう。」


 幕舎の天幕が朝までずっと光が灯っていたことから、アーストとローゼンマイヤーで今後の二人の処遇などの話しあいをしていた、もしくはアーストが一人で考えていた事は、このやり取りでわかった、和維はそう考えて、心の中でニヤリとして、セーラに言った。


「異世界より送られて参りました、カズイとそちらに控えるのがミカと申します。以後お見知り置き下さい。セーラ様」


「セーラで結構です。カズイ様」

 彼女は、和維の横に来たミカの方を見て、軽くそちらにも礼をし、カロリーナの斜め横に移った。


カロリーナが若干、モジモジしながら和維の方に出て、恥ずかしそうに言う。


「か、カズイ様とミカ様は、そ、その、恋人同士とか、そういう? 眠らなかったとか、その……」

「カロリーナ様! 王女たるものがはしたのない」


 慌ててセーラが主人の言葉を止める。止める言葉自体に和維は少し疑問を抱いた、自分よりちょっと下15・6才くらいの女の子だ、ましてや政治の道具になっていてもおかしくない王女殿下である、耳年増にもなっているだろうし、そもそも婚約者や中世などでは結婚して子供が居ても当然な年齢だろう、家族構成などをしらないが、この子は何か特別な子なのかもなとか思いつつ、王女に返答する。


「いえ、そのようなことはありませんよ、王女殿下、あくまでも、この世界の異変に対応する為のパートナーというだけですよ」


 その言葉にカロリーナが、安堵の表情とひと心地をつけたようにふぅと肩を下げた。その安堵の表情を見た和維は(あ、こっちのフラグ立つんだ)と少し意外そうにカロリーナを見ている。


 アーストの基に兵士が来て何かを告げて、また走り去っていった。


「とりあえず、朝食の準備が整ったようです。幕舎の中に用意させました、カズイ殿、ミカ殿、どうぞ」


 ローゼンマイヤーが先に入り、次にカロリーナ、セーラと続き、アーストはミカを先に幕舎に入れて、和維の肩にそっと手を置き、ちょっと止め、耳にそっとつぶやく。


「帰り道でお話しますが、とりあえず、色々と内密に。悪いようにはしません、というか、出来ませんから、いいですか?」


 和維はアーストのその言葉に頷く。アーストの手が少し強くなり、幕舎へ促した。







いつも読んで頂きまして、

ありがとうございます。


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