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エピローグ

あれから2年以上もの月日が流れた。


海沿いのちっぽけな墓の前に、一人の男が立っていた。


大きなひまわりの花束を添えて、男は何も言わずじっと墓を見つめている。


黒い長髪が風になびいて白い肌が覗いた。




死刑の日、沈黙を決め込んでいた近所の住民らが死刑囚の犯行までの経緯を通報。


殺害された実母の虐待から逃れるため、やむなく犯行に及んだとの判断が下され、死刑は取り止め、減刑処分となった。


男は流罪を言い渡され、今ではのどかな小さな町でごく普通の生活をしている。


誰もがこの減刑を「幸運だ」などと言った。


しかし男には、シイがもう一度機会を与えてくれたのではないかと思えてしかたがなかった。


「シイ…」


清らかな笑顔を最後に天へ召された少女。


とても純粋で優しい心を持ち、それは溢れんばかりであった。


男は一筋の涙を流す。


「来世でお前の魂と再び会いまみえるとき、お前は友を探さなくていいんだ」


そして、そっと口元に笑みを浮かべ優しく語りかけた。


「俺と友達になったからには、もうさみしい思いはさせないからな」


墓の前に跪き、温もりのない冷たい墓石に触れ、そっと口付けた。



―――――――おじさん!



と、太陽のように呼ぶ声が聞こえたような気がして顔を上げた。


そこにはどこまでも広がる美しい海。


笑いかけてくる少女の幻影。


あのね、あのねと、はにかむように。



―――――――ありがとう。大好きよ。



と、少女は無垢なまま、いつまでも笑っていた。





おわり


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