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祝福されぬ者たち ―Ungifted Heretics― 完全版  作者: 七鏡
追い求めるは理想と未来、捨て去るは過去と宿命
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Ungifted Heretic

地上にて父なる神に対する孤独な反逆を企てたアンセルムスは、持ち前のカリスマを武器に人々を焚きつきえた。

修羅になると決めた彼は、たとえ悪魔と言われようとも、この世界を取り戻して見せようと考えていた。たとえ誰に理解されずとも、彼だけは知っている。この世界を壊した元凶を。

感謝も理解も求めてはいない。ただ、見過ごすことのできない巨悪がそこにあるならば、戦うのみである。

神に対して、スキルは全くの意味を持たない。純粋な自身の身体能力のみが頼りとなる。

とはいえ、向かってくる敵、12人の神々はスキルが使える。厄介なことだが、彼らを潜り抜けて再び父なる神に近づかなければならないのだ。


ぼろ布を纏った黒い髪の青年は、戦いに敗れ住む場所を失われた流浪の民を見つけた。白い髪と、神によって押された烙印を体に刻んだ、国も故郷もない人々。

戦いに疲弊し、生きる希望もない彼らはアンセルムスの姿を見て、地に頭をこすりつけ、救いを求めた。

アンセルムスはそんな彼らに言った。

この世界をあるべき姿に戻す、と。だが、そのためにお前たちには死を覚悟してもらわねばならない、とも。

彼らは自分たちの子どもたちがより良い世界で過ごせるならば、と喜んで命を差し出した。

次にアンセルムスは魔族、と蔑まされる人々を自身の仲間に引き込んだ。

魔神や魔物を祖先に持つ彼らは、世界から拒まれる存在であり、爪はじきものであった。

彼らもアンセルムスの言葉に従い、忠誠を誓った。

そして、反乱の芽は確実に広がっていった。



魔神ルクソールは、この世界で初めて生まれた魔神であり、12人の神とも戦ったことのある猛者である。

ルクソールはアンセルムスの謀反を聞き、自らその戦線に参加を申し出た。常々神々の言う世界に疑問を持つ彼女は、もとよりアンセルムスに注目しており、その彼が起ったと聞くと、我先にとはせ参じたのだ。

ルクソールの参加は、他の魔神たちの参戦につながり、かくしてアンセルムスの軍勢は神々ですら軽視できない規模へと発展していたのだ。


「ルクソール、戦況は?」


アンセルムスは魔神に問う。女魔神は、冷たく理知的な紅い瞳を輝かせ、主に報告した。


「太陽の神ヴォーヴン、秩序の神ゼレチアの軍とわが軍は交戦しました。しかし、相手の力は強大であり、撤退を余儀なくされました。とはいえ、あちらにも損害はありましたから、無駄ではなかったでしょう」


魔神と言えども、神には勝てない。

ルクソールがその場に居たとしても、二人の神相手には敵わないであろう。

魔神の報告に、アンセルムスは思案する。

ほかの神々も、この戦争に参加している。脅威と言えるのは男の神々だけではない。女神たちもそれぞれ強力な魔力やスキルを有している。魔神ルクソールと言えども、束になってかかられるとすぐに倒されるほどの力を。ルクソールほどの実力鞘でもそうなのだから、苦戦は必至だ。もとより、そんなことは誰もが百も承知だが、アンセルムスに一縷の希望を託し、ついてきているのだ。その思いを無下にはしたくない。


「やはり、状況は不利、か」


アンセルムスとて、最初からわかってはいたことだ。だが、だからと言ってこのまま下がるわけにはいかない。グ、と拳を握りしめる。

自分を信じるもののため、そして世界の未来のためにも立ち止まるわけにはいかないのだ。


「しかし、どうしたものか。このままでは、我らは押されるばかり。数の上でも劣る我らは」


ルクソールの言葉にアンセルムスは重く頷く。

決定的な武器がほしい。神々でさえも倒せる武器が。

ごくりとつばを飲み込むと、アンセルムスは立ち上がる。


「アンセルムス様?」


「ルクソール、頼みがある」


そう言ったアンセルムスの次の言葉に、ルクソールは驚きながらも頷いた。




アンセルムスは口に己の舌を噛まぬよう布を押し込めた。

そして、ルクソールに自身の手足を縛らせ、寝台に横になる。


「本当に、行うのですか」


ルクソールの言葉に、頷くアンセルムス。その瞳に迷いはない。

アンセルムスの言った、神を倒すための決定的な武器。それを作るには、自分の血肉が必要である、と。

アンセルムスの血肉と魔力で作られたものはアンセルムスによる『祝福』により、神からの干渉を受けない。いくら神と言えども、アンセルムスの力を完全に抑え込むことは不可能。

血肉と魔力でアンセルムスは『武器』を作ることにした。

ただ、生命を殺す、という一点にだけ特化した武器を。『神殺しの刃』を。

ルクソールはアンセルムスの心臓の上に手を置き、そのまま胸に手を静める。

激痛がアンセルムスを襲う。

魔力の中心である心臓。それを魔力の結晶に変換する。魔力の結晶化のスキルを持つ魔神ルクソールにしかできない芸当である。

心臓を魔力の結晶へと変換することは、アンセルムスにとっても相当な覚悟のいることであった。

身体への負担はもちろん、神の持つ絶対的な生命力を削ることになるのだから。

そして、その身に宿るスキルも失い、その魂は大きく形を失うのだ。そして、その痛みは計り知れない。肉体、魂をも痛めつけることとなるのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・ッゥ!」


叫び声が、布に阻まれる。だが、その絶叫が聞こえるようで、ルクソールは眉をしかめた。アンセルムスの叫びを聞くのは、辛すぎた。

そして、長い時間が経った。

アンセルムスの体内より取り出された魔力の結晶。不思議な光の宿るそれを、さっそくドワーフたちは加工を始めた。

アンセルムスは心臓を失くしながらも、無理やりに体内を弄り生存できるようにした。


「ご苦労、だったな、ルクソール」


「アンセルムス様、少しはお休みに・・・・・・・・・・」


立ち上がろうとするアンセルムスを制すルクソールの腕をやんわりと振り払い、アンセルムスは言う。


「俺は戦わなければならない。お前やこの世界のすべての生命のために。俺たちが見た明日のために」


「アンセルムス様・・・・・・」


アンセルムスは、ルクソールの長い銀髪を撫でる。


「ルクソール、お前にこんなことをさせて、すまないと思っている」


「そんな・・・・・・・・・・・・・」


女魔神はアンセルムスの胸に顔をうずめ、首を振る。


「私はただ、あなたを」


己の胸の中で泣く女魔神は、だがそれ以上は言わなかった。彼が愛しているのは、女神マキノ。その愛が変わることはない。自分の想いが、報われることはないのだ。

その思いを知り、利用しているアンセルムスはただ彼女を抱きしめることしかできない。これで、せめてもの償いになれば、と。それが余計、彼女を傷つけているようで心苦しかった。


「すまないな、ルクソール」


何も答えず、魔神は強くアンセルムスの背に手を回した。そして、黒髪の神の唇に、そっと自身のそれを押し付けた。






七日七晩、ドワーフの名工たちはその魔力の結晶を加工し、剣に仕立て上げた。ルクソールも度々その魔力をつぎ込み、魔力結晶の加工に協力した。

それまで見たこともない、神の心臓で作られた剣は、歪なものであった。

だが、その強大な力を誰もが感じ取ることができた。

『神殺しの刃』の完成であった。全てを殺す、神器。希望の光が。


剣の完成のころには、アンセルムスたちはその数を大きく減らし、もはや風前の灯、といった戦力しかなかった。

アンセルムスはルクソールや自身に最後まで付き従うと決めてくれた者たちの顔を見る。


「次の戦いは、苛烈なものとなる。恐らく、多くのものが死ぬであろう。それでも、私は偽りの神を討つ。今まで死んでいった多くの魂のためにも」


「アンセルムス様」


流浪の民の若き指導者の黒装束がアンセルムスに口を開く。


「どうした、ファーレンハイト」


「私どもは、あなたに救っていただいた。ただ滅びを待つ我らに光を与えてくださった。たとえ死んだとしても、我らの魂はあなたの施してくださった数々のことを忘れはしません」


「・・・・・・・・・・ありがとう」


そう言い、頭を下げるクオヴァ-ゼ・ファーレンハイトや彼の一族を見る。


「アンセルムス様」


ルクソールら、魔に属する者たちも、アンセルムスに頭を下げる。


「我らも、共に戦えたことを光栄に思います。アンセルムス様は、我らのことは気にせずに、目的だけをお果たしください」


「ルクソール・・・・・・・・・・・・・」


アンセルムスはその場に居る数百の仲間を見る。

そして言った。


「忘れはしない。共に戦った勇者たちのことは。ここに誓おう、偽りの神は必ずや討つ、と」


そして、世界を取り戻す。





オリュン山。それがアンセルムスたちの最後の戦場であった。

数万の敵に対し、アンセルムスの側はわずか千にも満たぬ軍勢のみ。そればかりか、敵には12の神々全員がいる。

状況は、圧倒的に劣勢。


「反逆者アンセルムス!最後のチャンスだ、降服しろ!」


一番の親友である、太陽神ヴォーヴンの言葉。彼の顔は苦痛で歪み、アンセルムスを見ている。自分で選んだこととはいえ、友と戦うことに痛みを感じないわけにはいかない。だが、アンセルムスは冷徹な反逆者としての面を被り、その本音を心の闇に葬り去った。彼が抱えているものは、自分だけの命ではないのだ。私情は捨てた。


「こんな戦いは無益だ!」


「ヴォーヴン、すまないが私は退くことはできぬ」


穏やかに13人目の神は言う。


「私に付き従うもののため、世界のためにも私は進むしかない」


「世界を壊してまでもするべきこととはなんだ!?」


ヴォーヴンも、ほかの神々もついにアンセルムスが何のために戦うかは理解できなかった。

だが、それでいい。


「かつて、我らが誓った約束だ。星の海で誓った約束を、今こそ」


それすらも、彼らは憶えてはいまい。『神』にいじられ、その記憶さえないであろう彼らには。

13人、何もない宇宙で見た、遥かな昔の思い出。

それを胸に、アンセルムスは進みだす。

鈍く光る『神殺しの刃』を握り。


「我が名は、アンセルムス!悪意と真実を司りし13番目の神なり!我が道を阻むものは、友であろうとも切り伏せるのみ!」


「・・・・・・・・・・それが答えか、アンセルムス」


答える声はもうない。

二人の視線だけが交差した。

ヴォーヴンは手を挙げ、全軍に命令する。


「神に仇名す裏切り者たちを倒せ!」


数万の軍勢は、アンセルムスたちに襲い掛かった。




ファーレンハイト、ルクソールに守られながら、オリュン山山頂天上の宮殿につながる階段へと向かうアンセルムス。

仲間たちは身を挺して盾となり、無残に死んでいく。

神々の苛烈な攻撃が容赦なく襲う。


「ぐあああああっ」


黒装束がまた一人、死ぬ。

ファーレンハイトは心の中でその者の勇気を湛えた。そして、かの戦士の命を奪った敵を自身の腕に装着したカタールで攻撃する。喉笛を掻き切られ、絶命した兵士の死体を踏みつけ、彼は進む。

アンセルムスは神殺しの刃を振るい、敵を蹴散らす。

彼の前には、神々が迫ろうとしているが、それを仲間たちが防ぎ、道を作り出していた。

神を相手に、一回の人間や魔族ができることなどない。むしろ、あっけなく命を奪われる存在でしかない。

なのに、彼らは執念で立ち続けた。

死ぬほどの攻撃を受けても、立ちはだかる。まるで、魔物ゾンビのように。


「何が彼奴らをこうまでさせる!?」


戦神クオンタは死なない兵士を相手に驚愕の声を上げる。戦神を相手に怯まぬばかりか、死してなおアンセルムスを守らんとするその執念に初めて戦神は恐怖を感じた。

それは、ほかの神々も同様であろう。


「くそ、どけ!魔神風情がぁ!」


「行かせはしない、ヴォーヴン!」


太陽神を相手に、銀髪の魔神は叫ぶ。強烈な光を放つ魔神の魔力に、流石のヴォーヴンもそれに気圧される。

アンセルムスを邪魔する最大の敵。それは彼の一番の親友であったこの魔神であろう。

だからこそ、彼だけはルクソールが止めなければならない。

アンセルムスだけが、彼女を認めてくれた。

この髪を、美しいと言ってくれた。

理由など、それだけで十分だ。

戦いにのみ生きてきた自分。そんな自分を必要としてくれる。

ならば、彼のために戦おう。

たとえ、何度転生しようとも、何度でも彼のもとにたどり着くであろう。


「くそ、貴様・・・・・・・・・・!貴様に、奴の何がわかるというのだ」


「ヴォーヴン、あなたこそ、何を知っている?アンセルムス様の一番の親友である貴様は、アンセルムス様から何を聞いた!?」


「裏切り者から聞く言葉など、ない!」


「そうやって、あなたはあなたとあの方を裏切ったのだ!ほかの神々も同様、あの方だけが、この世界を真に憂い、変えようとしていることになぜ気づかない!」


魔神の攻撃。銀色の魔力の刃が四方より遅い来る。それを剣で捌きながら、後退するヴォーヴン。

魔神ルクソールとは何度か戦ったことはあるが、ここまで強い相手ではなかった。確かに強いはずだが、ここまで一方的に押されるような敵ではないはずだった。

決死の表情で神に抗う魔神。命も魔力も惜しまず、攻め続ける魔神にヴォーヴンは防戦一方であった。




アンセルムスが天上への階段に至った時。

彼を近くで守る者はもはやファーレンハイトのみとなっていた。

迫りくる敵を倒しながら、ファーレンハイトは言う。


「行ってください、アンセルムス様」


一人、数百の敵と対峙するファーレンハイトは黒装束で隠れた顔を一瞬だけアンセルムスに向ける。


「・・・・・・・・・・・・・・」


唇をかみしめ、背を向けるアンセルムス。そして、その足は天に向かって一歩、また一歩と踏み出される。


「・・・・・・・・・・・ありがとう、ファーレンハイト、いや、我が友クオヴァ-ゼ」


「友などと、勿体なきお言葉です・・・・・・私こそ、あなたにお仕えできて光栄です」


そして、走り出すアンセルムス。それを見届けたファーレンハイトは、ポツリと呟く。


「あなたに、光あれ」


そして、主君を追わんとする敵の群れを見て、彼は言う。


「ここから先は通さぬ。アンセルムス様の邪魔はさせぬ」




天上の宮殿を走り、あの門に向かうアンセルムス。

その頭に過ぎる、仲間たちの顔。


(ルクソール、ファーレンハイト)


多くのものが、今も死を覚悟して戦っている。

全ては、自分のため、世界の未来のために。


立ち止まる暇はない。

身体はボロボロで、走ることすら辛い。それでも無理やりに身体を動かし、彼は奔る。


そして。

彼は再び、あの歪な空間に足を踏み入れた。


「よもや、ここまで来ようとはな、アンセルムスよ」


息をつきながら、アンセルムスは『神』を見る。


「すべては、お前を倒し、この手に明日を取り戻すため・・・・・・・・・・・・・」


まっすぐなその視線は、影を貫いた。


「なるほど、我を倒すため、自身の血肉をその剣に込めたか。恐るべき執念」


「いつまで余裕ぶっている、偽りの神よ」


憤怒の形相のアンセルムスは剣を構え、『神』を見る。


「フフ、フフフフフ・・・・・・・・・・・・!アンセルムスよ、お前に私は倒せない。所詮、力なき器。我にかなうはずもない」


「やってみなければ、わからないさ」


「その機会すら、貴様にはないのだ、と言うことをわかっていないようだな」


「なに?」


その瞬間、どすり、と何かがアンセルムスの胸を貫く。

アンセルムスは呆然と胸を飛び出してきたそれを見る。光り輝く剣は、見覚えがある。

彼は、首を動かし、その人物を見る。


「ヴォー、ヴン」


「アンセルムス」


太陽の神、ヴォーヴンの後ろには、ほかの11の神々が立っている。

彼らがいる、ということは。


「・・・・・・・・・・・・・・が、は」


倒れるアンセルムス。

剣は遠くに転がり、手を伸ばしても届かない。


「・・・・・・・・・・・ルクソールは、ファーレンハイトは・・・・・・・・・・・」


「お前に従う者たちは、全員死んだ」


無慈悲にクオンタが告げる。

アンセルムスは、目を見開き血を吹き出す。

逝ってしまったのか、ルクソール、ファーレンハイト。


「・・・・・・・・・・・・そうか、俺は、負けたのか」


アンセルムスはそう言い、静かに血に倒れる。マキノが走り出し、アンセルムスの身体を打受け止める。だが、アンセルムスはその手を拒絶する。


「アンセルムス・・・・・・・・・・?」


「フフフ・・・・・・・・・・・だが、ただで死んでなるものか」


アンセルムスはそう言い、12人の神々を見る。自身の頭に左手を突き刺すアンセルムス。


「アンセルムス!?」


「我が記憶を、見せてやろう!わが命を持って、お前たちに真実を見せよう!そして、悔やむがいい、自分たちに愚かさを、我が死を!!」


そして、『神』を見る。


「たとえ、私がここで死のうと、いつか必ず貴様を殺すために、私は戻ってくる!覚悟しておけ、偽りの神よ!」


「ならば、貴様のその魂に、決して消えることのない罪と罰を与えよう、アンセルムス」


影は言う。


「お前が憂い、愛した世界を壊す呪いを、お前を愛する者が死ぬ呪いを・・・・・・・・・・・お前に絶対の苦痛と絶望を」


そして足掻くがいい。この神に逆らったことを何度も何度も後悔し、己が所業に絶望し、その輪廻から逃れられぬという苦しみの中で、永遠に。


アンセルムスは不敵に笑い、自身の頭に手を突き立て、自身の脳を破壊する。

その瞬間、彼の魔力が迸り、神々に自身の記憶を伝えたのだった。




全ての記憶を取り戻した神々は、アンセルムスの想いを知った。

裏切り者は、彼ではなかったのだ、と神々は知った。

ヴォーヴンは親友の言葉を信じ切れなかった自信を呪い、マキノも恋人を信じれなかった自分を嘆いた。

ほかの神々も、皆悲しみに沈んでいた。

そんな神々を見て、父なる神は言う。


「こうなっては仕方ない。お前たちも、もう用はない」


世界に神は我だけでよい、そう言い、影は手を翳す。


「なにを・・・・・・・・・・・」


「貴様らにも、永遠の輪廻の鎖を与えよう。そして、この世界で苦しむがいい」


「き、貴様ァ!」


怒り狂ったクオンタが跳びかかる。銀色の槍を構え突進したクオンタは、だが一瞬後には身体を吹き飛ばされる。


「クオンタぁ!!」


レアが叫ぶ。

『神』は嗤う。


「愚かなる神々よ、去れ」



そして光が満ちて、やがて。


巨大な玉座に座る影だけが、そこにいた。






それから、13人の魂は永い永い輪廻と、繰り返される世界で何度も悲劇を繰り返した。

幾度もの戦い。世界の滅亡。そのたびに後悔と絶望を抱き。

この世界を歪めた『神』にその魂をもてあそばれ続けた。

その中でも、特にアンセルムスは数え切れぬ罪を押し付けられた。

その魂は、あまりにも多くの罪を背負いすぎた。

誰に認められることなく、孤高な生を貫き、そして最後に思い出す。

そして、そのたびに親友の魂を持つ者による最期を選び続けた。

魂の叫びは絶えることなく、また次の輪廻を繰り返す。

何度も何度も、何度でも。



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