5-ログアウト不可
俺は今、非常に機嫌がいい。なぜか。
「ピキー⁉︎」
「ハッハッハッ!もういっちょ!」
この落とし穴(小)と鋼糸が思いの外相性が良かったのだ。穴の中に鋼糸を渡しておいて、モンスターが引っかかったら振り上げる。たったこれだけで問題なくモンスターが狩れる。
「ピイキュィ……」
「よし、剥ぎ取り剥ぎ取り」
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バニラビットの皮 ランク1
説明 バニラビットの皮。仄かにバニラの香りがする。
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このバニラビットは30センチぐらいの白いウサギで、前歯が長い。で、こいつは前歯で攻撃するためか突進してくるんだが、うまい具合に落とし穴に誘導すれば、勝手にかかってくれる。
ちなみに他のモンスターは、狐と狼の合いの子みたいなウルフォックスや、緑のゼリーみたいなスライムとかだ。
そうそう、鋼糸のダメージって想像よりも高かったな。どのモンスターもほぼ一撃で倒せたし。
「ってそろそろMPがなくなりそうだな」
いい感じにスキルレベルも上がっているし、街に戻りましょうかね。
街に戻ってみると、何やら騒ついている。それも、よくない方向の騒つき方だな。あちこちで話し声が聞こえるので少し盗み聞きしてみると……
「おいマジかよ」「ログアウトがねぇぞ」「これってアレじゃね?」「デスゲーム?」「冗談だろ?」
「小説の中だけだと思ってた」
「っては⁉︎」
急いでメニューを開くと、確かにログアウトが消えている。
「なん……だと……?」
そして群衆の感情が困惑から恐怖に変わり始めたとき、それは現れた。
それは、始まりの街の中央上空で、始めは立方体の箱だったものが、変形し、変色し、人に近い姿になっていく。そして現れたのは、透き通るような金髪の美女だった。
『全AEOプレイヤーの皆様に通達します』
開かれた口から出る言葉には、およそ感情というものが感じられない。そこから、恐らくはキャラメイク時のAIに近い存在だと俺は予想する。
『私は《IDEA》』
その抑揚のない声で、言葉を紡ぐ。
『現時刻を持って、全プレイヤーのログアウトシステムをロックしました』