3-俺の容姿
さて、あいつとの待ち合わせ場所は中央広場だったな。早いとこ行かないと怒るだろう。
「しっかし、こんなに人がいるなんてな」
目の前には人、人、人、とにかく大量の人が慌ただしく行き交っている。
「まあサービス開始直後だからこんなもんか」
人の波に流されそうになるのを堪えて中央広場につくと、案の定妹が先に待っていた。剣と盾を装備してるから剣士だな。
「よう、遅れてごめん」
「ううん、全然大丈夫だ……よ……?」
「どうした、信濃」
「ちょっと待って。にーさん、だよね?」
「…………は?」
「いやだってさ、女の子だよ?見た目。現実でも女の子っぽかったけど」
「そんな馬鹿な!」
急いでローブの前を開け、確かめると、確かに、ささやかな双丘……が……
「ええ!なんで⁉︎女の子なんで⁉︎」
「うん。あれだよ。バグだよ、ミスだよ」
「マジか……」
精神にダメージを受け、近くの噴水に手をつける。そのまま水面を覗き込めば長髪のオッドアイの美少女が……って俺か。畜生。あれか。キャラクターメイキングのときに体形を確認すればよかったのか。スルーするんじゃなかった……グスン。
「そそ、そんなに落ち込まないで!あ、そうだ!にーさんはなんのスキルとったの?格好から魔法使いみたいだけど?」
「こんなんだけど……」
俺のスキル構成を見せると、途端にシノの表情が険しくなる。
「なんだ?どの辺りがおかしいんだ?」
「おかしいというか、えーっとね」
シノの言うところによると、どうやら【鋼糸】が問題らしい。
β版の体験者の話だが、とにかく扱いが難しく、まともに使える人はほとんどいなかったとか。しかも、他の『装備』には食べさせられない『素材』はなかったが、『鋼糸』だけは『素材』は鉱物しか食べさせられないとか。とにかく、『AEO』内で一番の不遇武器だとか。
「キョウ、もしかしてまとめとか見てない?」
「見てると思うか?」
思う奴は多分目が腐っている。
「やっぱり……。【鋼糸】はこのゲームで1番の不遇武器なんだよ?」
「…………不遇武器がなんだ。女体化がなんだ。全部俺が選んだんだ」
なら、例え不遇武器でも関係ない。ゲームなら、できないことはない。
「……にーさんって、たまに男らしいこというよね。見た目は男らしくないけど。ってか女の子だけど」
「言うな。気にしてんだから」