11-黒狐その1
昨日の騒動は、男性プレイヤーが諦める事で決着がついたようで、俺が街を歩いても追いかけ回されることはなかった。
で、今日俺は昨日できなかったことをする。それは何か。
ボス討伐である。
「ここか」
俺の目の前には2メートルは優に超える石柱が二つ並び、間には虹色の膜ーーボスゲートがゆらめいている。
ボスゲートの先には、挑むパーティごとにボスエリアが構築され、そこで戦うことになる。ボスを倒せばボスエリアも消え、次のエリアに行けるようになる。ちなみにこれは全部シノの受け売りである。
「装備よし、道具よし、罠よし」
俺は最後の確認を済ませ、ボスゲートに足を踏み入れた。
ボスゲートを潜れば、ボスゲートのものよりも巨大な石柱がまばらに円状に配置された草原に出た。あれだな。ストーンヘンジみたいだな。
とここで、体の自由がきかなくなり、勝手にストーンヘンジの中に進んでいく。どうやらイベントが始まったみたいだ。
ストーンヘンジの中に入ると、こちらを見る視線に気づく。そちらを見れば、石柱の上に優雅に佇む黒い影があった。その姿は狐。最早見慣れた、狼にも似た姿を黒く塗り巨大化させた狐だった。
黒い狐は目を細めると、石柱から飛び降りて音も立てずに着地した。と同時に俺の体も自由る……だが動けない。
俺を睥睨する紅い目は強烈な敵意を向け、しなやかな体躯は王者の風格を漂わす。
冗談じゃない。これは、ソロが、遊びで戦っていいものじゃない。逃げろと本能が叫ぶが、それを理性で抑える。
「コオオォォォオン‼︎」
戦いは、黒い狐の咆哮で始まった。
まず3つ縦に落とし穴を仕掛け、ワイヤーを構えて射出できるようにする。黒狐の方を見れば、四肢に力を貯めているようだ……来る!
「コォォン!」
「来い!」
黒狐は貯めた力を解放して一気に距離を詰めてくる。が、その足下には落とし穴があり、踏み抜いた黒狐はよろめき、転倒ーー
「ッ⁉︎」
「コンコン!」
しなかった。そのまま二つ目、三つ目の落とし穴を気にした様子もなく突破し、そのナイフのような爪で俺は肩口から袈裟に裂かれ、そのまま吹き飛ばされる。
「クッソ、一撃で8割かよ……」
いや、運が良かったかもしれない。そもそも俺の防具はローブであり、鎧に比べると防御力では天と地ほどの差があるのだ。
「だが、やれるところまでやるぞ」
黒狐はまた四肢に力を貯めているようだ。さっきのを食らえば今度こそ死に戻りは免れないだろう。だからこそ、全力で、挑む。
「クォォオン!」
「うぉぉおおお!」
さっきと同じ、全身のバネを使い、黒狐は距離を詰め、攻撃してくる。
俺は横に飛び、前脚に向けてワイヤーを射出。絡ませることに成功する。
「コン⁉︎」
流石にこれは効くのか、転倒させた。そのまま収納すれば、絡まったワイヤーが前脚に少なくないダメージを与える。このまま攻めようとした時、黒狐の紅い目が、ニヤリと笑ったように見えた。
そして、黒狐は体を回転させながら立ち上がり、俺は振るわれた尻尾で残りのHPを削られ、街の神殿に死に戻りをした。
「強すぎんだろ……」
俺は横になると、戦闘の緊張が解けたからか、睡魔に任せて眠った。
ボスモンスターはパーティでの攻略を基準にして設定されています。




