出席番号22番 野島恒之
岡田瑞穂。
俺の隣の席の女子。そして、俺の好きな女子でもある。
でも、彼女の視線の先にはいつも高峰和樹がいる事を俺は知っている。
大人しくて少し天然な彼女を好きになったのは半年前。去年も同じクラスで、隣の席だった時に初めて話した時がきっかけだと思う。
俺が岡田が落とした消しゴムをひろって、渡した時、岡田は、優しい笑顔みせて言った。
『野島君って、怖そうな人だと思っていたんだけど本当は優しいんだね。ありがとう。』
女子の笑顔は、裏にいつも何か見え隠れしていてあまり好きではないのだが、あの時の岡田の笑顔は何も混じりっ気のない純粋な笑顔だった。
でも、岡田が俺にだけ笑顔を見せたのはあの時だけ。
元々あまり男子と話さない性格のようで、ほとんど喋ることもなかった。
「授業だりぃー。早く終わんねぇかな。」
後ろの席の長岡がそうぼやきながら、俺の背中をボールペンでつつく。
「やめろよ。それ、地味に痛いんだぞ。」
そう言って軽く振り払うのと、岡田のペンケースが地面に落ちるのはほぼ同時だったと思う。
恐らく、岡田の肘が当たったのだろう。
開けっ放しのペンケースの中からバラバラと音を立ててペンが辺りに散らばった。
一瞬、皆が一斉に岡田を見た。
岡田は顔を赤くして、すみませんと小さい声で言い、椅子から立ち上がる。
俺も拾おうと思って椅子を引いた瞬間に長岡が後ろで騒いだ。
「おっ、和樹君ー、優男だねぇー。」
俺が行くより先に高峰がもうすでに岡田のペンケースの中身を拾っていたのだ。
俺も拾ってやろうと思ったのに、何故か体が椅子に貼り付けられたように動かなかった。
ようやくペンケースの中身を拾い終わって岡田は言った。
「ありがとう。」
すごく小さい声でしかも、周りは高峰を冷やかしたりしてる声で溢れていたが、俺にははっきりその声が聞こえた。
それに、あの時と同じ純粋な笑顔だった。
俺が高峰より先にペンケースの中身を拾っていたら、岡田はあの笑顔を俺にくれただろうか。
どうしてあの時、俺は動くことができなかったのだろうか。
分かる事は、岡田は俺なんか見ていないってこと。
岡田の心に俺の立ち入る隙は無いこと。
今もまた、岡田の視線の先は高峰。
読んでいただきありがとうございました。
本当は切ない系にしたかったんです…。これ。
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ここまでありがとうございました!