出席番号8番 岡田瑞穂
窓際前から3番目。私の席は特等席。
斜め前が私の好きな人、高峰君だから。
私は好きな人の隣の席より、斜め後ろの席がいい。
後ろ姿を見つめることが出来るから。
好きになった時なんてもうおぼえていないけれど、普段とは変わって真面目に授業を受ける横顔とか、野球部だからいつも坊主頭とか、色々見ていくうちに好きになっていた。
でも、この気持ちは誰にも言えないと思う。
告白なんて私みたいな大人しい人には大抵無理。噂になったりするのも怖い。
それに私は小学生の時に学んだ。
恋する心は表に出したら大概傷付く。
だから私は、後ろ姿を見つめる。好きを温めて大きくする。
もし好きを温め続けて大きくなりすぎてしまったら、言ってしまうかもしれない。
「お・・・だ・・・お・・・か・・・岡田!!」
目の前に高峰君。教室はさっきとは違いざわざわしている。
「あ、気がついた!!岡田寝てたからプリント預かってたよ。はい。」
プリントを受け取る。
「ありがとう。」
いつもなら普通のプリントなのに、今日のは特別。高峰君から渡されたから。プリントに触れている手が熱い。
プリントを見つめている私を見て高峰君は
「岡田っておもしれー奴!」
といってプッと吹き出した。
その仕草が可愛くて、言ってはいけないことを言いそうになる。
「あの、高峰君っ・・・!」
「何?」
そう言ってまっすぐ私を見る高峰君をみると我に返った。
言ってはいけない。
「なんでも無い。ごめんね。」
「そっか。あまり授業中寝るなよー」
そう言って男子の輪の中へ入っていった。
私はそれを見つめながら思う。
好き。
でも、言えない。絶対。
だから私は見つめる。
明日も、明後日も・・・