表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖刀使いの異戒道~魔力がないと追放されたが、妖刀(美少女)を拾い死ぬほど鍛えられる。  作者: umino


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第7幕

バイクのエンジンが止まり、夜の風だけが吹き抜けていた。


鹿島は岩に腰を下ろし、ヘルメットを足元へ転がす。僕は距離を取りつつ立ったまま。


刀は、鞘に納めていない。



「……で、」



僕が先に口を開く。



「なんで、あの村にいたんですか?」



鹿島は少しだけ黙った。


空を見上げる。


星はやけに明るい。



「……昔、あそこに住んでたものでな。」



低い声だった。



「地図にも残らねぇド田舎だ。ガキの頃は、それなりに賑やかでな」



迅斗は黙って聞く。



「幼馴染がいた。ずっと一緒だったんだ。すげぇ美人でよぉ……」



鹿島は口の端を歪めた。



「俺はあいつと一緒になりてぇって頑張ったものよ。大人になって、二人で別の街に出た。働いて……結婚した。」



指先が、ぎゅっと握られる。



「……子どもも出来たんだ。」



その一言に、空気が沈む。



「幸せの絶頂だったよ。」



しばらくしてから、鹿島は続けた。



「……だから、妻だけ先に実家に帰した。身体を休めさせるためにな」



声が低くなる。



「俺も後から戻った。……そしたらな、」



目が伏せられる。



「人がいなかったんだ。」



それだけで、想像できた。



「村は空っぽで、家は壊れて……生きてる気配がなかった。」



鹿島は息を吐いた。



「……別の村にでも来たのかと思ったよ。」



僕は喉が鳴るのを感じた。



「……で、」



鹿島の目が上がる。



「妻は――“誰か”の妻になってた。」

「……誰か?」

「魔獣だ。」



即答。



「人の形をしてて……言葉を話す。理性もあった。」



風が吹く。



「俺は連れ出した。必死だったよ。」



鹿島は拳を握りしめた。



「だが……追いつかれた。」



唇が、震える。



「……あいつはな、俺なんかを庇ったのさ。」



その一言で、僕の奥歯が噛み合う。


鹿島は淡々と続けた。


だが、それが余計に重い。



「……その日からだ。俺はあいつを殺すって決めたのは。」



夜の闇に、低い声が落ちた。



「俺はあれから復讐の鬼になったのさ。」



沈黙。


迅斗は、刀の柄を握る。


胸の奥が、熱い。



『……』



阿紫花は、珍しく言葉を挟まなかった。



「……あいつは、」



鹿島が続ける。



「人を、魔獣に変えられる。」



僕は目を細める。



「……どういう?」

「人型は、元村人だ。」



淡々と。



「犬型は飼い犬。……赤子型は――」



鹿島は、そこで言葉を切った。


迅斗は察した。


背中を、冷たいものが走る。



『……外道ですね』



阿紫花の声に、怒りが滲む。



「……ふざけんな」



僕の声は低かった。


歯を食いしばる。



「人の人生、なんだと思ってんだ。」



鹿島は初めて、迅斗を正面から見た。



「……お前も、そう思うか。」

「はい。」



 即答だった。



「そんなもん……許されるわけねぇだろ。」



 刀が、わずかに鳴る。



『人の尊厳を踏みにじる存在は――存在してはならない。』



僕は一瞬だけ目を閉じ、開いた。


鹿島を見る。



「……俺も行きます。」



鹿島の目が、わずかに見開かれた。



「やめとけ……ガキ。」

「年は関係ないです。」



迅斗は言い切った。



「あの村を取り戻す。」



鹿島は、数秒黙ったあと。


ふっと、小さく息を吐いた。



「……命は簡単に賭けるもんじゃねえよ。」

「分かってます。」



迅斗は刀を握り直す。



「でも――」



視線を上げる。



「黙って逃げる方が、よっぽど後悔する。」



鹿島は、しばらく迅斗を見つめ。



「……変な奴だな。」



そう言って、立ち上がった。



「……いいでしょ。」



闇の向こう、廃村の灯りを見る。



「――行くぞ。」



赤の刃が、かすかに光った。


『全面的に賛成します。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ