第6幕 謎の男
赤色の閃光が、廃村を裂いた。
神代迅斗は踏み込みながら、横一線に刃を振る。
赤子型の魔獣が三体、同時に弾けるように霧散した。
『左の屋根!』
跳躍。
四足獣が屋根から降り注ぐ。
迅斗は地面を蹴って転がり、背後から迫った個体を叩き斬る。
だが――
次から次へと湧いてくる。
「……キリがねぇ!」
『数がおかしいです……』
阿紫花の声にも、わずかな焦り。
赤子型が舗装を埋め尽くし、
犬型が側面を抉り、
人型が瓦礫の隙間から跳びかかる。
迅斗は切る。
切る。
切る。
だが、息が上がる。
足元に絡みつく腕。
「――っ!」
赤子型。
足首を掴まれた。
バランスが崩れる。
次の瞬間、別の影が跳んだ。
『迅斗!』
歯列が迫る。
――終わった。
そう思った、その時。
――爆音。
エンジン音が空気を裂いた。
ヘッドライトが闇を貫き、瓦礫を跳ね飛ばしながら一台のバイクが突っ込んでくる。
轢かれる魔獣。
跳ね飛ぶ肉塊。
同時に、白い煙がばら撒かれた。
『……煙幕!?』
阿紫花が息を呑む。
魔獣たちが一斉に悲鳴を上げ、距離を取る。
赤子型が転げ回り、地面を掻きむしる。
「……助かった……?」
バイクの男がヘルメット越しに叫んだ。
「乗れ!」
それだけ。説明はない。
だが、迷っている暇はなかった。
迅斗は地面を蹴り、後部座席に飛び乗る。
エンジンが唸る。
急発進。廃村を抜け、夜の荒野へ。
魔獣の影が遠ざかっていく。
十分後。
崩れた倉庫跡の裏。男はバイクを止め、エンジンを切った。
静寂。荒い呼吸。
僕は柄から手を離さず、男を見る。
「ありがとうございます……」
男はヘルメットを外した。
短く刈り上げた髪。
無精ひげ。
疲れ切った目。だが――その奥に、殺気がある。
「……通りすがりの爺だ。」
「嘘ですね」
僕がが即断すると男は苦笑した。
「……まぁな」
視線が、刃に落ちる。
「妙な得物だ」
僕は答えない。代わりに聞いた。
「……さっきのガス、何ですか」
「魔獣の嫌う成分を混ぜた煙幕だ。長くは効かない」
淡々と。
「……あの街は巣だ。」
迅斗と阿紫花の声が重なる。
「知ってます。」
男は、低く言った。
「俺は――あそこで魔獣を狩ってる。」
風が吹く。男のコートの隙間から、
不気味な魔紋が、胸元に走っているのが見えた。
迅斗は、嫌な予感を覚えた。




