第七話 やっぱり祝勝会はスイーツビュッフェに限る!
(れ)前回のあらすじ!いよいよ疑似世界を出る為に試行錯誤し始めたぜ!
(ふ)うーん……まぁあってるのかなぁ……
(れ)うん!あってるあってる!それじゃあ第七話、いってみよー!
(ふ)おー!
(れ)あれ?今日なんかテンション高いね
(ふ)えっ?そんな事ないよ?そんな事より早くスイーツビュッフェ行こ!
(れ)あっ(察し)りょうかーい……
文華ちゃんが(無理矢理)協力してくれる事となり、そして俺達は色々準備した。
後はアイツを倒してこの疑似世界から出るだけだな!
俺は一時的に別行動をしていた文華ちゃんと合流して最終確認に移った。
「やっぱり麗姫くんの考えてる通りだったよ」
「おっ、そう?ならこの作戦の成功率が上がってきたね。いやはや〜一時はどうなるかと思ったよ。まさかいきなりアイツが二体になるなんてビックリ!……まぁでもそのおかげでもっと成功率が上がったんだけどね」
「……ホントにやるの?」
「当たり前でしょ?こればっかりは仕方ないよ。だって疑似世界から出るのに一番手っ取り早いんだから」
「うぅ……でもぉ…」
「心配しなさんな!俺は大丈夫……絶対にね」
俺は文華ちゃんを安心させる為に頭を撫でながらそう言った。
……男の時はずっと俺より小さくて泣き虫だから守っていこうと思ってたけど、こうやっておんなじ目線に立つと頼もしいなぁ……
まぁそれもそっか、文華ちゃんの方が先に怪人になってるんだもんね。
そりゃ頼もしくも感じるか……その分危険にも遭ってるんだよね……だぁ~もう!この考え禁止!
今はこの疑似世界から出る事に集中しないと……!
「……分かった」
「元の世界に戻ったら祝勝会でもしよっか!だから何処に行くか考えといてね♪」
「うん……!」
はぁ~…ふぅ〜……良し…!そろそろやるか……
「んじゃ、文華ちゃんにこれまさ渡しておくよ」
「?これって……眼鏡?」
「フッフッフ、ただの眼鏡じゃ御座いません。これは通信機にもなってるからこれを使って」
「うん、分かった」
文華ちゃんは眼鏡を受け取って慣れた手つきで掛けた。
俺は眼鏡の使い方を大雑把に教えて作戦実行の為に文華ちゃんと別れて廊下で立ち止まった。
しばらくしてアイツが目の前にある廊下の角から現れた。
アイツは俺を見た途端、息を荒くし走り出して俺に向かってきた。
……やっぱり怖え……けど大丈夫!
俺は気合いを入れ直すと脚を肩幅くらいまで開き、屈んで腰を左側に捻って右腕を刀の居合の様な形で構えた。
そして制限されている能力を右腕に集中させてあの化け物とのタイミングを見計らった。
コイツは倒せないだけであって攻撃を無効化するわけじゃない。
だから俺はコイツに一発お見舞いする事を決めた。
まぁこれは本来作戦には要らないんだけど……やっぱりコイツに殺されかけた事は仕返ししないとな!
『フーッ、フーッ、フーッ……ガァァ!』
「……来いよ。ぶった斬ってやる……!」
俺は異形との距離が互いの間合いになったのを確認して異形が棍棒を振り上げて振り下ろす瞬間に俺は右腕を思いっきり左下から右上へと振った。
すると異形の胴体に同じ軌道の一筋の線が出来ていた。
そしてそこから異形の血らしき物が流れ始めて異形は棍棒を落として痛さに悶え苦しんでいた。
「良し!復讐終わり!じゃあなバーカバーカ!」
俺は急いで異形に背を向けて全速力で廊下を爆走した。
さっきまで悶えていた事が嘘のように異形は俺に向かって走ってきた。
なんか……心なしかアイツ怒ってる?さっきよりよりおっかない顔になったてだけど……
『ガァァァァァァッ!!』
「やっば、激怒じゃん!ちょっと胴体に切れ込み入れただけじゃん!そんな怒んなよ!アホ!バカ!うおおおおっ!捕まってたまるかぁー!」
俺はアイツが俺を見失わない様に逃げるながらもう1体も拾ってある部屋に飛び込んだ。
そしてアイツらも俺を追って部屋に入ってきた。
……勝った!俺は眼鏡の右可動部らへんを触って文華ちゃんに合図をした。
「文華ちゃん!」
『分かった!解除!』
この疑似世界をゲームで例えるなら終わりのない逃げゲーだ。
そして特定の部屋は安地としての役割をしている。
俺達はその条件を探す為に何度もアイツらにわざと見つかっては部屋に隠れてを繰り返してようやく見つけた。
アイツらは出入り口が2つあるのを確認すると追うのを止めて廊下を徘徊した。
さっきも言ったがこの疑似世界は逃げゲーだ。だが、現実の様にアイツらを攻撃したりする事が出来る。
つまり文華ちゃんの様に幻覚を見せる事の出来る能力を持った奴がアイツらに能力を使えばアイツらは幻覚を見る。
まぁ、そんな事なんて関係ない。俺が作りたかったのは今の状況だ。
この《《出入り口が2つある教室にアイツらがいる》》この状況を作りたかったんだ!
「クリア不可能のゲームをクリアする方法なんて一つしか無いだろ?そう、皆さんお馴染みのバグだ!しかもただのバグじゃない。お前らみたいな重要な敵キャラが犯しちゃいけないバグだ。こんな重大なバグ、運営が許すわけ無い。まぁサイレント修正されたら打つ手無しだけど……そうじゃ無いみたいだな」
俺はそう言いながら異形達や周りを軽く見回した。
すると周りは暗闇に呑まれて行っていた。
バグを発生させてこの世界から脱出する、これが俺達の作戦。
最後の方は運要素が強かったけど良かった、メンテの為に俺達プレイヤーを追い出してくれて。
周りはどんどん黒くなっている所に文華ちゃんが何故か俺に突撃してきた。
「れ、麗姫くん!」
「うぉ!ど、どうしたの?」
「どうって周りが……!」
「ん?あぁ、多分大丈夫だと思うよ」
「えっ?どうして?」
「うーん、まぁこれは一種のログアウトだと思って良いんじゃないかな。つまり、俺達はこの世界から出られるってわけ」
「で、でも!まだ分かんないよ!もしかしたらこの能力を使った人が私達ごとこの世界を消しちゃってたら……」
………あっ
「………あっ……や、やべ!?ど、どうしよう文華ちゃん!」
そうじゃん!もしこの疑似世界が消されたら俺達も消える可能性あるじゃん!
なんでその可能性思いつかなかったんだよ!あぁーどうしよう!てか文華ちゃん巻き込んじゃったじゃん!!はぁ~…どうして俺はいつもこうなんだ。
なんで毎回失敗するんだろ……やっぱり、俺なんかいなかった方が……
「麗姫くん!」
「うぇ!?ど、どうしたの文華ちゃん?」
「自分を信じて!私も麗姫くんを信じるから、ね?」
……また文華ちゃんに元気貰っちゃったよ。
はぁ~…良し!気合い入れ直した!
「ありがとう文華ちゃん。もう落ち込んだの治ったから」
「そっか。……でももし、消えちゃうんだったなら私、最後が麗姫くんとで良かった」
「それは俺もだよ。けど、消えるなんて万に一つも無いよ!」
なんて話していたら遂に暗闇が俺達俺達を呑み込もうと迫ってきた。
俺と文華ちゃんはお互いに抱き締め合いながら目を瞑ってその時を待った。
暫く目を瞑っていると鼻から酒の匂いがして目を開けるとそこには見慣れた家庭科室の光景があった。
俺は文華ちゃんの方を向いたら丁度文華ちゃんも周りを見回してここが家庭科室だと分かった様子だった。
そして文華ちゃんと目が合った時にお互いの無事に出られた事に安堵して無言で抱き締め合った。
暫く抱き締め合っているとふと我に返って俺は離れようとしたけど文華ちゃんが全然離してくれない。
「あの、文華ちゃん?」
「……ん?どうしたの?」
「えっと一旦離してくれないかな?まだ根本的な解決してないしさ」
「あっ、うん、分かった」
ありゃ?案外簡単に離してくれた……いや別に寂しいとか全然無いから!?
なんて心の中で荒れながら酒の匂いのした方を見るとそこにはカメレオン型の怪獣がいた。
……なんか可愛いなコイツ……ってコイツのせいで文華ちゃんが危険な目に遭ったんだった!良し!今すぐ殺ろう
俺はすぐに能力を使って怪獣を押し潰して終わらせた。
すると扉が開く音がしたのでそっちの方を見ると知らんおっさんがいた。
俺はすぐに近づいてソイツを適当にぶん殴って気絶させて文華ちゃんに近づいた。
「文華ちゃ〜ん終わったよぉー」
「そっか、じゃあ帰ろっか。あっ麗姫くんの事は誰にも言わないから安心して」
「それは助かるけど……どしたの?いきなり」
「……ごめんね。今色々と混乱してるの」
「混乱?」
「うん、だってそうでしょ?麗姫くんに再会したと思ったらいきなり閉じ込められて色々ありすぎだよ。でももしこれが私が見てる都合の良い夢だったら起きたくないなぁって思ったりしちゃって……」
「……うーむ、じゃあそのまま起きずに夢の続きを見よっか」
「えっ?」
「俺今さ悪の組織に入ってるんだよね。まぁ細かい説明は諸々明日やるとしてどう?文華ちゃん、悪の組織に入っみない?」
俺のいきなりの提案で目をパチクリする文華ちゃんを余所に俺は話し続けた。
「そしたらこんな感じのが続くと思うし、もしかしたら一輝達と戦うかも知れないけど……どう?」
「…………フフッ、そうだね。いいかも知れないね」
「!ホント!やったぁー!」
「もうっ、喜び過ぎだよ。ありがとう麗姫くん、夢の続きを見せてくれて」
「へへっ、どういたしまして。ふぅ~…こっちだとあんまり時間経って無いんだね。けどお腹空いたぁ」
「そうだね……じゃあ祝勝会やろっか!」
「おっ、いいねぇ。じゃあ久し振りスイーツビュッフェでも行く?」
「!うん!行こっ!今すぐ!」
文華ちゃん、甘い物大好きだからなぁ……財布、空にならないかな。
「ああっと、ちょっと待って、コイツなんとかするから」
俺は急かす文華ちゃんを宥めておっさんを家庭科室にたまたまあった縄で適当に固く縛って放置した。
俺の作業が終わったのを確認した文華ちゃんは俺の手を引っ張って行くのだった。
▼△▼△▼△▼
とあるビルの最上階の社長室の椅子に座る二十代前半の見た目の男がいた。
男はスマホ越しからの報告を聞き、ため息を一つついて電話を切った。
「やはり巫女の力は絶大だな……まさか疑似世界を突破され倒されるとわな」
男はそう言いながら背もたれに体重を乗せながらまた一つため息をついた。
「せっかくの我が社の商品を潰されたのは少々腹立たしいがそんな事よりも巫女の方に興味が出てきたな。あのエセ宗教団体には悪いが巫女は我が社が貰おう……!」
さらなる波乱が麗姫達を襲う事を今の本人達が知る由もなかった。
(れ)スイーツビュッフェ楽しかったねぇ
(ふ)うん!あんなに新作が並んでたなんて知らなかった!
(れ)そうだねぇ……前来たのは2年前だっけ?……ってそれより次回予告しなきゃ!
(ふ)あっ!そうだった!
(れ)ってわけで次回予告始まり始まりぃ〜
「ダメよ。その娘は入れられないわ」
(れ)まさかの入団拒否!?博士なんでぇ!
(ふ)麗姫くん大丈夫だよ。絶対入団するから!
「……アンタ達なにか隠してるわね」
(れ)うげっ!愛姫!?
(ふ)今度の障壁は愛ちゃんなんだね。でも麗姫くん秘密は守るよ!
(れ)次回!『改めて悪の組織ってダサいネーミングだなぁ……』お楽しみに!