怪人来たりて怪人となる
初めまして!こちらでは初投稿になります!ですので何卒よろしくお願いします!
オッスオラ重軽麗姫!こんなんでも正真正銘男の俺の名前だ。
どういう訳か俺は今……死にかけている!!というかもういつ死んでもおかしくないですっ!!助けて下さいっ!マジで!……なんて声荒げる事も出来ないくらい死にかけてま〜す。
だって左肩から下までと右膝から下が欠損して左脇腹が抉れて半円状に削れて左眼も潰れて右眼もあんまり見えてない。
というか意識が朦朧としててあんまり痛覚が機能してないから全然動けそうな感じがするんだけどなぁ〜…
まぁ、取り敢えずアイツに見つからない様に這いつくばりながら逃げるか……あっ
「……ミツ……ケタ……ゾ」
タコの様な触手を背中から八本生やしたガタイのいいそれは、まさしく人型の異形……この世界では怪獣と呼ばれる存在を取り込んだ人間……怪人と呼ばれている存在が目の前にいた。
いや、殆ど意識なんて無い様に見えたから怪獣とそんな変わらないか……
コイツが突然、このデパートに現れて破壊の限りを尽くし始めて今に至る。
そして、どういう訳か明確に俺を狙っている。
だから必死に逃げて逃げて逃げまくっていたがそれも無駄に終わるらしい。
「オマエ…ウマソウナニオイ…スル。ダカラ、クウ……!」
なに言ってるかよく分からないけど逃げた方が良さそうだな。
そう思い俺はヤツとは反対方向に向かって這いつくばりながら前進した。
ヤツは這いつくばりながら逃げる俺を見て何を思ったのかすぐには捕まえずにしばらく俺を見て、恐らく口であろう場所を三日月型に弧を描いてニヤニヤしていた。
……フッ……フハハッ……フハハハッ!そうやって嗤ってろ、このド低脳!
俺が生き残る道は一つしかない!それはアイツが持って来た怪獣の死骸だ。
『その死骸を俺が取り込んで俺が怪人になってアイツを倒す』それが俺が唯一生き残れる道だ。
だが、それには多大なる運要素が絡んでくる。
大まかに纏めると3つ、まず1つ目は俺が這いつくばって辿り着くまでに生きていられるか、2つ目に怪獣を取り込んだら死ぬほど痛い激痛が体中を駆け回るらしい…それを瀕死の俺が耐えられるか、そして3つ目は取り込んだとしてアイツみたいに自我を失わずに済むかだ。
こんなにも運が絡んだ賭けなぞ俺は人生でやった事もない、まさか人生初ギャンブルがこんなに命懸けとは思わなんだ。
そう俺が画策している事も知らずにアイツはニヤニヤと俺を見下していた。
マジでぶっ飛ばすから覚悟しとけよぉ……!このクソ怪人!
そんな感じで不屈の闘志を燃やしながら怪獣の亡骸に近づいてそして無理矢理口を動かしてその亡骸に齧り付いた。
そこで有り得ない程の激痛を感じながら俺の意識は途切れた。
▼△▼△▼△▼
タコ怪人は焦っていた、目の前で藻掻き苦しんでいた自分のエサがまさか自身の食いかけて不味いと思い捨てた怪獣の亡骸に齧り付いた事に。
殆ど理性が残っていないとは言え知識は頭の中に眠っている、それ故にエサがとった行為が最悪自身を殺しえる力をエサが手にする可能性があると理解した。
思い至ったタコ怪人の行動は実に即決だった。
背中に生えている八本の触手を気を失っていたエサに向かって鞭のように振るい、命中させた。
……が、本来来る筈の生物の潰れた感触は何時まで経っても来なかった。
そして次の瞬間、八本の触手は全て《《見えない力で無理矢理捩じ切られた》》様に切断された。
タコ怪人はすぐに触手を戻して再生させ、土煙の向こうをみた。そこには……
「いやはや間一髪だったな。……ん?あ…あー……何か、声高くなってね?」
土煙が晴れて現れたのはさっきまで這いつくばっていた弱者はいなく圧倒的な強者がいた。
ならば弱者は何処に行ったのか等とタコ怪人は思わない、何故なら目の前の強者から不味いと思い捨てた怪獣の匂いの中からあの弱者からした美味そうな匂いがするのだ。
タコ怪人はすぐに答えに辿り着いた。
(アノヤロウ!オレトオナジカイジンニナリヤガッタ!)
それも自分より遥かに強い存在となりしかも自分と違い人の姿を保っている。
怪人は人の姿に近ければ近い程強くなる。一部異形に変身して強くなる例外もいるがそれは後の話。
タコ怪人が思考に費やして動かない間に麗姫は自身の体の変化に驚いていた。
それもその筈、何故なら自身の体が《《男の体から女の体》》に変わっていたのだから。
しかも腰まで伸びたフワフワの白髪に血のような赤い瞳、そして雪の様な肌に整った顔、何処からどう見ても美少女である。
当然、麗姫自身もそんな自分の顔をまじまじと見ながら時偶自分の顔を触って本物か確かめたりした。
しかし、麗姫はある事に気がついた。
「……まさか、こんな事になるとは思わなんだ。……って、服ボロボロだったの忘れてた」
そう、今の麗姫はさっきまでと違い五体満足になっている。
つまり欠損していた場所の服は無く、中々の変態ファッションになっていた。
「うわぁ~マジかぁ。これ結構お気に入りだったんだけどなぁ……まぁいっか」
そう言いながら麗姫は服を脱ぎ捨てて素っ裸になった。
そして次の瞬間、白色の生地に袖や背中に彼岸花の装飾が描かれた袖の広い着物に二股に分かれた黒色の無地の袴を着て袴の下には黒色で太ももを覆うくらいの長さの組み上げ式のヒールブーツを履いていた。
これは怪衣と言って特別な怪人のみが創れる装衣だ。
それを見た麗姫は
(うわぁ~…これじゃ万年卒業式じゃん)
などと下らない事を考えていた。
麗姫が悠長に自分の今の姿を観察していたらタコ怪人が思考の海から帰って来てまたしても麗姫に向かって触手を鞭のように振った。
どうしてタコ怪人がこの様な思考に辿り着いたかと言うと至ってシンプルだ。
それは逃走の意思が食欲に負けたのだ。さっきまでと違って微かにしか漂わなくなった美味そうな匂いと自身の経験則から女の肉は柔らかくて美味い事を知っていた事、そして麗姫がまだ怪人なりたてだった事からタコ怪人は逃走ではなく戦闘を選んだ。
そして同時にタコ怪人の滅びも確定したのだった。
この世には相性と言う物がある。それは怪人にも言えることでタコ怪人も元の人間と元の怪獣は十分に相性がよかった。
だが、麗姫と融合した怪獣はタコ怪人のそれを10も100も上回る程に相性抜群だった。
それ故に……
「!?ナ、ナニガ……!?」
「……成る程、理解した!」
タコ怪人は全部の触手と四肢を根元から捩じ切られた。
麗姫の怪人としての能力、それは『重力操作』だ。
重力を操る、それはシンプルでありながら地球の…いや宇宙の摂理に触れる所業、それ故に相応の難しさが問われ少しでも間違いが起きれば自分含めた全てを滅ぼしかねない危険性があった。
だが、それを麗姫はいとも簡単に使いこなした。
それは麗姫と怪獣の天文学的過ぎる相性の良さにより本能で使い方を理解しそれを実行したのだ。
そして今の麗姫は全能感で一度死にかけた事も忘れてすこぶる気分が良くなっていた。
つまるところ麗姫は調子に乗った。
(よし!効果範囲をこのデパート全域にして全部吹っ飛ばすかっ!)
「オ、オマエ、クウ……!クウゥゥゥゥ!!!」
「あ?うるせえなぁ……まぁ、いいか。そんな事より」
麗姫は突進してきたタコ怪人を重力操作でタコ怪人の周りを重くして地面に叩き着けた。
そしてデパート全域に重力の結界を張り終えた麗姫はタコ怪人をフードコートのまで吹き飛ばし、自身も重力を操作して宙を浮き、タコ怪人を見下す様な形になった。
それを理解したタコ怪人は怒り狂い麗姫に向かって触手を突き刺そうと伸ばした。
……が、それは麗姫が起こした異変によって阻まれた。
その異変とはデパート全域の無重力状態となりデパートのあらゆる物が浮きタコ怪人もまた踏ん張りが効かず、宙に浮いてしまった。
そしてごく一部とはいえ宇宙の摂理を支配した麗姫は左手の掌を天にかざしてゆっくりとしかし力強く閉じ始めた。
すると麗姫の真上に疑似ブラックホールが生成されて重力の結界が少しずつ狭まり始めた。
結界に当たった所が粉々に砕け、疑似ブラックホールによって結界内にある麗姫以外の全てを飲み込み始めた。
タコ怪人は吸い込まれるのを免れる為に触手をありとあらゆる柱に巻き付けて必死に耐えていた。
そんなタコ怪人を知ってか知らずか麗姫は顔にそぐわないまるで悪役の様な高笑いをし始めた。
「フハッ……フハハッ……フハハハハハハッ!全て……全て滅びるといいっ!!!」
麗姫はそう宣言すると一気に左手を閉じた。
そして必死に耐えていたタコ怪人の抵抗も虚しく重力の結界が急激に狭まり、疑似ブラックホールと衝突して両方共消滅した。
麗姫はゆっくりと地面に降り立ち辺りを見回した。
周りはタコ怪人やデパートどころか地面が半球状に深く抉れていた。
麗姫はある程度見回し終わると腹の虫が鳴ったと同時に急激に眠くなり、怪衣も維持出来なくなり素っ裸になってしまった。
だが、今の麗姫にはそんな事を気にする事も出来ずにそのままうつ伏せに倒れてしまった。
(腹……減った……)
そう思いながら麗姫は気を失ったのだった。
気を失った麗姫の元に1つの影が挿した。
「ふむ……観察するならこちらの方が面白そうだな」
そう言って白衣を着た女が麗姫をお姫様抱っこして警察やその他諸々が来る前に何処かへと連れ去って行くのだった。
タコ怪人…元は生きたまま生物を解剖していたぶりながら殺す猟奇的快楽殺人鬼だった。がタコ型の怪獣を食べた事により怪人となる。が、タコ型怪獣に意識を乗っ取られてそのまま麗姫によって疑似ブラックホールに飲み込まれた。
麗姫が齧り付いた怪獣…色々と秘密がある怪獣。重力を操る能力を持っていて麗姫との相性が天文学的過ぎる程に抜群に良く結果ヤベー奴が生まれる原因になった1つ。