千字で絶対に倒せない魔王を本文千字で倒す勇者の話
変な文章に思われるかもしれませんが、ご一読いただけると嬉しいです。
本文は千字になります。
悲鳴にも聞こえるような虚しい咆哮が辺り一面に轟き渡り、終焉だと確信した。
覚悟を決めた俺は腹の底から人ならざる雄叫びにも聞こえる声を出しながら剣を振り下ろし、目の前にいる魔王に渾身の攻撃を当てると確かな手応えがあった。
どの魔物よりも圧倒的に強い魔王を俺は、肩で息をして剣を持つ手は震えていながらも、精一杯睨みつけている。
戦いの疲労は見せつつも、俺より少し有利にみえる巨大な魔王が、目の前に立ちはたがる。
「お前の力をもっと見せてみろ。それとも、もう限界か?」
「とっくにそれは超えている!」
震える足を思い切り両手で叩くと、魔王を見つめながら剣を構えた。
「諦めるがいい。勇者よ、お前は千字の命だ」
「千字になったら俺は死んでしまうのか」
先程から何度も受けている魔王の猛攻撃を食らった結果、言うことをきかないくらいに足元がおぼつかない俺を見て、魔王の口角が上がる。
魔王から滲み出る飲みこまれそうなほど辺りに張り詰められた威圧感に、迫りくる死への恐怖が身体を襲う。
これまでの戦いでいくつもの死線を潜り抜けた俺の身体はもうボロボロだった。
キイィィン、両手で持った大剣を前に出して魔王からの攻撃を必死で防ぐ。
何度も受けた魔王の巨大な闇魔法の攻撃。
剣を握る手に力を入れると剣は光を纏い始め、そのまま力を溜め続けながら必殺技の準備をする。
俺の目は強い意思を表すかのように光を映し出した。
「俺はあきらめない!」
「ふはは、勇者よ、これで終わりだ」
魔王の手からは禍々しい闇魔法が渦巻いている。
その無力さに絶望し、叫びたいほどの悔しさと共に痛みを全身に受けながら、俺の身は深い闇の中にずぶりと連れ去られた。
俺の手はもう震えている──もう限界なのだと身体が伝えてくるように自由がきかない。
魔王を倒すために協力してくれた人やパーティーのメンバーたち──俺に勇気と力を与えてくれたすべての人たち。
これから生まれてくるはずのかけがえのない命。
伸ばした手は、守りたいと願ったそのどれにも手が届かない。
手からは無残にも剣がこぼれ落ち、ゆっくりと降下すると地面にカランと音を立てて横たわった。
もうだめだ──脳裏によぎる言葉と共に俺の目からは意思が消え、空虚のように光の一切ない瞳になった。
「もう千字になる。勇者よ、死ぬ覚悟をしろ」
目の前にはブラックホールのように大きな闇魔法が現れ、空気を引き裂き腹の底に響く音を立てて、俺の方へと向かってきた。
ここが折り返し地点になります。
下から1文ずつ、
“目の前にはブラックホールのように大きな闇魔法が現れ、空気を引き裂き腹の底に響く音を立てて、俺の方へと向かってきた。”
“「もう千字になる。勇者よ、死ぬ覚悟をしろ」”
と順にお話の最初まで読んでいただければ幸いです。
★下から最初まで読んで頂いた皆さま、お読みいただきありがとうございます。
千字の命の勇者がお話を折り返すことによって千字を超えて生き長らえる。
(また最後の行は折り返して千字を超えたので、魔王の攻撃で死ななかったことにしてください)
そして1行目、2行目で魔王を倒したという描写に変わるオチにしたかったのですが、分かりにくくてすみません。
私が考案した手法ではありませんが、前からこの形式で書いてみたいなと言う思いがありましたので、今回、ようやくの挑戦となりました。
稚拙な文章でしたが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。★




