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「それはきっと闇闇やみやみのせいかもしれない」

 とそんなことを関谷さゆりは久美子のことを見ながら言った。

「闇闇? やみやみってなに?」久美子は言う。

 するとさゆりは闇闇の説明を久美子にしてくれた。その話によると、闇闇は世界を食べて成長する真っ暗な生き物で、闇闇は普段はどこかに潜んでいるのだけど、あるとき、光が弱くなる時期などになると(闇闇は光が嫌いらしい)たまにこうして世界にその姿をあらわして、人を惑わしたりするらしい。

「そんな生き物がこの世界にいるの?」久美子は言う。

 いくら物知りで勉強もできる関谷さゆりのいうことでも、その闇闇という生き物の説明はあまりにも突飛すぎた。

 こればっかりはいくら成績のあまり良くない久美子でも、さゆりちゃんの空想である、と思わざるをえない説明だった。

 でもさゆりは「いる。闇闇はこの世界のどこかに確かにいるよ」と久美子の顔を正面から見つめてそう言った。(断言した)

 そんな風に強い目をして、誰かのことを見つめて、なにかをはっきりと断言するなんて、とても慎重な性格をしている関谷さゆりちゃんぽく思えなかった。

 そのさゆりっぽくない態度が、逆にその闇闇という不思議な生き物になんだか不思議なリアリティーのようなものを与えていた。

 久美子は急に、なんだか怖くなってきた。

 今朝の違和感もあり、久美子は自分の周囲の風景をきょろきょろと眺めて、変な生き物が自分の近くにいないかを確認した。

 幸いなことに、変な生き物は久美子の近くにはいなかった。(もちろんさゆりちゃんの近くにもいなかった)

 真っ暗な自分の影の中にも、その闇闇という生き物の存在は確認できなかった。

 久美子はほっとしてため息をついて一安心した。

 それから久美子は「ねえ、さゆりちゃん」と関谷さゆりに声をかけた。

「なに?」すでに読書に戻っていたさゆりは本を見たままの姿勢で久美子に言う。

「その闇闇っていう生き物がもし仮に今、私たちのいるこの〇〇町にいたとしたら、私たちの町はどうなるの?」久美子は言う。

「町はなくなる」さゆりは言う。

「え?」久美子は言う。

 するとさゆりはそっと久美子を見て、「この町だけじゃない。『やがて世界のすべては闇闇によって飲み込まれる』」と、そんなとても怖い話を、(いつもの人形のような表情の変わらない)真顔のままで三島久美子に言った。

 その言葉を聞いて、久美子の背筋がぶるっと震えた。

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