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9.物理学者の目標

 メティの両親が亡くなってから一か月の時間が経った。

 メティは俺の家で一緒に暮らすことになり、村長も俺の両親もそれを強く推奨していた。今もたまに暗い顔をするが、もともとの笑顔の多かったメティに戻りつつある。メティの両親のお墓にお前りに行くのが今の日課となっている。お花を添えたりするのは日本と同じだが、火葬ではなく埋葬だけな上にお墓に置かれる石も名前のみが彫られた簡易的なものになっている。


「あれは…女神の遣いじゃよ」


 村長は俺の質問にそう答えた。


「で、でも女神の遣いは神に選ばれた人がなるものだって…」

「そうじゃのう…。神ドールは女神の遣いを与えてくださったが…そこから五十年、誰一人として声を聴いておらん、神ドールを信仰している神官様まですらもな」


 メティの両親を殺したのは女神の遣いであり、『自由会』という組織をなしている者らしい。村長から聞いた話を要約すると、女神の遣いの中でも人間の味方になる正義感の強いものと、自由会の一人になってしまうものがいる。自由会とは名前の通り女神の遣いが自由になることを意味しているらしい。女神の遣い自身は力が強く、一般人では対抗できない…という前提をもとに一般人相手に暴れているらしい。今回のことも自由会からすれば遊びのようなものでしかないらしい。そして、あの黒ローブは自由会の一人であることを主張するための服装だと村長は教えてくれた。


「黒ローブには逆らうな…。自由会が今以上に暴れていたころによく言われていた言葉じゃ…まさかこの歳になっても言うことになるとはな…」


 村長は悲しそうな顔とともに奥の部屋へと行ってしまった。昔に自由会と何かあったのだろうか…?いや、そもそもの話…村長は謎が多い人なのだ。実際この数魔法に関しての本を持っていることが不思議なことだったのだ。俺が疑問に思ったことは基本こたえられるか、本に書かれているし、今のところは自分で研究して解明する必要はないってぐらい村長の知識が豊富なのだ。村長自身がもともと優秀な魔法研究者か、魔法を使って戦争に参加していたのではないのではないかと予想している。

 気にするべきなのはメティのこと…メティの両親のことだ。魔法といえども人を生き返らせることはできないし、メティ本人も望みそうにないから死者蘇生などの倫理的問題のあることを考えるのではない。今はとりあえずメティのことを大切にしなければ…。

 ただ、ただ一つだけ俺がなすべきことと言ったら黒ローブを殴り飛ばすことだ。メティの両親を殺し、メティにトラウマを植え付けた黒ローブのあの二人を…絶対に許すわけにいかない。


 この日から俺はより一層魔法について調べるようになった。魔法への好奇心ももちろんあったが、なによりもメティのために俺自身が魔法を使えるようになるためだった。

 メティと魔法の練習をしたり、本を読んだり遊んだり…。そんな生活も続き、俺たちは12歳になっていた。その頃にはメティは既に身長も高くなり、顔立ちも体つきも女性らしくなっていた。俺も俺で魔法が使えないからと体を鍛え続けた結果、引き締まった筋肉を得ていた。幼い頃から筋肉を作ると身長が伸びにくいとはよくいうが、運良く俺は身長162と比較的高い数値だった。

 12歳で162cm…?と思うかもしれないが、この世界でも人間の成長はどうやら早いらしい。12歳時点で前世の世界での16歳相当の成長過程を経ていることになるが…、生命力の塊とも言える魔力の影響だろうと思っている。身体への魔力の影響を研究すれば俺も魔法が使えるようになるかもしれない。

 今言った通り俺は未だに魔法が使えていない。なんでだよ!と何度世界を恨んだことか…。その代わりと言わんばかりにメティは魔法の才能に富んでいる。いや、富みすぎている…。俺が調べたことや考えたことをメティに言って実践してもらう。そして実際にできてしまうのだ…どんなむちゃくちゃなお願いでもだ。


 あぁ、そうそう。最後に大事な話なんだが、俺とメティは学校に通うことになった。前世でいうところの義務教育というのがここにもあったわけだ。国中から12歳になった子供を集めて一気に教育する、戦争があった時代からの名残らしい。まぁ…村長曰く、「唯一の陽の遺産じゃな」だとさ…。

これにて序章終了です。

次からは1日に1話投稿しようと思ってますので、面白かったらブックマークや評価をしてください!

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