6.物理学者の思考
村長と話しをしたあと色々考えたせいか頭が疲れたので、メティと外で遊ぶことにした。村長の家は丘の上にあるが、その丘は木々でおおわれているためそんなに明るくはない。
「しかし、ルイス君はまだ幼いのに頭の回転が速いのう。どこで鍛えたのじゃ?」
「え?あぅっ」
「あ!ごめーん、大丈夫?」
メティとキャッチボールをしているときにこんな質問を投げかけられたもんだから、顔にボールをぶつけてしまった。さすがに5歳であんな受け答えができるのは違和感だっただろうか…?いや、俺だったらおかしいと思うな。女神の遣いが前世の記憶を持ってと先に聞いていたらもう少し幼い感じを出していたというのに…。
「すまん、わしが話しかけたばかりに…大丈夫か?」
「ぎ、ぎりぎり…」
「うわぁあ、鼻血出てきてるじゃん!お家帰ろ!」
「ほんとだ…、村長さん!お邪魔しました!」
「お邪魔しました!」
「ほっほっほっ、また来ておくれ」
メティのおかげと言ってもいいのか、俺は村長とこれ以上話さずに済んだ。今の状況でさえ、俺のことを女神の遣いと疑えるのだから少し感謝はしている。
俺は前世の記憶をもっている。これは女神の遣いと同じ特徴だ。だが、俺にはなんも特別な力はないし自分から女神の遣いと公言してどんな害があるかはまだ未知数だ。今のところは黙っといたほうがいいだろう…。
メティと一緒に俺の家に向かう。まだ鼻血は出ているが、家が病院をやっているから帰るだけで簡単に処置できると思うと楽ちんだ。家に着いたらすぐにお父さんのほうに向かう。
「次来るときは患者ではなくルイスの友達でとはいったが…ルイス、お前が患者になってどうするんだ…」
「ごめんなさいぃぃ、私のボールがルイの顔にぃ」
「ははは、ルイスも別に泣いてるわけじゃないからな。まぁ鼻血のせいで痛々しそうには見えるが…」
そういって父は俺の顔に手を向けた。何をしたのか理解はできなかったが、少し鼻の奥が温かくなったのを感じた。回復作用のある魔法だろうか?
「いまのは…」
「今のは回復魔法だ。ま、一番簡単なヒールだがな」
「ヒール…」
「すごい!鼻血止まってる!」
「ははは、俺が本気を出せば骨折までは一瞬で治せるぞ~」
「ルイのパパすごい!」
「怪我したらいつでも来な、無料で治してあげるからさ」
「やったぁ!」
骨折まで一瞬…。自己の治癒能力を極限まで上げることでけがが早く治るのだろうか?それともまた別の原理で…。
「ルイ?」
「あ、どうしたのメティ」
「なんか怖い顔してるから怒ってるのかなって…」
「ううん、もう治ってるし痛くもないよ。回復魔法ってどういう原理なのかなって思ってただけ」
「ふぅん、難しいこと考えるんだね。使えるんだからそれだけじゃダメなの?」
「使える理由がわかんなきゃ怖いじゃん、もしかしたら思いもしない副作用でキノコが生えてきたりするかもよ?」
「うへぇ、私キノコきらーい。副作用はちゃんと調べなきゃだねぇ」
「でしょ?」
こんな会話をお父さんはほほえましそうに眺めていた。危ない…俺の考えをそのまま口にしてしまえば5歳とは思えない考えが出てきてしまう。もう少し自重したほうがいいな…。まぁ、俺のお父さんは能天気なほうだし大丈夫そうではあるが、万が一を考えて自重しておくのは大事なことだ。
「外はもう暗いし、家まで送ってくよ。ルイスも一緒に来るかい?」
「うん、そうする」
「ちょっとメティスちゃん送ってくるねぇ」
「わかったわ~、それまでにご飯作っとくわね」
「いってきまーす」
お父さんがお母さんにメティを送ることを伝える。玄関を出る時にメティはお邪魔しましたと大きな声でいい、お父さんはニコニコしていた。やはり娘がいないからこそ、娘のように思えるメティは新鮮で微笑ましいのだろう。こんな小さな村で5年も俺とメティが会ったことなかったっていうのが意外ではあるが、それも相まっての笑顔だろう。そういう俺もメティを見る時はニコニコしてしまう。微笑ましさの笑顔なのであって、断じて恋心などではない。そ、そもそも5歳の俺がメティに恋をしたっておかしくはないだろう。でも…まだ会って数日のメティに恋をしてしまうとは、俺ってちょろいのかなぁ?
「メティスちゃんはルイスといるのは楽しい?」
「楽しいです!今日も本読み終わったらキャッチボールで遊べたし、楽しかった!」
「ははは、こんなかわいい子が一緒にいてくれるならルイスも安心だな」
「安心?」
多分俺にお嫁ができるということでも言いたいのだろう。5歳には早すぎる話題だ、メティも何が安心なのかわからず聞き返してるしな。
「ずっと一緒にいてくれたら結婚もできるだろ?ま、さすがに早いか」
「私ルイと結婚します!」
「ぃえ?」
「はははっ、元気がいいね!」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。幼さとはこうも単純なのだろうか?いや、メティが結婚するっていうことにちゃんと反応してる俺も大概なのはわかっているが…。
「じゃあずっとルイスのこと好きだったら結婚してほしいな。まだまだ先のことだけどね」
「うん、ルイのこと好きでいればいいんだもんね。好きでいます!」
この年の男女というのは惚れやすいのだろうか?いや、好きか喜びかを細かく判断できていないだけだろう、多分メティは知り合いの男の子が俺しかいないから俺のことを好きと勘違いしているのだろう。それでも嬉しいと思う俺は手遅れなんだろうけどなぁ。
メティを家に送り届け、帰路に着いたときメティの家から「ルイのことずっと好きだったら結婚する!」と元気な声が聞こえてきた。俺のお父さんに影響されすぎだろ…と、お父さんのほうを向くとお父さんもお父さんで俺のことをニヤニヤした顔でのぞいていた。とりあえず、自分の顔が熱くなっていることだけは確かだった。
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