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ラブレター  作者: 面映唯
dear arisa
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小笠原 1

 人が死ぬのは当たり前である。いつか死ぬから美しいのである。いつか死ぬから大切にできるのである。いつか壊れる関係性を見越して飛び込むその勇気が美しいと言うのも頷ける。何かが無くなる。何かを得るとき、得たものが粉々どころか、ふっ、と消えてしまう光景を想像するだろうか。そんなことを想像する奴は馬鹿だ。人間の細胞は破壊と構築を繰り返し続けている。見かけは同じでも、幼少の頃にあった腕はもうそこにはない。変わらず在るのは骨ぐらい。不変である物の方が少ないのに、手を伸ばす前から「いつか無くなるのならいらない」といってそっぽを向く奴は阿呆だ。何かが無くなったとしても、残り続けるものだってあることを見落としている。


 いつか無くならないと美しくないのだろうかと思ったことがある。夢の国のヒーロー不死鳥は、歳もとらないらしい。ヒロインに恋をしたが、彼女は人間だ。彼女はいつか死ぬ。彼女がいなくなった後、何十年何億年何光年と生き続けたい、羽ばたき続けたいと思うだろうか。


 俺なら死にたい。


 何百年は生きたとしても、何億年は生きたいと思わない。勿論、何億年も生きた奴から話を聞いたことがないということを加味した上でだ。実際は楽しいことがいっぱいあるかもしれないしな。


 よく不満を嘆く奴がいるが、世界は思った以上に合理的にできている。


 人が死ぬ運命を背負って生まれてくることにも、昨日の晩、さんまの骨を喉に詰まらせたことも、翌朝目が覚めたのが出勤時間三十分前だったことも、六十キロ制限の道路を三十キロで走る車の後ろに着いたことも、なんで遅れそうな日に限ってさらに追い打ちを掛けられるのかとか、上司の雷に備えて時計や眼鏡を鞄にしまったことにも、恐る恐る会社のドアを開けたら「お前ー、上司が出社しないからってのんきなもんだなー」という同僚の声ですべてを理解し安堵したことも、すべて比例反比例の中に在る。


 人が愛したのは、何かを信じることである。


 人が信じたのは、何かを愛することである。


 それすらも高みから予言するのが、絶対的な合理である。


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