6,パーティ組む。
ダンジョン攻略中の者は、レベルとジョブまでは視界情報で他人のものも分かる。
細かいステータスとかは、相手からの許可がないと不可。
というわけで、桜島二奈のレベルは、38。ジョブは、パラディン。
同じく、向こうもわたしのレベルを確認したらしい。
「あなた──失礼だけど、そのレベルだと、このダンジョンは危険すぎるわよ。それに、その武器。なぜダンジョンから提供されるジョブ装備品ではなく、ただのドリルドライバーなの?」
これも、ダンジョン側から提供されたジョブ専用の装備品なんだけどね。
まぁ、確かに一見、ただのドリル・ドライバーにしか見えないわけだけども。
「えーと。護身用に持ってきたんだよね」
「そうなの……変ね。地上の武器は、ダンジョンに入ると自動消滅するはずなのだけど。ほら、かつては銃火器を装備した軍の特殊部隊がダンジョン探索に入ったころもあったのよ。でも彼らの銃火器は消滅したし、特殊部隊員として培った能力も、ダンジョン内では意味をなさなかった。ここでは、レベルとステータス数値が全て、だものね」
「……このドリル・ドライバーは、武器と見なされなかったのかも?」
「そうかもしれないわね。実際、地上からの持ち込んだもの全てが消えるわけじゃないし。もしも、そうだとしたら、私服とかも消えてしまって困るものね」
そう言う二奈は、白銀の軽装鎧に身を包んでいた。
これ、知ってる。
事前情報によると、ダンジョン内では武器だけでなく、防具を入手する手段もある。
つまり二奈の軽装鎧はダンジョン専用の防備で、きっと特殊スキルとかも付与されているのだと思う。
ちなみにわたしは、ただの中学ジャージ(中学校のころから胸含めて発育していない)ですよ。
「なにより、あなた。そんな低レベルで、あたしを助けようとするなんて。命が大事じゃないの?」
と、叱られる。
あれ。さっきは強制的に助けさせられたような気がするのですが。
それに〈竜殺しのドリル・ドライバー〉があったので、身の危険もとくになかったしね。
まぁ、適当に誤魔化そうか。
「こほん。えーと。キミのような可憐な子がピンチなのに、ただ見ていることなんてできなかったんだよ。たとえこの命が奪われようと、キミを助けるため、動かざるをえなかったのさ」
と、歯が浮くようなことを言ってみた。
すると二奈は耳まで顔を真っ赤にして、明らかに動揺。
「そ、そ、そうなの? そんなふうに言ってもらえると、あたしも、その、嬉しいわ。ありがとう」
うーむ。二奈が、いつか性根の腐ったホストとかに騙されないか、すごーく心配です。
しかし、桜島二奈さん、レベル38のパラディンとは。同じ年代なのに、たいしたものだね。
ここで、素材採取のためのもうひとつの解決策を見出した。
〈竜殺しのドリル・ドライバー〉にも耐えられる、高レベルのモンスターを探さずとも、二奈が撃破した敵モンスターの素材を少しもらえばいいのでは?
そうすれば、今月の家賃代くらいなら払えるはず。
「わたし、じゃなく、ぼくもキミに同行していいかな?」
「え、あ、あなたも? だけど、ここからさらに危険な領域よ。さっきは、ダイアウルフが『偶然』にも、ドリル・ドライバーの音に驚いて逃げたからいいものの」
まぁ、そう言わずに。
こっちは素材のおこぼれが欲しいだけだから。
「二奈さん。キミが強いのはレベルからも分かる。だけど、女の子一人で行かせることなんてできないよ! ぼくだって、キミの盾にくらいにはなることができるはずさ!」
きゅんとした顔の二奈。
なんか目の奥に♡が見える。
「そ、そ、そうなのね。いいわ。いざとなったら、あたしが、あんたのことを守ってあげるわ」
ふっ。罪深い女だよ、わたしは。
……付いてないことバレたら、どうしよう……?