5,惚れられた。
あまたのガーゴイルさんたちの犠牲のもと、素材採取のため不可欠なことを知った。
〈竜殺しのドリル・ドライバー〉で殺しちゃダメ、という。
いまのところ、一個体も跡形も残らない。
ATKの∞とはこれほどのものだったとは……というか、加減というものを覚えていただきたいものだけども。
しかし、まだ望みは捨ててはいけないのでは?
そもそもレベル35推奨程度のガーゴイルでは、肉体強度が耐えられなかったという話かと。
すなわち、真に狙うは、さらなる高位モンスター。
たぶん、上位モンスターならば、素材だけ残るに違いない。
ではその基準となるレベルは、どこだろう。
ところでレベル上限って、いくつ?
99? 999?
いずれにせよ、さらなる実証実験こそが、わたしに家賃代を稼がせるのに違いない。
ここからさらなる深い層に入るわけだけども、こっちはDEF3だし、ダメージには気をつけないとだよね。それに〈竜殺しのドリル・ドライバー〉にも、遠距離攻撃不可という弱点はあるのだ。
芦ノ湖ダンジョンの第2層に入る。
しばらく進んでいると、一人の同年代の少女が、ダイアウルフの群れに襲われていた。
いまのところ人肉ムシャムシャには至っていないけど、すっかり囲まれている様子。
少女は燃える剣身の長剣を装備し、果敢に挑んでいる。
「いいところをお邪魔したら悪いから、わたしは先に行くね。見ず知らずの人、頑張ってねー」
こっちは気を使ったつもりだったのに、なぜか怒られる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんた、あたしを一人見捨てていくつもりなの? ここは身を挺して助けるところでしょうが!」
「えー、そうなの? じゃ、助けるね」
〈竜殺しのドリル・ドライバー〉のトリガーを引く。
ぐぉぉぉぉぉ、という回転音が轟くと、ダイアウルフたちがびくっと震えながら、逃げていった。
ほう。さすが狼型モンスター、〈竜殺しのドリル・ドライバー〉のヤバさに気付いたね。
犬好きのわたしとしては、モンスターとはいえワンコをやらずに済んでホッとした限り。
同年代の子が、こちらにやって来る。
桜色の髪をサイドテールにした可憐な子で、お嬢様っぽい。
さては、わきもいい匂いがするに違いない。
「ありがとう助かったわ。あたしは桜島二奈。あなたは?」
このとき、地味にあることを思い出した。
わたしの通う高校、ダンジョン攻略とか禁止だった。これがバレたら、へたしたら退学ものかもしれない。
身バレしないように、なんか適当な偽名を、思いつかないと、なんでもいいんだけど。
「えーと、あててみて」
二奈は少しびっくりした様子で、
「え、クイズなの? 変な子ね。というか、あなた──失礼だけど、性別は?」
はぁぁぁ????
わたしを見て、性別が不詳ですと?
まぁ、髪は短く切っているし、動きやすいように(そして戦闘とかでボロボロになっても悲しくないように)ジャージ姿だし、胸は水平をいくものの心意気だし、声音も女子にしては低めかもしれないけども。
………………
「ぼくは、男子。えーと志廼斗亜。生まれてこのかた、男の子だよ」
偽名+性別も偽っておけば、まぁ身バレの心配はない。
われながら、頭脳プレイ。
桜島二奈はぽっと頬を赤らめて、なんかモジモジしだした。
「そう、やっぱり男の子だったのね。あたしを助けてくれるなんて、王子様みたいな……あ、いまのはなし! 忘れて!」
何か、致命的な、面倒くさい要因を作った気もしないでもないけど。
ま、いっか。