4,地獄の実験???
〈竜殺しのドリル・ドライバー〉の固有能力は、
『〈穴をあける者〉が装備したときのみ、武器固有のATKが∞となる。結論、貫けぬものは、何もない』
冗談かと思ったけど、まさか本当だったとは。
素人のわたしでも、敵に与えるダメージというものは、装備者自身のATKと、武器自体のATK、その足し算だろうと分かるのに。
わたしのATKは3なんですが。
まぁ、もともと武器自体のATKが∞だから、わたし自身のATKなんか、極端な話マイナスでも関係ないのかも。
というより、『貫く』だけでなく、対象が木っ端みじんになっているのですが。
ATK(攻撃力)が無限だから、並みのモンスターでは耐えられず、消滅しているわけかぁ。
……いや、まった。
素材採取するはずのモンスターを消し飛ばしていたら、いつまでたっても素材なんて採取できないぞ。
だって消し飛んでいるもの。
まぁ、一体は消し飛ばず、上半身だけ残っていたわけだし。
おそらく直撃さえ避けることができれば、消滅コースは避けられる、はず。
しかし。
確実なことが分からないと、へたに使えないぞ。
それこそ『素材買取価格』がン億円のモンスターを素材ごと跡形も残らず消滅させてしまったら──ショック死する自信がある。
実験が必要……威力の実験が……どの程度で、モンスターさんは消滅してしまうのか……
天は求めるものに与える!
しばらく進むと、興味深い空間に出た。
何十体ものガーゴイルたちが、すでに犠牲となった人間たちの人肉を叩き潰して、肉団子にしている。
そんな開けた空間に。
つまり、ここはガーゴイルたちの『食肉加工工場』? 食肉とは、この芦ノ湖ダンジョンに攻略を挑み、無残に殺されてしまった攻略者たち。
グロいよ、グロいよ。
一体のガーゴイルが、巨大戦斧を肩に傾け、どことなく下卑た笑みを浮かべてやって来た。
ガーゴイルの言葉は知らないが、たぶん『向こうから人肉が来た』的なことを言いながら。
わたしはにっこりして、〈竜殺しのドリル・ドライバー〉を突きつける。
トリガーを引く。ぐぉぉぉ。
一瞬で、下卑たガーゴイルが消し飛んだ。
細かい肉片と、眼球一個だけが飛び散る。
眼球って素材になるのかな?
静まり返る、『食肉加工場』。
わたしは礼儀から、ガーゴイルたちに声をかけた。
人間の言葉なので、通じるかは一抹の不安があるけども。
「皆さん! 是非とも、わたしの〈竜殺しのドリル・ドライバー〉の『威力検証実験』にご参加ください!!!」
〈竜殺しのドリル・ドライバー〉のトリガーを引き続け、ぐぉぉぉぉと超小型ドリルを回転させながら、飛び込む。
ガーゴイルたちが四方から襲いかかってくる。
わたしはとにかく、〈竜殺しのドリル・ドライバー〉をぶん回す。
少しでも超小型ドリルに触れるだけで、次々とガーゴイルたちの肉体が木っ端微塵になっていく。
やがてガーゴイルたちは方向転換。
わたしから離れるようにして駆けていく。
あれ。もしかして逃げられている?
「もう、逃げないでー、くださいよー!」
一体のガーゴイルを追いかけながら、一考。
超小型ドリルを突き刺す箇所によって、破裂具合は変わるのだろうか?
そのガーゴイルの右足にむけて、超小型ドリルを突き刺した。
とたん、その右足だけが消し飛ぶ。
なるほど! 手足とかならば、全身が吹き飛ぶことはないぞ!
と思った矢先、衝撃波のようなものがそのガーゴイルの全身を伝わり、やっぱり全身が吹き飛んだ。
「…………次! 次ぃぃぃぃ!!」
ガーゴイルたちが、なんか悲鳴を上げている気がするけど、きっと気のせいだろう