30,我、怒り。我、立ち上がる。正義は、我にありぃぃぃぃ。
この主人公、もうやることがなくなったので困る。
その日。
朝。歯磨きしながら、ニュース番組をぼーと眺めていたわけだよ。
先日〈むつダンジョン〉で大量入手した魔石を売ったお金も、そろそろ底を尽きそう。
おかしいなぁ。あんなに高く売れたのに。無駄遣いしていないのに、どうして、お金はこんなになくなるの?
昔から、こんなにお金って、貯蓄できないものだったの? 何かおかしいよね。
で、ニュース番組では、侵略戦争を取り上げていた。
帝政ウッラル国が各地へと侵攻をはじめてから、かれこれ七年もたつとは。
わたしはウウムと唸っておく。
「というか、わたし、初耳だけど? もしかして、この七年間、ニュースを一切見てこなかった?」
いきなり後ろから、千佳ちゃんの声がした。
「さすがお姉さまです。世間の事情など知ったことかのその精神、感服いたします」
「わっ、驚いた! あれ、千佳ちゃん。どうして我が家に? お泊りしていたの?」
「ですがお姉さま、お気づきにはなられなかったのですか? 帝政ウッラル国による各地への侵略戦争は、わたしたちにとっても身近なことですよ」
「そうなの?」
「はい。帝政ウッラルの侵略戦争のせいで、物価も高騰を続けていますから」
「………………………あー。どうりで。なぜお金が貯まらないのか? その謎が解けたよ。それは物価高騰のせいだったんだね。すべては帝政ウッラル国のせいだったのだ!! もう、どうして各国はみんな放置しているの?」
「ウッラル軍人のなかには、ダンジョン内でのステータスを維持している者たちも多いと聞きます。噂では、どこかのダンジョンボスと結託しているため、そのような『チート行為』ができるのだとか。そのため通常兵器が太刀打ちできないとか。しかもモンスターさえも従えている、という報告もあります」
なんという悪逆非道だろう。
ところで明日から三連休なのに、予定がない。
そしてわたしは、気づいた。〈皆殺しのドリルドライバー〉が、なぜ地上でも使えるのか。
いまやわたしは、すべて、合点がいった。
「千佳ちゃん。クソったれの侵略者どもを皆殺しだっっ!!! 世界平和を取り戻す!!! ヒマだし」
「ですが国外へは出ることができませんよ。ダンジョン化が進むことによって、〈異次元干渉〉が悪化、ついに海を渡ることができなくなりました」
「えー。なにその後付け設定? 仕方ない。こういうときこそ、ダンジョンを経由するのだ」




