27,魔石100個。
四か月後。
──主人公──
青森県はむつ市にある、〈むつダンジョン〉。
かなり小規模なダンジョンで、難易度はF。
最下層までが32階層であり、すでにダンジョンボスは誰かに撃破され済み。
このダンジョンボスのレベルが65だった、ということからも、〈むつダンジョン〉のレベルがうかがいしれる。
で、なぜ、わたしがいま、この〈むつダンジョン〉14階層にいて、悲鳴をあげているゴブリンの首を切断しているのか、と言うとだね。
落ち着いて。
大丈夫。ゴブリンは死んでいるから。ちゃんと命を絶ってから、首を斬り落としているから。
では、なぜゴブリンは悲鳴を上げているのか……
「あ。殺し忘れていた。ごめん、ごめん」
しかし、どうせすぐに切り落とすので、まぁいいか。
そのまま悲鳴をあげるゴブリンの首をすとんと切断した。
ゴブリンの生首が、ぽとりと落ちる。
こっちも好き好んで、こんなスプラッターしているわけではない。
ゴブリンの素材となる魔石は、首の内部にあるため。ゆえに首を切断するのが、手っ取り早く魔石採取につながるわけ。
というわけで、首の切断面に右手を突っ込んで、魔石を引っこ抜く。
その魔石を、バケツに投げ入れた。
「沙良お姉さま。いまので魔石数は99個です。あと1個で、本日の目標はクリアします」
「あと一個だねぇ」
ところでこちらの千佳ちゃん。なぜかわたしを『お姉さま』呼びして、なぜか懐いている彼女。
中学三年生。
ジョブはシーフ。レベル85で、胸はわたしより大きい。いや最後の情報は不要か。
先日、とあるダンジョンで命を救って以来、わたしに同行するようになったわけ。
そんな千佳ちゃんは盗賊ジョブだけど、鍵開けとかより、拘束スキルにスキルポイントを振り分けてきた。たぶん、性癖だね。
というわけで千佳ちゃんの《縛:二式》によって全体拘束された、残りのゴブリンたちのもとに向かう。
拘束中のゴブリンの残り数は、ざっと200体かな。
全員、まだ生きている。
今回、〈ドリル・ドライバー〉は装備武器から外してあるので、これだけの数のゴブリンを殲滅するのは大変だしね。
「さて、残り一体だけど。どのゴブリンにしようか」
わたしの心は善意で満ちているから、こういうときは心が痛むね。
残り約200体から、一体だけ犠牲になるゴブリンを選ぶなんて。心が痛むよ。
だけど目標個数のため、はじめに目についたゴブリンだけ拘束解除。
装備武器〈薔薇の刀〉で、その首を刎ねた。
魔石を取り出し、すでに99個魔石が入っているバケツへと投げ入れた。
「これで目標の百個だね。ふぅ」
「お疲れ様です。沙良お姉さま。では、残りゴブリンたちは解放しますか?」
「そうだね……。いやまって。わたしはすでに、100体のゴブリンを殺したわけだけども。ここで残りのゴブリンを解放したら、解放されたゴブリンは、どう思うかな? きっと自分だけ生き残った罪の意識に苛まれ、詩人になるか自殺してしまうはずだよ。どっちも悲惨だ。そこでわたしは、」
装備武器を〈薔薇の刀〉から、〈皆殺しのドリル・ドライバー〉に切り替える。
「彼らを、悪夢から救うぞ!!!」
《ローリング》発動。
ゴブリンたちの「ギャァァァァァァァ!」という悲鳴。
《ローリング》終了。
跡形も残らず。
見やると、千佳ちゃんが号泣している。
「千佳ちゃん、ど、どうしたの?」
「お姉さまの心の優しさに、千佳は涙が止まりませんんん!!」




