26,連帯責任だよ。
「わらわは、ダンジョン側にも人間側にも加担せず、中立の存在。じゃから、おぬしが世界中のモンスターを殺し、ダンジョンを破壊しても──まぁ止めはせん。頭おかしいじゃろ、とは思うが」
「どうもです」
桜島二奈さんを抱き上げて、わたしはふらついた。
念のため、二奈さんの名誉のため言っておくと、彼女は軽い。
ただわたしのSTRが2のままのため。
「じゃ、わたしは行くよ、コク子さん。わが──修羅の道を」
「なにをカッコつけているんじゃ。ひとつ後学のために聞くがおぬし──なぜにダンジョンを崩壊させたいんじゃ? 何か、深い理由があるようじゃな?」
「あ、聞いてくれる? 実はね、処女膜の恨みがあって」
「……モンスターにレ×プでもされたのか?」
「え? 違うよ。なんだその『薄い本』展開は。あのさ、敵の攻撃を開脚して回避したとき、なんか破けた。スポーツ選手あるあるだね。わたしの場合、スポーツじゃなかったけど」
「……ひとつ聞いてもよいか? 一万歩譲って、それが破けた責任は、攻撃を仕掛けてきた敵モンスターにあるかもしれん。しかし、じゃ。そのモンスターを殺せば済む話じゃろ? なぜそれが全てのモンスター、全てのダンジョンへの恨みとなるのじゃ?」
「コク子さんは、女児だから聞いたことがないかもしれないけど」
「いや、じゃからわらわは、地球より長生きと言っておろう」
「大人の世界では、あるひとつの明確なルールがある。そう、そのルールこそが」
別に狙ったわけじゃないけど、わたしは間を取った。
コク子さんが固唾を呑んで、尋ねてくる。
「そのルールというものは、一体なんじゃ?」
「連帯責任、だよ」
「…………………おぬし、一度、頭の病院に行ったほうが良いぞ」
呆れた様子で、コク子がくるりとまわって、消えた。
ところで、あの女児は何者なんだろうね。ダンジョン側の者、でもないようだけど。
「まぁいいか」
わたしは転移ゲートで、地上に出た。
近くにあるダンジョン攻略局の支部まで、まだ気絶中の二奈さんを運ぶ。
ただ芦ノ湖ダンジョン内のことを質問攻めにあうと面倒なので、二奈さんは入口に寝かせて、わたしはそそくさと退散。
もう夜明けだ。
というわけで、朝一のバスに飛び乗る。
座席に腰かけて一息つく。
ダンジョンの外では、わたしはただの女子高生。
ダンジョンルールでは、ダンジョン内で装備した武器を持ちだすことはできない。
だから攻撃力∞の〈皆殺しのドリル・ドライバー〉も、地上では使うことはできないし、そもそも装備もできない。
そのはずなんだけど。
わたしは、右手にもったままの〈皆殺しのドリル・ドライバー〉を見やった。
「……なんで、地上でも装備しているんだろ????」




