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20,地獄のパニック中ー。

 


 ──芦ノ湖ダンジョン、それぞれの視点──



 あっけなく消滅した黄鬼だが、赤鬼や青鬼が気づかなかったことに、とんでもないことをしていた。


 芦ノ湖ダンジョン中に、落とし穴の現場を生配信していたのだ。


 ここにきて、黄鬼の野望が見えてくる。


 志廼沙良こと『ぐるぐるローリングしてくる鬼畜の小娘』を落とし穴で始末する──黄鬼による采配によって。


 それをダンジョン中に生配信することで、自分の成功をモンスターたちに宣伝。そして人気を取り、側近の中で、最高位の位を勝ち取ろうとした。


 その企みは、ローリング鬼畜がぴょんと跳躍したことで、すべてが失敗と終わった。


 百眼鬼さまからも一目置かれていた装甲巨兵〈ドガ〉、そして黄鬼自身も、あっけなく消滅させられてしまったのだ。


 そして、この絶望的な光景を、ダンジョン内の全モンスターが見た。


 厳密には、まだ消滅させられていなかった、第80階層よりも下層のモンスターたちが、だが。


 もちろん下層エリアのモンスターたちの耳にも、何か恐ろしいものが上層のモンスターたちを殲滅しているようだ、くらいの情報は届いていた。


 だが実際に情報として接するのと、生配信という形で実際に見るのとでは、衝撃はあまりに違う。


 しかもこの配信では、すべてのモンスターの兄貴分だった装甲巨兵〈ドガ〉、さらに百眼鬼の側近三人衆がひとり黄鬼が、成す術なく消滅させられてしまったのだから。

 一秒未満で。


 まったくもってトラウマ級の映像。


 これを見たモンスターたちは、どうしたか──


 逃げ出し始めた。


※※※


 148階層にある、監視システムのコントロールセンター。


 ここでは監視モンスターが、各階層をモニタリングしている。

 普段は平穏なこの場所も、いまはパニックに駆られていた。


 各階層の様子を映像で確認している監視モンスターたちが、悲鳴のような声をあげていく。ちなみにみな触手型。


「おい、各階層で無断で転移ゲートが開いているぞ! どうなっているんだ?」


「各階層のモンスターたちが一斉に逃げ出しました! ああ、これを見てください! なんてことだ!」


 映像は、いまの第102階層。


 たったひとつの転移ゲートから我先に逃げ出そうと、数多のモンスターたちが争いだしている。


 どの個体も、レベル100を超えるモンスターたち。

 人間のAランク攻略者とて裸足で逃げ出すほどの、高位モンスターたちが。まさしくパニックに駆られている。


 いまも200メートル級の巨人大帝〈アーバナン〉が、百の死滅魔法の使い手である大魔術師〈ドーグナ〉を踏みつけ、圧死させてしまった。

 だが転移ゲートをこじ開けることに必死な巨人大帝は、そんなことにも気づいていない。


 そして、この地獄の光景を、148階層のコントロールセンターから、固唾を呑んで見守る監視モンスターたち。


「80階層より下の、すべての階層が、このような状況です」


 監視モンスターの一体がうめいた。


「なんと情けない! 確かに装甲巨兵〈ドガ〉様と、黄鬼さまの討ち死には衝撃的ではあった。だからといって、まるで子供のように、我先に逃げようとするとは──そもそも、どこに逃げるつもりだ?」


 別の監視モンスターが言った。


「外部接続の転移ゲートですので、たとえば樹海ダンジョンや、渋谷ダンジョンでしょうかね。芦ノ湖ダンジョンと同じく、鬼族が管理するダンジョン系列ですし」


 ここに三体目の監視モンスターが、ぞっとした様子で指摘する。


「ま、まてよ。モンスターたちが逃げ出したら、『ローリングする鬼畜』は、予想よりも早く、この148階層にたどり着くのでは?」


 監視モンスターたちが、血の気を失った顔で、それぞれを見やった。

 触手モンスターに、『顔色』があるかはともかくとして。


 そして──3分後には。

 監視システムのコントロールセンターは、もぬけのから。


 すべての監視モンスターは、職場放棄で逃げ出したあとだった。

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