2,ドリル・ドライバーの初陣です。
間違いない。これはハズレ枠に違いないね。
だって武器アイテムの説明欄が、なんか知能指数が低いし。
まぁ仕方ないよね。
続いてスキルを選びますよ、と。
スキルは二種類あって、ジョブスキルと汎用スキル。
初期に選べるスキルの数は5つまで。
ただしレベル5のスキルスロット数は3個なので、3つまでしかスキルを使用可能にはできない。
スキルスロットの入れ替えは、非戦闘時のみ可能、と。
融通がきかないなぁ~。
ジョブスキルはジョブと紐づけられている。
わたしの場合、〈穴をあける者〉ジョブに関わるものだね。
事前にググったところだと、汎用スキルよりもジョブスキルのほうがお勧めだとか。
どれどれ。
……なぜか一つもジョブスキルが、視界の選択画面に出てこない。
これ、バグとかじゃないの?
こういうの、どこに文句を言えばいいんだろ?
各国にダンジョンが現れてから半世紀。どこの誰がダンジョンを創ったかは謎に包まれているので、文句を言う相手も、謎です。
仕方ないので、汎用スキル一覧から選ぶことにした。
しかし大量にあって困る。いちいちスキルの説明を読んでいたら、日が暮れちゃう。
そういえば、初期スキルの選択は、後からでもいいんだっけ。
じゃ、残りはあとでゆっくり決めるとして──
いまは、はじめに目についた、この〈突撃〉スキルにしよう。
選んでから、スキル説明を一読。
『AGI(素早さ)の数値を、装備状態含めたATK(攻撃力)の数値の10パーセント分上昇させる』。
ふーん。そういえばステ振りはまだしてなかった。
STR 2
ATK 3
VIT 3
DEF 3
MDF 3
INT 2
DEX 2
AGI 2
安心安定の、満遍なく振り分ける。
何事も、バランスよくが大事と見た。
HPとMPはジョブから自動決定する。
HP 201
MP 0
HPの201が初期値には多いのか少ないのかも不明。
重要なのは、ダンジョン内でのダメージはHPの減りに反映し、0になったとき、本当に死亡するということ。
MPは0かぁ。
まぁ〈穴をあける者〉は、どう考えても、魔法職じゃないからね。
あれれ? すると魔法攻撃力に影響を与えるINTは、振らないで0で良かった、ということ? まぁ、いいか。
さてと。
わたしは腕組みして、ダンジョンの先を見据えた。
「じゃ、行こうか」
第1階層を進む。
しばらくは何ら遭遇戦もなかった。
やがて前方から、どこかで聞いたことのある音がしてきた。
なんだろうと好奇心で進んだ先で、巨大な人型のモンスターと遭遇。
すでに息絶えた人間の臓物を引きずり出して食べている。
あー。どこかで聞いたことのある音って、咀嚼音かぁ。
「……グロすぎ」
ふいに視界内に、モンスターのデータが現れる。
遭遇したモンスターの情報が視界表示される、というのも事前にググった情報通り。
ガーゴイル
戦闘推奨レベル 35~
うん? 戦闘推奨レベル35?
わたしのレベルって、5だよね?
あれ、死んだ?
ガーゴイルが人肉を放り捨て、牙をむきだしにして飛びかかってくる。
「わぁぁ、お食事中にごめんなさぁぁぁい!!」
わたしは反射的に、〈竜殺しのドリル・ドライバー〉の超小型ドリルを相手に向け、トリガーを引く。
まったくのダメ元で。
しかし、この急展開がさすがにホラーすぎて、両目をつむってしまう。
ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ。
という、ドリルの回転する音。
それと──なにか、悲鳴のようなものも聞こえた?
しばらくして、わたしは薄っすらと目をあけた。
てっきりガーゴイルに殺されて、処女のまま人肉コースになると思ったけど?
あら。
ガーゴイルがどこにもいない。跡形もなく消滅してしまったような──
………あ。もしかして、ガーゴイルさん、わたしのことを見逃してくれたのかな?
〈竜殺しのドリル・ドライバー〉の超小型ドリルに、なにか肉のようなものがこびり付いている。
汚いので、ティッシュで拭い落とした。
それから肩をすくめて、
「ツいてるよね、まったく」