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13,人が良すぎるぞ。

 


 ストレッチしてから再度の《ローリング》状態に入ろうとしたところ。

 どこからともなくすすり泣く声が聞こえてきた。


「なんだ、この情けないすすり泣きは?」


 と見ると、老いたスケルトンがよよと泣いている。

 わたしは純度100パーセントの善人な上に、小さいころから『沙良は人が良すぎるから心配だ』と、友達に言われていたくらいだ。


 そこで相手が雑魚モンスターとはいえ、このようにすすり泣かれては、しかもスケルトンですすり泣くという偉業を達成されては無視できない。


「どうしたの? 何かあったの?」


「うぉぉぉぉぉぉ!! 阿修羅王さまがぁぁぁ!!」


 激しく泣きながら、その老いたスケルトンが訴えるに。


 どうやらどこぞの空気の読めぬ攻略者が、阿修羅王なる中ボスを瞬殺してしまったそうだ。

 そしてこの老いたスケルトンこそが、その阿修羅王が赤子のときより育てていたという。ようは忠臣にして、親がわり。


 わたしは同情心を示して、その老いたスケルトンの肩を叩いた。


「うんうん、それは辛いよね。こんどさ、その空気の読めない攻略者に会ったら、わたしから文句言っておいてあげるからね」


「き、貴様だろうがぁぁぁ!!」


「は? 何が?」


「貴様が瞬殺したんだろうがぁぁこの人間の、ドグサレビッチがぁぁぁぁ!!」


 あー、なるほど。さっき『図体だけでかい雑魚』をローリング消滅させたと思っていたけど。

 それが阿修羅王だったのかぁ。


 どうでもいいけど、この老いたスケルトン、口が悪いな。

 だけど心の広さでは埼玉県の女子高生で一番と言われた、このわたし。

 大目に見る。


「そんなに嘆かないで。ほら、アトラ王?とかいうモンスターも、歴史に刻む戦いができたことだし。満足してあの世に行ったよ。ね?」


「だから瞬殺だと言っておるだろうが! 貴様、それでも血の通った人間かぁぁぁ!! せめて阿修羅王さまの前口上はきくものだ! それが攻略者の、否、人間としての礼儀というものだろうがぁぁぁ!! それを、なんだローリングしていてぶつかったら消滅させちゃいました、だと? 貴様の脳みそは腐ってるのかぁぁ!? この腐れマ×コがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


「…………………………」


〈竜殺しのドリル・ドライバー〉を起動。

 ぐぉぉぉと回転するドリルビットで、老いたスケルトンをつつく。


「あぎゃっ!」という断末魔とともに消滅した。


「やれやれ。口の悪いスケルトンに付き合うなんて、人が良すぎるのも、考えものだぞ、わたし」


 こんどこそ、ローリング再開。

 先は長いぞ。

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