表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイ

「実話」なら特にやめてほしいやつ




 夏ですね。日本だとホラーの季節です。こわい話どんどん読みましょう。書き手さんはどんどん書いてどんどん投稿してください。できたら心霊系ホラーがいいです。宜しくお願いします。




 と、お願いするだけのエッセイではありません。


 ホラー大好きで季節関わりなく読み、映画だとか動画だとかを見ているのですが、「さめる」ものがあります。

 「白髪」。

 これで納得してくれたかたも居ると思います。あれ、変ですよね? ね?

 例えばこのような文です。


 「これは僕が大学三年生の頃体験した実話です。

  ある夏、僕と友人のAとBは三人で、県内で一番こわいと噂の心霊スポットへ行きました。

  ある公園の隅にある公衆電話です。深夜にそこで電話をすると、幽霊とつながってしまい、なかで死んでしまうという噂がありました。

  僕達はそれを見物しながら酒盛りをしようとばちあたりな計画を立て、缶ビールと懐中電灯を手にそこへ向かったのでした。

  公衆電話はなんの変哲もないもので、期待していた僕達はがっかりし、傍のベンチでビールを飲んでもう帰ろうということになりました。

  そこでBが悪ノリして、「妹に電話をかけてこわがらせる」といいだしました。

  僕とAは停めたのですが、一番飲んでいたBは公衆電話にはいって受話器をとりました。

  Bは電話に小銭を数枚いれ、ボタンを押しました。

  次の瞬間、Bが受話器を落としました。なにかいいながら、内側からドアを叩いています。

  僕とAは驚きました。ドアを開けようとしましたが開きません。

  僕とAは「Bがふざけているんだ」と重い、Bを残してその場を去りました。

  翌日、Bの母親から電話があり、Bが死体で見付かったとしらされました。

  僕とAは慌ててBの家まで行ったのですが、Bの家族の対応は冷たく、Bの顔を見ることもできませんでした。

  数日後、葬式があったのですが、Bは「事故で死んだので顔が復元できなかった」と、棺が開かれることはありませんでした。

  葬式の後、Aからきいたのですが、Bはあの公衆電話で死んでいるのが見付かったそうです。

  その目は恐怖に見開かれ、顔付きはまったくかわってしまっていました。口から血を流して、これは叫んで喉が切れたからだそうです。

  おそろしいのは、まだ大学生で髪を染めたりもしていなかったBが、白髪になっていたということです。一晩で白髪になる、それだけの恐怖が、Bに訪れたのでしょうか……。」


 はい、長い例え話でした。

 特になにをモデルにした訳でもないですが、「よくあるやつ」ですよね。わるのりで心霊スポットへ行き、酷い目にあい、友人がおそろしい形相で死んでしまう。

 違和感は多々あると思いますが、「実話です」系の話にはこの手の違和感はつきものです。AがBの死に様をどうやってくわしく知ったのか? などを追求してはいけません。家族ぐるみの付き合い、Bの妹が彼女だった、親戚、家が近いなど、幾らでも理由はつけられるので、そこは脳内で補完して読んでいます。


 しかし強烈に違和感があって、面白い話、ぞっとする話でもなにもかもを台無しにするやつ、それが「白髪」です。


 大前提として、頭から生えてきた髪の毛は、なにかしら手を加えないと色がかわることはありません。

 貧血や栄養バランスの悪さで髪の色がうすくなるとか、加齢により白髪になるのは別の話です。まだ内部にある段階で色がかわっているのであって、外に出た部分の色がかわっている訳ではありません。


「髪が傷んでると色がぬけるけど……」

 というかた、ご説もっともですが、髪が傷んだからといって白髪になるまで色素が流出することはないと思います。その前に髪の毛そのものがちぎれるなりなんなりするのではないでしょうか。


 マリー・アントワネットの「美しい金髪だったのに、処刑台にのぼる時には(刑執行へのおそれor投獄後の苦労or心労で)まっしろになってしまっていた」という逸話を引き合いに出すかたも居ますが、あれは一日ではありません。

 それに「髪そのものが」白くなったのではなく、乾燥していて埃っぽいフランスで、まきあげられた土埃が髪の毛に付着しまっしろにみえた、つまりそれをどうにかしてくれるひとがもう居なかったという逸話、だそうです。




 以下、建設的に、考えられる可能性を列挙します。


 1.書き手が知らないだけで、白髪になった人物はもともと白髪だった


  実は白髪頭で亡くなってしまったひとは、本当はもともとが白髪だった。しかし、なんらかの理由(若白髪がはずかしいなど)でそれを隠し、ヘアマニキュアを愛用していた(黒髪のウィッグを被っていたなどでも可)。

  なにかしらの恐怖にさらされた結果、その人物は発汗し、その上で頭をかきむしるなどして色がとれてしまった(頭をかきむしったのでウィッグがとれてしまった)。



 2.幽霊がブリーチ剤をぶっかけてきた、もしくは幽霊やばけものにはブリーチ剤と同様の効果がある


  まったく風情もなにもあった話ではないが、その心霊スポットで起こる出来事とは「幽霊にブリーチ剤をぶっかけられる」ことだった。

  高濃度のブリーチ剤をぶっかけられて髪は白髪と見紛うような金髪になり、更に運の悪いことに身につけていたor持っていたなにかとブリーチ剤が化学反応を起こして有毒ガスが発生、密閉空間だったことが災いして死亡した。例)ビール缶

  もしくは、幽霊やばけものには擬似的なブリーチ剤のような効果があり、触れられることで脱色されてしまう。


 3.別人


  心霊スポット巡りなんてなんのメリットがあるのだろうか?

  そんな無意味なことにわざわざ複数人で出掛けていくなんておかしくないか?

  更にこの手の話では「形相がまったく変わってしまっていた」というのもおなじみだ。

  実は、死んだと思われた人物は生きている。背格好が似ている別人の死体を用意し、身代わりにして葬式をあげ、自分は別人として生きているのだ。なにか突発的な殺人だったのか、白髪を染めるという工作はできないままに……。


 4.急速な老化


  亡くなった人物は、普通では考えられない速度で老化した。その為、髪も白髪になり、老衰で死亡した。


  しかしこの理屈には越えなければならない壁がある。「髪の毛の存在」だ。具体的にいうと「抜け毛」である。

  例えば八時間で八十年が過ぎてしまったとしよう。日本人の髪の平均寿命は男性で三年くらい、女性で四年くらいといわれている(うろ覚え)。

  老化に伴って髪が伸びて白髪になったのなら、死体のまわりにはおびただしい量の抜け毛が落ちていないとおかしい。わたしのうろ覚えが正しいなら、男性なら三年ものの髪の毛が二十六回分、女性なら四年ものが二十回分。

  こうなると、「死体は白髪だった」よりも「死体は禿頭になっていた、それも剃ったわけではなく自然にぬけたのだ……」「ショートヘアだったのにスーパーロングになっていた……どうして……」という話になりそうだ。

  更に、「爪は伸びていなかったのか」「体が垢まみれじゃないのか」などのつっこみがはいるのは必至である。

  ……「黒髪だし爪も綺麗なのに、顔だけどう見ても老人」「内臓だけ老化」のほうがこわい気もする。


 5.ふしぎなちから


  なんらかのオカルト的な力で髪が白くなってしまった!

  もう理髪店やれよ幽霊。




 どうでしょう。考えられる可能性はこんなものだと思います。

 ホラーを書くかたにお願いしたいのは、霊現象で死んでしまったキャラクターを「恐怖によって一晩で」白髪にしないでほしいということです。恐怖で白髪にしたいなら、時間をかけましょう。

 「霊のパワーで」「邪神の力で」「妖怪の仕業で」ならまあ……納得しなくもないけど、ブリーチ剤を手にしたお化けの図がうかんでしまう(;´Д`)




 つまりなにがいいたいかというと、心霊ホラー読みたいからどんどん書いてくださいな。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いやいや、被害者の周辺では、一晩で数カ月程度の時間が経過していたのです。 きっと!! (伸びた髪の毛は幽霊がカットしてくれてました。) (ちなみに伸びた爪も!) (ヒゲや鼻毛までも!!) …
[一言] 確かに。 オグリキャップもゴールドシップも数年かけて真っ白になったのですし(ウマ脳)
[一言] 昔テレビで人は恐怖で一日で白髪になるのか?って内容で番組やってて有り得ないってことがわかってから自分も白髪表現は冷めるようになりました 創作と言ってしまえばそれまでなんですが、ことホラーに関…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ