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ノワール、進化7

「まずは事の起こりから説明いたしますので締め付けるのはやめてくださいませ」


「分かったからはよ話せ」


 事の起こりはオーガの子供たちの遊びだった。

 オーガはそれぞれの部族があって別々の居住地を持って暮らしているのだが仲が悪いわけではない。


 仲が悪い部族も中にはあるのだがそれぞれのオーガの部族にも交流というものがあった。

 仲の良い部族であれば子供たちが行き来して遊ぶこともあった。


 子供たちは平和に遊んでいたのだけどある時別の集団の子供がある部族のオーガの族長の子供が大切にするものを壊してしまった。

 単なる好奇心とちょっとしたイタズラ心だったのだけれど子供はひどく悲しみ、族長である親は大激怒した。


 なんと運が悪いことに変わりのものも直すことも出来なくて部族同士が一触即発の状態になっていた。


 ちなみにそれはテラリアスナーズが住む森での出来事でオーガの戦争が起きれば周り無事で済まず、影響は計り知れない。


「普段なら女王様がこういったときは仲介なさるのですが今回はお忙しいとこのとこで……」


 テラリアスナーズがあんなことがあったのだから卵に付きっきりなのは想像に難くない。

 マギナズでは腕力以外の解決を見るのは厳しそうだしな。


「森のみんなが相談したところ女王様が人間のショウカイ様なら解決してくれるだろうと解決策を提案してくださったのです」


「何の解決策でもなくない?」


 それはただの丸投げではないか。


「それでこの私ショウカイ様を探すことを任されました。


 人間は数が多いしなかなか近づけないので苦労しましたが女王様の魔力が感じられる人間がショウカイ様だとお聞きしておりました。

 ようやく見つけましたので逃げられる前に近づかねばと思いましたら、その……」


「頭に突き刺さったと?」


「はい……」


 あわてんぼうにも程がある。


「事情はわかったけど俺には手伝えない」


「ええっ!


 なぜでございますか!」


「今はちょっとこの場を離れられないんだ」


 別に魔物を助けるのは構わない。

 テラリアスナーズの推薦だし、せっかく助けた卵は無事に産まれてほしいので協力したいのは山々だ。


 けれど今はノワールの方が大事だ。

 それにノワール抜きじゃショウカイは簡単に魔物にやられてしまう。


「何が用事でもございましてか?


 ならばその用事が終わってからでも構いません!」


「うーん……終わってからでいいならいいけどさ、いつ終わるかも分かんないだよね」


「うむむ……わかりました。


 とりあえず森に戻ってみなに話してきまする。


 早くこれ解いて!」


「分かったよ、ワチカミー」


 糸の解き方を知らないのでワチカミを呼ぶ。

 解放されると思ったファルバランが一転して絶望的な表情をする。


「な、なぜ!


 お助けてをー!

 やだー!


 食べないでー!」


「これうるさいから解いてあげてくれない?」


「話は済んだのか?」


「うん、あれは事故だったって」


「そうか……うっさいぞ!


 これ以上ピーチクパーチク言うと食っちまうぞ!」


「ショ、ショウカイ様ぁ……」


「黙ってれば解いてくれるって」


 ワチカミにファルバランを渡す。

 言いつけ通り黙っているけれどひどく震えている。


 弱い者いじめをしているみたいだけど頭に突き刺さってきた事故の代償だ。


「ほれ」


 ワチカミが糸を引っ掴んで引っ張るとブチブチと簡単に糸がちぎれていく。

 あっという間にファルバランは自由になり、ワチカミの手から飛び立つ。


「じ、自由だー!」


「糸ってそんな簡単に切れるの?」


 ワチカミが簡単に糸を引きちぎっていたから気になった。

 そんな簡単にちぎれるものじゃ困ると思うし、ショウカイが軽く引っ張ってみてもちぎれる気配は全くなかった。


「あれは私の糸だからな。


 他のクモの糸は私でも結構力を入れんとちぎれないよ。


 自分の糸は出した後もある程度のコントロールが出来るのさ。

 じゃないと片付けたりする時大変だろ?」


「なるほど……」


「それでは一度森に帰りまするー!」


 逃げるようにファルバランは飛んでいってしまった。

 なんだかシュシュみたいに小型の魔物って憎めない感じがあるものだな。


「まあ敵じゃなくて何よりだな」


 ワチカミはちぎった糸を焚き火に投げ込む。

 簡単に燃えそうにも思えていたのだけど魔力を多分に含んだワチカミの糸はそう一瞬で燃えるものでもなかった。


 強い火の魔法であれば簡単に燃やせるのだけどただの焚き火ではゆっくりと燃えていき、いい燃料になる。


「まあまだ諦めたわけじゃなさそうだからまたそのうち戻ってくるよ」


 普段はどこにいるのかぐらい教えておけばよかったとショウカイは思った。


 しかしながら魔物の諍いを仲介するのに人間を紹介するなんて。

 テラリアスナーズもなにを考えているのだろうか。


「魔物同士でもなんかそんな喧嘩みたいなことあるのか?」


 ミクリャのおねだりとショウカイも食べようと思ったのでソーセージを2本また焚き火のところに刺す。


「私もまた食べたいぞ!


 魔物同士でもナワバリ争いなんかは時々あるな。

 協力関係にある魔物の集団同士が喧嘩して仲悪くなったっていうこともあり得ない話じゃない」


「そうなんだ。

 オーガ同士の争いってなんか怖そうだな」


 ワチカミの要望でもう1本ソーセージを増やす。


「わ、ワタクシもソーセージを……」


「分かった分かった」


 みなお気に入りのソーセージ。

 4本にもなると焦げないようにクルクル回す作業がちょっと大変だ。


「オーガに限らない話だけど魔物にも程度ってもんがあるからな。


 頭がいい奴もいりゃ悪い奴もいる。

 なんか人っぽい見た目してるやつもいりゃ、ごっつい見た目してる奴もいるもんだ。


 すぐに喧嘩にならない時点でどっちのオーガも頭いいんだろうさ」

 

「へぇー、なるほど」


「頭いいってことは大抵魔物は強い。


 だからそのオーガ同士の争いは結構やばそうだな」


「……そうなのー」


 ワチカミは豪快に笑うけれど関わる可能性があるショウカイにとっては笑い事ではない。

 ファルバランがどう判断してくるのか分からないけれどなんだか嫌な予感がしてくるショウカイである。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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