ノワール、進化1
テラリアスナーズとマギナズは帰っていった。
どこに住んでいるのか、森の名前も聞いたがショウカイにはその場所は分からなかった。
後々地図でも見て調べてみようと思うけど近くではなさそうだと思う。
シュシュもワチカミの森に帰っていったし、再びノワールとシズクとでののんびりした日々が戻ってきた。
まずやらなきゃいけないことをワダエに帰ってきて思い出した。
「おりゃ!」
ショウカイは冒険者ランクを上げるための依頼を受けていた途中なのであった。
昇格試験に期限はないけれど受けてからだいぶ日が経ってしまっている。
山岳地帯に再び足を運んだショウカイはストーンリザード狩りを再開した。
ノワールの感覚もテラリアスナーズの血を飲んでからというもの少し鋭敏になり、これまで見つけられなかったストーンリザードを見つけられるようになっていた。
ノワールが見つけた岩をよく見るとストーンリザードがいることがショウカイにもよく分かった。
バレてないと思い込むストーンリザードにショウカイは思い切り剣を突き立てた。
ストーンと名はついているが見た目だけの問題であって表面は岩ほど硬くはなかった。
頭は骨の関係上硬そうなので首を狙って刺した剣は思いの外深く突き刺さった。
「ノワール!」
暴れてショウカイを振り払うストーンリザード。
首元に剣が突き刺さったまま逃げようとするけどこのまま逃すわけにいかない。
ノワールがストーンリザードの尻尾に噛み付いてストーンリザードを持ち上げて地面に叩きつける。
「さっさと大人しくなれ!」
怯んだ隙にショウカイがもう一度剣の柄を握って力を込めて剣をさらに深く差し込む。
ブスリと剣がストーンリザードの喉を貫通して地面にまで剣が刺さる。
バタバタと暴れるストーンリザードに負けないように全体重をかけて耐える。
やがてストーンリザードの動きが弱々しくなっていき、力なく動かなくなる。
地面に剣が刺さらなかったらまた弾き飛ばされていたかもしれない。
「ふぅ……」
乱れた呼吸を整えながら剣を引き抜く。
なんとかストーンリザードの討伐に成功。
これ後2回ほど繰り返すだけである。
トカゲの尻尾切りというものがあるけどストーンリザードは尻尾を切り捨てて逃げる種類ではない。
そんな種類もいるみたいだけどストーンリザードにそのような機能は備わっていないのでストーンリザードの討伐の証は尻尾であった。
ちょっと硬めの尻尾の先を切り落として持ってきた袋に入れる。
ストーンリザードは革が加工品になるので持っていけたら買い取ってくれるらしいけれど今は搬送手段がないので死体は諦めるしかなかった。
シズクが欲しそうにしていたのでいいよと許可を出すとシズクはストーンリザードの死体に覆いかぶさるようにしてジワジワと溶かしだした。
みるみると溶けていく光景はグロテスクでありながらもどことなく神秘的で休憩するにもいいぐらいの時間になる。
1匹やれて勝手が分かればあとは早いと思ったけど2匹目には逃げられてしまった。
欲を出して最初の一撃に頭を狙ってみてしまったのだ。
剣はほんの少しだけ刺さったけれど頭蓋骨を貫通するまでには至らず、ストーンリザードはさっさと逃げ出してしまったのだ。
ショウカイの力や技量では硬い骨をそう簡単には貫けはしなかった。
3匹目はちゃんと横着せずに喉を狙ったので1匹目と同じように倒すことに成功した。
4匹目も同様に倒したところで、異変が起きた。
「よし、シズクいいぞ」
3個目のストーンリザードの尻尾を手に入れた。
これをギルドに提出すれば昇格試験の合格となり、冒険者ランクが上がる。
死体の処理をシズクに任せて休んでいるとノワールがいきなりふらついた。
足元がおぼつかなくなり、倒れてしまった。
「ノワール!
大丈夫か!?」
これまで元気にしていたノワールがいきなり倒れてしまった。
何が原因か分からず駆け寄るとノワールの体が淡く発光していた。
「こ、これは……」
『ノワールが進化しようとしています』
ショウカイの疑問に応えるように表示が現れる。
進化しようとしている。
それが何なのか、ショウカイにはいまいち理解できていなかった。
シュシュかテラリアスナーズでもいれば聞くことができたのにと思う。
今すぐシュシュでも呼んできたいけれどノワールを放ってはおけない。
ノワールの体がフワリと浮き上がって白い光に包まれる。
光はやがてノワールの体を包み込む膜となり、黒い毛に覆われ始めた。
まるでノワールの毛の塊のような物体になってしまい、触ってみるとノワールのようにフワフワとしていた。
「えっ、ナニコレ?」
ノワールは巨大な毛の塊になってしまった。
「えっ、えっ、これ正常?」
持ち上げてみようとするとノワール分ぐらいの重さがちゃんとあり、かなり重い。
動かしてもいいものなのか、誰かに見つかったらどうなるのか、ショウカイは何も分からずただ毛の塊を前にして困惑し通りしである。
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