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卵を取り戻せ8

「待ってください!」


「ショウカイさん!


 ご無事でしたか」


 どうなるのか流れを見守っていたショウカイだったけれどこのままではテラリアスナーズとソリアたちが敵対してしまう。


「この状況は一体……」


「これはあいつらが呼び込んだ状況、因果応報です」


「それが何のことなのか私には分かりません。


 とりあえず魔物を止めなければ……」


「待ってください」


 ソリアの前に割り込むショウカイ。

 魔物が暴れていたのを見たのはショウカイのはずなのにどうして止めるのかが分からない。


「どうして止めるんですか」


 理由は分からない。

 もしかしたらショウカイが犯罪組織の一員で魔物を傷つけないように邪魔しようとしているのではないか。


 ソリアから冷たい殺気がショウカイに向けられる。

 けれどショウカイも引かない。


「ここに魔物はいません」


「はぁ?」


「ここに魔物なんていないんです」


「じゃああれはなんだって言うんですか!」


 ソリアが剣でテラリアスナーズを指す。

 どう見ても魔物。


 無事に見えたけど何かにやられてしまったのか心配になってくる。


「あれは母親です。


 さらわれた我が子とようやく再会できた、心優しい母親なんです。


 そこに魔物も人間もありません」


「何をふざけたことを……魔物が母親とか意味がわからない。


 それに仮に母親であったならなんだと言うんだ!」


「暴れにきたのではないので手を出さなきゃ向こうも手を出してきません」


「なんでそれが分かる。


 魔物が手を出さないような保証も本当あれが母親かどうかも分かったものではない!

 私たちには町を魔物から守る義務がある。


 それに……貴様何者だ!」


 ソリアがショウカイの首に剣を当てる。


 魔物の肩を持つ人間。

 急激にショウカイという男が分からなくなった。


 特に戦力にもならないけど邪魔にもならないように思っていたのになんだかいきなり知らない人になったような感覚。


「それが今重要ですか?」


「魔物が母親とか、手を出さなきゃ攻撃してこないとか、なぜ分かる!」


「俺には魔物の言葉が分かるスキルがあります。


 だから分かるんです」


「そんなスキル聞いたこともない。


 それに他の2人はどこにいった!」


「聞いたことなくても分かるものは分かるんです。


 ……マギナズはどこ行ったのか分かりませんけどテラリアスナーズはソリアさんにもずっと見えてますよ」


「どこにもいな…………い」


 ソリアも勘が悪い人間ではない。

 回りくどく、要領を得ないショウカイの話し方に何かを汲み取った。


「まさか……」


 体の力が抜けてソリアがフラついた。


「でも、そんなことが……ありえない」


 頭の中で点が線になった。


 訳の分からない言葉を話し、ソリアでも底が知れないほどの強さを誇る謎の女性。

 あり得ない話なのだけどその強さが魔物であるがためだとしたら。


 ソリアは改めて魔物を見た。

 もはや力を抑えていないテラリアスナーズからは重たい魔力が感じられ、ソリアが全力を出しても勝てる気がしない。


 他の人は分かっていないのだけれどSランクのソリアにはテラリアスナーズがアースドラゴンの魔物であることが分かっていた。

 地上における最強種。


 それが壇上にある巨大な卵に頭を寄せて涙を流している。

 卵とその魔物は何となく似ている気がして、母親と言われるとそう見えてくる。


 魔物が時折何かの言葉を呟いている。

 ソリアには何を言っているか分からないのだがテラリアスナーズとマギナズが話していた言葉に似ている。


 そして聞こえる声の感じもなんだか聞き覚えがある。


「本当に、そうなんですか……?」


「そうです。


 でも大切なのはここにいるのは悪人と善人と母親、それだけです。


 ソリアさんはやるべきことをやってください」


「やるべきこと……?」


「ここに魔物はいないんです。


 ならやることは1つじゃないですか」


 我ながらうまく誤魔化せていると思う。

 ソリアの後ろにいる人たちは何が何だか分からないといった顔をしている。


 ただどんな時でも堂々として、マイナスな感情を表情に出すことの少ないソリアの顔が蒼白になって、何も考えられなくなっている。

 目の前に魔物がいるのに不思議な男に止められて、説得されてしまっている。


 犯罪者たちは戦意を喪失していて誰も動かない。


 ただ自分たちも状況把握ができずに動けない。


「犯罪者を捕まえてください。


 そのためにここに来たんでしょう」


「あっ、そうだな……けれど」


「手を出さなければ手を出してきません」


「……全員、この場にいる者を確保せよ」


「あの魔物はどうするんですか!」


「あの魔物には手を出すな。


 何もしなければ何もしてこない」


「…………わかりました」


 覇気を失って指示を下すソリアに誰も口を出すことができなかった。


「全部教えてくれ。


 お前たちが何者なのか」


「あとでお話ししますよ」


 足が震えている。

 一世一代の大見得を切った。


 今テラリアスナーズに手を出してしまえばこの場所は本当に生きているものがいなくなってしまう。

 混乱を避けるために直接テラリアスナーズが魔物だとは伝えなかった。


 どうにかソリアがショウカイの意図を汲み取ってくれて助かった。


 ソリアが自信満々で不思議な態度に見えたショウカイは単に極度の緊張状態にあっただけだった。

 震える足をなんとか動かしてテラリアスナーズのところに向かう。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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