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卵を取り戻せ7

 あとは競売を終えて売上からいくらかもらって祭りの残りの日を贅沢に過ごすつもりだったのに。

 ステージの奥で待っていた卵を盗んだスパルタスの連中はオークションとはまた違う騒ぎに顔を出して驚愕した。


 テラリアスナーズと目があった男たちは体が動かなくなった。

 恐怖で体が硬直したのではない。


 もう2度と逃がさない。

 テラリアスナーズの魔力によって拘束された男たちがふわりと浮き上がる。


「で、出られないぞ!


 どうなってるんだ!」


 回り込むようにしてショウカイたちが入ってきた通路から出ようとしていた人たちは見えない壁に阻まれる。

 テラリアスナーズに抜かりはなく地下は完全に閉鎖されていた。


「あの魔物を倒すんだ!」


 一斉にテラリアスナーズにかかっていくが誰一人としてテラリアスナーズを傷つけられる者はいない。


「これは隅にいた方が安全なのではないであるか?」


「そうだね」


 人の姿でもやたらと目立ち、次々と手当たり次第に殴り倒していくマギナズは当然敵として認識されている。


 足を踏みつけると床の石が盛り上がり石の棘となってテラリアスナーズに接近した者たちを突き刺す。

 見た目も完全に魔物だし派手な戦いがためなのかショウカイは完全に影に隠れてしまった。


 普通に人だし、特別強そうでもない。

 誰の目にもショウカイが写っていないのは確かであった。


 一応剣を抜いているけど悲しいくらいに何も切っていない。


 最悪の場合ノワールも呼んで戦う覚悟もしていたのに拍子抜けしてしまった。

 いや、テラリアスナーズたちは激戦を繰り広げているのだけどショウカイだけが蚊帳の外にいるような物悲しさがあった。


 戦い、というか一方的な虐殺というべきか。

 テラリアスナーズを倒さないと出られないのでみんなかかっていっているだけで、オークションに参加していたと思わしき貴族たちは戦意を喪失している。


 一通り戦闘は終わった。

 果敢に攻め込んでいった強者と雇い主にせっつかれたそうでもない実力の連中は散っていった。


 残ったのは全く動けなかったような奴か慎重な性格をしたそれなりの実力の持ち主ぐらいだった。


 攻撃が止んでテラリアスナーズはゆっくりと前に進み出した。

 こちらから手を出さなさなければ相手から手を出してくる事はない。


 このことに気づくまでに一体どれだけの人が犠牲になったのか。


 全員が固唾を飲んで見守る中、テラリアスナーズは卵の前までやってきた。


「ああ……ごめんなさい。


 私が目を離したばかりにこんなところに連れてこられて……」


 卵を囲っていたガラスのようなものが割れてテラリアスナーズはそっと卵に顔を近づける。


 テラリアスナーズの言葉が分からなくてもその光景を見れば目的がなんであったのか分かる。


「さあ、帰りましょう。


 こんな血生臭いところにいてはいけません」


 これまで抱えてきた怒りがウソのようだ。

 我が子を取り戻したテラリアスナーズはすっかり気持ちを落ち着かせて、空中に拘束していたスパルタスの男たちの首を折って捨てた。


 苦しめて殺すつもりだったけれど卵が返ってきたので慈悲で苦しまずに逝かせてやった。


「全員そこを動くな!」


 一件落着と思ったのだがすっかり忘れていたソリアが部下を連れて突入してきた。


「助けてくれ!」


 テラリアスナーズが逃げられないようにと張った魔法の結界を切り裂いて中に入ってみるとその光景はソリアの理解の範疇を超えていた。

 犯罪者、あるいは犯罪組織と関わりのある貴族がソリアに泣きついてくる。


 この場にいる半数ほどの人が倒れている。

 マギナズの咆哮で気絶した人や戦いによって倒れた人など様々死屍累々と凄惨な状況。


 ステージの方には大きなカメのような魔物がいて、返り血を浴びていることからひどく戦ったことがわかる。

 裏切り者を捕らえて裏のオークション会場の場所を吐かせて、3人でそこに向かったと聞いてソリアは出来る限り急いだ。


 ソリアが向かった先にも待ち伏せていた相手はいた。

 敵が用意していた待ち伏せ場所に行く前にショウカイからの報告を受けたので損害少なく敵に対応することができた。


 3人が危ないと思って急いで来たのに。


「これは……どういうことですか……」


 魔物を取引しようとして逃してしまったのか。

 3人はどこにいった。


 カリオロスの裏切り以上に衝撃的な事はないだろう。

 仮に3人が全滅ていても冷静に対処しなければいけない。


 どんな光景が目に入ってきても大丈夫だと思っていたのに、想像を遥かに超えてきた光景にソリアは頭が真っ白になった。


「あ、あの魔物をどうにかしてくれ!


 捕まる、大人しく捕まるから!」


「……ソリアさん、どうしますか」


「そ、そうですね……」


 状況を見る。

 表には続々と治安維持部隊と協力してくれる冒険者が集まってきている。


 もはや犯罪者たちは逃げる事はできない。

 見ると戦えそうな敵は少ない。


 犯罪組織と関わる者の逮捕も大事だけどこの惨状を生み出したのはあの魔物だ。

 あれが町に出たら大変なことになる。


 ひとまず魔物をどうにかすることが優先だとソリアは剣をテラリアスナーズに向けた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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