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卵を取り戻せ6

 低く響くような音が時々聞こえてくる。

 なんの音なのかショウカイにはわからなかったが階段を降りてみると分かった。


「こりゃあ……」


 言葉もなかった。


 降りてみるとそこはそこそこに広い通路だったのだが天井や壁に人が突き刺さったりめり込んだりしている。

 器用な芸当だと思う。


 テラリアスナーズはショウカイの言い付けを守ってできるだけ人を殺さないようにしながら瞬殺で無力化していっていた。


 攻撃の瞬間に相手に魔力を流し込み強化する。

 相手はテラリアスナーズの攻撃にぶっ飛んでいくけど強化されているため壁に刺さるほどの勢いでぶつかっても死んではいない。


 死んでいないだけなので死んだ方がマシな人の方が多いと思うけど、相手がもう動けないぐらいのダメージを与えつつ殺さない方法をテラリアスナーズは編み出したのだ。

 やっと自分の子供気配を感じられる状況で殺していった方が楽なのに、変に律儀というか。


 それを可能にする魔力と膂力の強さはショウカイには計り知れないものがある。


「チッ……あなた厄介ですね」


 ようやく追いついたテラリアスナーズは1人の男性と対峙していた。


「さっさと退けてください」


 余裕の少ないテラリアスナーズは魔法ではなく普通に拳で殴りつける。

 少し離れていても消えたように感じるぐらいの速さのテラリアスナーズの攻撃を男は間一髪のところで回避して持っていた身の丈ほどもある長剣で切り返した。


 テラリアスナーズの脇腹が浅く切れる。

 ツキリとした痛みが走りほんのわずかに血がにじむ。


 男はテラリアスナーズの攻撃をかわしたばかりか傷までつけた。

 しかし男の顔色は良くない。


「クッ……全力だったんですけど」


 回避だっていっぱいいっぱいで反撃も自分の魔力をかなり込めた。

 なのに薄皮一枚しか持っていけなかった。


 テラリアスナーズの攻撃も回避したといってもその風圧だけで男の頬は赤い筋が入っていた。

 パンチの軌道をなんとか読んで掠らせもしなかったのに。


「早く退けてくれませんと手加減出来ませんよ?」


「あー……何言ってるか分かんないっしょ」


 金で雇われても命までかけるつもりはなかったのに。

 こんな通路じゃ逃げることも叶わない。


 逃げるったってこのままこわーい雇い主がいる方か、こわーい襲撃者がいる方にしか行けない。


「黙って避けてくれるなら手は出しませんよ」


「だから何言ってるのか……」


「黙って横に避けていてくれたら見逃してくれるって言ってますよ」


「あちゃーお仲間ですか。


 ……今の話本当ですか?」


「本当です」


 余計な闘いしなくていいならその方がいいに決まっている。

 ショウカイはテラリアスナーズの言葉を通訳して男に伝えた。


「…………いいでしょう、お通りください」


 男がスッと通路の端に避ける。

 金は命あっての物。死んでは使えない。


 最初に聞いていたソリアなら鎮圧出来たかもしれないが謎の強者テラリアスナーズは男の想像を遥かに超えていた。

 ニッコリと胡散臭い笑みを浮かべて通り過ぎるのを待つ。


 Sランク犯罪者『首切り』ゾリアック。

 犯罪組織が用意していた最高戦力はあっさりと戦闘を放棄してしまったのであった。


「行こう」


 もう向こう側は明るい。


「さて、続きましての商品は〜!」


「あれは……卵?」


 半円状の広い部屋。

 ショウカイたちが入ってきたところから段々に低くなっていって、向かい側真ん中がステージになっている。


 そこでオークションが行われていた。


 今壇上に上がっているのは巨大な卵。

 ゴツゴツとして普通のものでないことは見てわかるのだけどとにかくでかい。


 マギナズから事前に聞いていたサイズ程度のものではなく人の背よりも大きなっている。

 透明なケースで入れられたそれにショウカイたちに気づいていないオークション会場は騒ついた。


「こちらはなんと、ドラゴンの卵です!


 スパルタスから出品されましたこの商品。


 血を飲むだけでも長寿を約束されるというドラゴンの幼体が今ここにあるのです!


 生かしてペットにするもよし、殺してお体のために使っても良いでしょう」


 聞いていた話と違うので一瞬別物かと思ったがあれがテラリアスナーズの卵で間違いない。


「あ、あぁ……」


 テラリアスナーズはようやく会えた自分の子に涙した。


「貴様らァァァ!」


 マギナズが吼えた。

 喉が張り裂けんばかりの咆哮。


 魔力が込められた声は一瞬で会場に広がり、グラスを割り、魔力に耐性の低い人たちは耳や目から血を流して倒れた。


「な、なんだ!」


「おい、あいつらを捕らえろ!」


「に、逃げろ!」


 マギナズから離れていて気を失わなかったり、魔力に耐性があって耐えられた人たちはパニックに陥った。


 招かれざる客。

 犯罪組織が雇った用心棒や客が個人的に雇っている護衛がマギナズに殺到する。


「……あなたたち覚えているわよ」


 ステージ奥から出てきた数人の男たち。

 テラリアスナーズはその顔を見てプツリと、キレた。


「は……ば、バケモノだー!」


 擬態を解いたテラリアスナーズはみるみる間に大きくなり、カメのような姿に戻った。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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