表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/340

卵を取り戻せ5

 大きく振りかぶったテラリアスナーズはもうすでに気を失っている男を思いっきり投げた。


 真っ直ぐに飛んでいく男は教会正面のドアにぶつかった。

 大きくて丈夫そうなドアは男がぶつかった衝撃で真っ二つに折れて倒れてしまった。


 虫の巣でも突いたように中からゾロゾロと柄の悪い男たちが出てくる。


「なんだなんだ?」


「おい、お前ら、女だぞ!」


 テラリアスナーズとマギナズを見て卑下た笑いを浮かべる男たち。

 これから何が起きるとも知らずに暇を持て余していたために頭の中はピンク色の妄想が広がり始める。


「気持ち悪い視線向けやがって……全員やっちまっていいよな?」


 そういえば気づいたらマギナズは勝手に突っ走ることをやめて一々ショウカイに許可をとるようになっていた。


 ある種の信頼関係が生まれていた。


「うん、あいつら全員悪い奴らだろうから遠慮はいらないよ」


 ショウカイはマギナズを止めるつもりもなかった。


 なぜなら見てしまったからだ。

 好奇心や人間を裏切るような後ろめたさに負けて、少しでも心を軽くしようと詳細鑑定で犯罪組織の連中が何をしてきたのかを垣間見た。


 見た奴が悪かったのかもしれない。

 先程商人の邸宅で襲撃してきた奴は子供を殺した。

 理由もなく、ただふとした興味があったのだと。


 目の前が暗くなる思いがした。

 テラリアスナーズが魔法で守ってくれなきゃショウカイは死んでいた。


 今ここにいる奴もそうだ。

 斧でテラリアスナーズを切り付けた男は殺し屋だった。


 あの斧で死体をバラバラにして組織の名前で人に送りつけて脅迫をかけるのだと詳細鑑定には書いてあった。


 どうしてこんなことが出来るのか。


「この女ヤバいぞ!」


「おい、お前ら逃げるんじゃ……」


 マギナズが拳を振ると敵が1人倒れる。


 圧倒的な力を持っているがマギナズは普段はその生息域から出ない。

 積極的に人を襲うものでもないし、理性的で、ショウカイがダメといえば勝手なことはしなかった。


 人よりもよっぽど魔物の方がマトモなのではないか。

 そんな思いがショウカイの中に生まれつつあった。


「いや……人も魔物もそれぞれか」


 ふわっとユキコやレーナン、ウルガスのメンバーの顔が浮かぶ。

 良い人も普通にいたし、ヤタのような悪い魔物も普通にいた。


 最近人と接する時間が少なすぎた。

 何となくテラリアスナーズやマギナズを心のどこかで美化しようとしすぎていた。


 ノワールやシズクを始めとして、ミクリャやシュシュ、ワチカミと言った魔物の友達しか今はいない状況で人の悪に触れたために見方がおかしくなっていた。


 そうだ、魔物も人もそれぞれだ。


 頭を振って考えを改める。

 疲れていたのかもしれない。


「まあ、だってありのままじゃこれだもんなぁ」


 男たちを制圧するのに時間はかからなかった。

 段々と感覚が麻痺してきているショウカイは血まみれの男たちの真ん中に立つマギナズを美しいとすら感じ始めていた。


「終わったぞ」


 マギナズは拳の血を払いながらショウカイに笑いかける。


「……きっとどこかに隠された入り口があるはずです」


 何はともあれ今の状況で悪いのは人間側で、テラリアスナーズは自分の子を取り戻しにきただけなのである。


 マギナズはテラリアスナーズを助けると言いつつ暴れられればそれでいいような雰囲気もなきにしもあらず。


「任せるである!」


 そういえばシュシュはどこにいるかって?

 シュシュはずっとショウカイの腰の袋の中にいた。


 クモの糸で戦うわけにもいかずテラリアスナーズとマギナズの虐殺的戦いに恐怖して隠れていた。

 こんな魔物もいるのだ。


 そんな大人しくしていたシュシュが袋から飛び出してきた。


 周りに人の気配がなくなり、ようやく活躍の場が来たと思ったのだ。


「隠し通路見つけなら任せるである!」


 そう言ってシュシュは細ーく糸を出して教会の中を走り回る。


「ここである!」


 シュシュは教会奥にある女神像の横で立ち止まった。

 空中にふわりと飛ばした糸の動きで空気の流れを見ていたシュシュ。


 糸が不規則に揺れて空気の流れが変わった。


「ここ?」


 何の変哲もない床。

 取手も見えない。


 言われてみると床に細い隙間があるような、無いような。


「任せな!」


 どこかにスイッチ的なものがある。

 ショウカイはそれを探そうとしたのだがマギナズはよりシンプルで簡単な解決を見出した。


 隠し通路の扉があると思わしき床を殴りつけるマギナズ。

 シュシュの言う通り隠し通路への扉があった。


 金属で出来ていたらしく表面の床板が割れ中の扉がひしゃげる。

 歪んで浮き上がったところに手をかけると剥がすように扉を取り去ってしまった。


 (結構分厚いのにな……)


 ショウカイなら手の骨が砕けるほどの力で殴りつけてもこうはならない。

 扉の下は階段になっていて降りられるようになっている。


「感じる」


「テラリアスナーズ!」


 どこか放心状態だったテラリアスナーズが1人階段を駆け降りる。

 怪我をする心配はしてないけど何が待ち受けているのかは分からない。


「早く行くである!」


 スッとショウカイの袋の中に戻るシュシュ。

 まあ仕事はやったから文句は言わない。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ