卵を取り戻せ3
「残念……だったな。
リストのどこにも、会場はない…………」
カリオロスはソリアの最側近として調査に携わり、治安維持部隊にも関わってきた。
組織が徹底的に隠し、内通者が撹乱までしたのにソリアは候補の1つに会場を見つけ出していた。
しかしカリオロスはその立場を利用して巧みに候補から会場を消し去っていたのだ。
「そう言うってことはお前は会場を知っているということだな」
「ふふ、何を言っているのか分からないぞ……」
「カリオロスさん、会場の場所を教えてください」
「誰がいうものか……このまま放っておかれたとしてもどうせ死ぬんだ。
何も話すものか……」
自分の体のことは自分が1番分かっている。
マギナズの一撃は重たすぎて骨や内臓が傷ついてしまっている。
「ふふ……」
意識を手放せばもう簡単に逝ってしまえる。
「こんなところで死ぬのは本望ではないけど……」
スッと目をつぶる。
このまま眠るようにいければ苦痛も少ないはず。
「起きろ」
「ブフッ」
「何勝手に死のうとしてんだ」
目をつぶったカリオロスの頬にマギナズのビンタが炸裂する。
「な、なにを!
あれ……痛く……」
今叩かれた頬は痛いのに体は痛くない。
「歯ぁ食いしばれ」
何が起きたのか。
考える前にマギナズの拳がカリオロスの顔面にめり込んだ。
「話すまで終わらないからな」
「話すまで終わらないそうです」
「どうひゅう……」
「すぐに分かる」
もう一発殴られる。
単純な殴打。
ただただ力による暴力。
それだけでカリオロスは虫の息になる。
「死んじゃダメよ〜」
痛みが無くなった原因、それはテラリアスナーズだった。
アースドラゴンであるテラリアスナーズにとって魔法は身近で人を治療するなんて簡単なことだった。
指を振ればそれだけでカリオロスの傷が一瞬で治る。
ようやくカリオロスは理解した。
「一緒に戦った仲間も殺したみたいだしな、簡単に口を割らなくてもいいぜ」
今目の前にいるのは裏切り者の自分よりもヤバい奴だと。
剣を持っていても刺さらないのだから勝てもしない相手。
マギナズが拳を大きく振りかぶるのをカリオロスは見ていることしかできない。
「……残酷だな」
ああやってヤンからも話を聞き出したのだろう。
ヤンの時は人目を気にせず町から連れ出して魔物の状態だったのでもっと酷かったかもしれない。
殴られる刹那にカリオロスと目があったショウカイは顔を逸らした。
仲間を裏切って犯罪組織と内通し、治安維持部隊のみんなのことも殺した。
今されていることは確かに残酷なことかもしれないがやっていたことはカリオロスの方が何倍も残酷だ。
ショウカイはその場を離れて、商人の邸宅を出た。
「ショウカイさん、中は……」
突撃したのは全員ではない。
全滅した時のための連絡要員が外に待機していた。
他には誰も出てこない。
若いが故に突入メンバーから外された治安維持部隊の青年2人は察してしまった。
「カリオロスが裏切り者だった」
ショウカイ自身も口にしたくない報告。
敵が待ち伏せていて戦闘になった。
カリオロスが裏切り者で治安維持部隊を後ろから攻撃して全滅。
その上リストの場所に本当の会場はなかったとカリオロスが言い、捕らえて尋問していることを報告した。
「お、俺たちはどうしたら……」
狼狽する治安維持部隊の青年たち。
尊敬する先輩たちを失った。
まだまだ経験も浅く、いきなり責任者がいなくなった状況にパニックになっている。
「1人ソリアのところに行って今のことを報告してください。
ここで一度合流するようにも伝えてください。
もう1人は尋問が終わるまで待ってください」
「わ、わかりました」
一度顔を見合わせた青年たち。
足が速いのは俺だからと背の高い方が走り出した。
「本当に誰も……」
「カリオロスの裏切りのせいで……」
いや、あの人数差なら治安維持部隊の人たちが生きていられた可能性は低かった。
それでも何かのせいに出来るなら、その方が彼の心が軽くなるならとショウカイは思った。
「中を確認してきます」
「俺も……」
「ダメです。
何があるか分からないのでここで待っていてください」
今血まみれの先輩たちの死体なんて見たら精神的に参ってしまう。
ショウカイが邸宅の中に戻るとちょうどカリオロスが治療されたところだった。
服は破け身体中血だらけなのに怪我ひとつなくピンピンしている。
「た、たすけて!
話す、話すから!
もう止め……」
光の灯らない目をしていたカリオロスがショウカイを見つけた瞬間に助けを求めてすがりに行こうとした。
そのせいで逃すまいとマギナズに殴りつけられてカリオロスが力なく床に倒れる。
殴るたびに話すかどうか聞くことはしない。
話し始めない限りマギナズは殴り、テラリアスナーズは直す。
言葉が通じないとカリオロスは思っているのか話すつもりになっても無駄だと考えてただ殴られ続けていた。
「マギナズ、ストップ。
テラリアスナーズ、治してあげて」
「分かったわ」
テラリアスナーズがカリオロスを直す。
もはや壊れる寸前だが壊れることも許されない。
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