オークションの裏で8
ソリアのオススメの肉料理をテラリアスナーズの分まで頼む。
「……いきなり話がしたいと呼び止めて申し訳ありません。
お時間をいただきましてありがとうございます」
料理を待つ間、ソリアが重々しく口を開いた。
「改めまして、私はソリア・ポーフィ。
巷では剣帝なんて呼ばれる、しがない冒険者です」
Sランクの剣帝がしがなきゃ大体の冒険者はどうなるというのだ。
炎帝は魔力が溢れ出して荒々しく威圧感を感じていた。
対して剣帝の雰囲気は対面して分かるほど穏やかで凪いでいる。
ショウカイが魔力の感知に優れているのではないが無駄がなく薄く体に魔力をまとっていることが感じ取れるほど濃く、完璧なコントロール。
まともにやりあえばショウカイなんて数秒ももたないだろう。
「ここにお招きした理由ですが、その前にいくつか聞きたいことがあります。
まずお二方……お三方は冒険者ですか?」
ショウカイのことはソリアの眼中にはない。
せいぜい通訳者程度の扱い。
「俺は冒険者ですがこの2人は違います」
「そうですか……。
ではバルサンクルス、スパルタス……」
グラスにヒビが入る。
誰も触れていないテーブルに乗せられたグラスにだ。
ソリアの動悸が早くなる。
テラリアスナーズとマギナズの殺気と魔力に当てられる。
今1番言ってはいけない禁句、スパルタス。
「2人とも抑えてください」
ソリアが圧力で冷や汗をかいている。
ビリビリとした感じはあってもそれ以上何かを感じないショウカイは2人をたしなめる。
まさか剣帝が犯罪者集団の一員なわけがないのでスパルタスの名前を口にしたのも理由がある。
このままではソリアが次の言葉を発せなくなる。
「どうやら何か因縁があるみたいですね……
バルサンクルス、スパルタス、アルダールに聞き覚えがあるか聞きたかったのですが答えるまでもないですね。
これらは大きな犯罪組織なのですが良い関係でないようでよかったです」
「回りくどいな、何が言いたいのかさっさと言えよ!」
「ええと……?」
「気にしなくて大丈夫です。
続けてください」
料理も来ないし話も進まない。
イラついたマギナズはさっさと本題に入るようにせっつくが言葉が通じていない。
「えっとそうですね。
単刀直入に言います」
マギナズの言葉が伝わったのか、上手い説明の言葉が見つからないのかソリアは背筋を正して意を決したような表情をする。
「私たちに協力してくださいませんか」
簡潔で分かりやすい。
けど今度は内容不足にもほどがある。
そのタイミングで料理が運ばれてくる。
これで少しは大人しく話を聞いてくれるに違いない。
「事の発端はとある情報が舞い込んできたことです」
ソリアはポツリポツリと話し出す。
お祭りの影でバルサンクルス、スパルタス、アルダールという3つの犯罪組織が何かをしようとしているとスーハッフルスの治安維持部隊のところに情報が入ってきた。
曖昧で不確かな情報だったが具体的な組織名も出ているので調査を始めた。
犯罪組織が本気で隠していることを探すのは楽ではない。
何も出てこず調査が打ち切りなる寸前でスーハッフルスに何か大きな荷物が運び込まれてきた。
誰にも知られないように運び込まれようとしていたのだがまだ調査の途中だったこともあり、不自然さに気づく者がいた。
記録にも残らない物の搬入を最後の調査と調べてみるとその痕跡は辿ることもできなかった。
まるで消えてしまったかのような物の行き先に大きな犯罪組織が絡んでいることを察した。
搬入の不自然さが見つかってしまうような焦りがありながらこの後の隠蔽は完璧である。
お祭りは3カ国が関わる大きな行事。
もし不祥事が見つかれば今は手元にある管理権が3カ国に奪われてしまうかもしれない。
スーハッフルスの上層部も腰を上げた。
犯罪組織にバレないようにスーハッフルスをあげて調査を進めた。
そこでようやくこれらの犯罪組織がスーハッフルスのお祭りに隠れて大きな取り引きをしようとしていることが判明したのだ。
しかし大きな犯罪組織が秘密裏に行う取り引きは徹底的に存在を隠され、実態の把握は困難を極めた。
その上3つもの犯罪組織が集まっているのだ。
敵の勢力も一筋縄ではいかないことが予想され、Sランク冒険者のソリアのところに話がやってきた。
炎帝が魔物向けなら剣帝は人間向け。
明確にそんな区別があるわけでないが炎帝が魔物ばかりを追いかけるのに対して剣帝は魔物も追うけれど犯罪組織とも戦う冒険者であった。
オーガキングを倒した直後だったソリアはオーガキングの魔石をオークションに出すことでお祭りに自然と参加する口実を作った。
「尻尾も掴んだと思ったのだが問題が起きてしまいまして……」
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